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間ー1
静寂。
それがこの世界を支配していた。
欠けた月と空全体を覆い尽くす星々によって夜は彩られている。
そんな無音で美しい世界にひとつの鐘が鳴り響いた。
それは――重く。
それは――徐々に世界に光として響く。
そして静寂がまたも辺りを包む。
それに気づく者はいた。
数は少ないが、確かに目で、耳で、感じることができた。
だが、それが一体何の音なのか、分かる者は少なかった。
悲しいことに、今のこの世では、人々は潜在能力として感じ取れたとしても、それの意を理解するまでのことは、不可能なことであった。
一人。
また一人。
それに気づいた者たちはやがて、その音を気にすることなく、忘れていく。
それは仕方のないことなのかもしれない。
自分たちには必要のないことなのだから。
だがしかし、確かにその鐘の音を理解する者たちは、この世にいた。
その音を理解した者たちは、誰しもこう考えた。
「「「あと二回か」」」