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4-3

だいぶ雑になってきているんで、後日改訂します。

翔馬に言われて、晃人は葵の病室に入ることにした。

最初はドアノブを掴んだとき、開ける気力がなかった。

確かに、晃人と葵は翼を失った。

いや、晃人は翼を失ったというよりも、元々なかったも同然なのだ。

晃人は地界人で、葵は天界人。

その違いが、両者を大きく隔てていた。

晃人が翼を失うのと、葵が翼を失うとでは、全く違う。

晃人が感じた悲痛を葵はそれ以上の痛みを感じたのではないだろうか。

そう考えると、晃人が葵の気持ちを理解することなど、出来ないのではないか、と懸念してしまう。

だから、一度手をドアノブから放したのだが、そのままどこかへ歩いていくことはしなかった。逃げることはしなかった。

「……」

理解してあげられないかもしれない。

わかってあげられないかもしれない。

だが、聞かずにそう思い込むのは嫌だった。

彼女は一人だ。

この世界には仲間がいない。

翼を持った同胞は、晃人しかいないのだ。

大きく息を吸い込む。

理解してあげられることはあるかもしれない。

わかってあげられることがあるかもしれない。

意を決して部屋に入る。

いつ見ても、ひどく白い部屋だった。清潔感が漂うが、それが強調されすぎているようも見えて、晃人にしてみれば気持ち悪い気分を味わされる。

窓はカーテンで閉められているため、外の暗闇は写し出されていなかった。

葵からの反応はない。

近づいてみると、すでに寝てしまったようで、すぅすぅと一定のテンポで寝息が聞こえてくる。

ベッドの近くに置かれていた丸椅子に腰を下ろす。

葵は綺麗な顔立ちをした少女だ。自分よりも幼い印象を与える顔ではあったが、真面目な性格だけど、少し抜けているところもあり、可愛らしくあった。

今、こうして見ているぶんには、可愛い少女として目に映る。

しかし、この少女が世界を守るために必要な人間なのだ。

そうは見えなくても、実際そうなのだ。

この少女が背負っているものは大きすぎる。

晃人では支えきれないほど膨れてしまっている。

なんでこんな小さな女の子に背負わさなければならないのだろうか。

晃人は歯噛みする。

自分は何一つ力になってあげられない。

今の晃人では無理な話であった。

翼を失ったため、どこにでもいる地界人になってしまった。そんな人間が力になれるわけがなかった。

「……うぅ」

まるで何かに押しつぶされそうになっているのだろうか、葵は唸なる。

額には汗も浮かんできて、晃人はハンカチで拭く。

今の晃人にはそれしか出来なかった。

ただ見守るだけしか出来ない。

翼は戻るのだろうか。

翔馬はできる限りのことをすると、そう言ったものの、それが可能なぐらいの浅い傷だったのだろうか。晃人は自分の目で見ていないため、どうなのかわからない。見たところでわかるわけがないのだが。

どうすることも出来ない。

だんだんと苛立ちが募る。

晃人は、葵が目を覚まさせないように部屋から出て行く。

いつまでも彼女を見ていることは出来なかった。

自分の感情を抑えなければならない。

少し冷たい風でも浴びるか、と考え、晃人は屋上へと向かう。


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