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1-3

 まだ春は遠い。

 そう思ってしまうほど、まだこの世の中は、春を受け入れる準備が整っているようには思えなかった。

 道路の脇にある桜の木を見ても、まだまだ蕾が小さい。これから追い討ちをかけて、綺麗な薄い桃色を咲かせるために蕾を大きくしていくんだろう。

 そうして咲いた花々を見ることができればいいな、などと思ってしまう自分がいることを晃人は気づいていた。

 なぜだろうか、信じていないのに。

 せっかく蕾を大きくしたとしても、咲かせても意味がない。そう心の奥底で思ってしまっていることに嫌な気持ちになる。

 誰が春を迎える前に無くなるなど、そう噂したのだろうか?

 特に理由はないんじゃないだろうか。

 こんな都市伝説のような話。

 信じるほうがおかしいはずだ。

 なのに、自分は心のどこかで、それを信じてしまっている。

 いや、もうそろそろ、それをしっかりと自覚しなくてはならなくなってきた。信じなければならなくなってきてしまった。

 海に面した、さほど大きくはない街。

 いくつかの路線が集結しているため、田舎に住んでいる晃人にしてみれば、駅前のビルに大きな液晶パネルが取り付けられているのを見ると、そちらに目を奪われてしまう。

 そこには最新のニュースがいくつもテロップで流されていた。

 近頃あまりテレビに出演していなかった芸能人のスキャンダル、聞いたことのあるような会社による、不良品のリコール、そして地元の商品の宣伝。

 この辺に住んでいる、もしくは通勤通学に使っている人間にとってみれば、それほど気にするようなことではないようで、上に目を向ける人間などいない。

 しかし晃人はそこから目を離すことをしなかった。

 商品の宣伝が終わると、新たなニュースが入り込んでくる。

 画面に映ったのは――『中東地域直径一キロ程のUFOが現れる』だった。

 今までなら、誰もが目を疑うような内容だが、ここ一ヶ月の間にこういう内容のものが新聞や報道番組でも取り上げられていた。今ではもう当たり前のようになりつつある。

 このような事態が世界各地、いたるところで起きている。

 地球は今、地球外生命体に狙われている、らしい。


 今から一月戻る。

 一月前といえば、晃人はまだ受験生だった。

 それほど、家に閉じこもって勉強していたかどうかと言われると、そうでもない。塾に通っていなかったため、あまり縛られることがなかったためか、ある程度余裕があったように思える。ただ、塾のようにそう間隔が開かずに模試があり、自分がいったいどのくらいの順位なのかということがわからなかった。急に晃人は落ちるのではないかと思い、受験一ヶ月前には猛勉強し、そのおかげか、県内でも上に位置する高校に進学することになった。

 そんなときに、世間ではある一つのニュースが騒がれていた。


――UFOが確認されたのだ。


 昔からUFOの目撃情報は良くあることだった。

 それは写真であったり、映像であったり。世界各地でいろんな情報として残されている。それらに共通しているのが、人類が成し得ていないような行動を起こすことだ。一瞬で姿を消したり、ワープしたり、形を変えたり。それは様々だ。

 しかし、今までUFOはその存在があやふやだった。

 未確認飛行物体なのだから、それはそうだ。

 だが、それが覆された。

 今までこれほど近く、それも大勢の人間が目視できるのは、初めてだった。


――東ヨーロッパに円盤状のUFOが出現。


 それが一応、事の発端となっている。

 大きさは、直径一キロメートルほどの円状で、ほとんど厚みがないと言っても過言ではないほど、その未確認飛行物体は厚みがなかった。

 そして、今もその円盤はどうしてか、その場に滞空している。

 元々、表面上が透明に近いためか、空を見ても条件が悪ければ見ることができないなんてことがある。

 だが、そうだとしても、誰もが見ることができる、ということには変わりはない。

 つまり、UFOは実在することとなった。

 しかし、いったいどういった目的で滞空しているのか、一ヶ月が過ぎようとしているのだが、まだわかっていない。地球侵略が目的なのか、いつの間にか、世界各地で同じような形状のUFOが確認され、同様に上空に滞空したままとなっている。

 そして、侵略されることなどなく、行動を起こさないまま四月を迎えた。





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