間―2
「さて――」
この街で一番空に届きやすいビルの屋上。
そこに須賀原桜花は立っていた。
「晃人と葵さんは出会うことができた、と」
桜花は舞う。
雲一つない空に月明かりによって桜花は。
舞って。
舞って。
舞尽くす。
そして、空へと右手を伸ばす。
「運命――それは定められたもの」
そして、下へと左手を下ろす。
「それを避けることは私たちではできない」
桜花は一息ついてから、天を仰ぐ。
月明かりに負けじと、空一面を覆った星々が光り輝く。
「それでも抗うんだね、早人」
一直線にこちらへと向かってくる星がひとつ。
初めは流星に見えたものは、着実にこちらへと向かってくる。
そして、それが人の形をしているのがわかった時にはすでに遅し。
真上を通り過ぎてしまう。
「別に私は構わない。あなたの好きなようにしていいんだよ」
そして桜花はまぶたを閉じる。
一瞬、暗くなる。
次の瞬間、瞼の裏には色んな光景がいくつも映し出される。
「この世界は理不尽なのかもしれない。だけど、これが世界なんだよ」
そして桜花は目を開く。
あることに気づいたからだ。
「さてと、私はあまり手出しをするつもりはなかったんだけどね」
その瞬間――鐘が鳴り響く。
空から。
そして――。
大地から。
「他にも運命に抗う人がいるとは、ね」
そう口にして桜花はくるりとその場で回転する。
鐘が鳴り終わると、現象は起きる。
報道番組で取り上げられたこともあった未確認飛行物体、それが桜花の目の前にこの街を囲むように現れた。配置は六角形の頂点にそれぞれひとつずつ円盤が置かれていた。
「あなたたちの考えることにも一理はあるよ」
桜花は微笑む。
だけど、その次には睨みつけていた。
「私に抗うことがどうなると思っているんだろうね」
何もかも飲み込んでしまうのではないかと思わせる深い黒色の瞳。
その瞳に映るのは、円盤よりも空高くあるものだった。
「覚悟してもらいましょうか」
そして、世界は終わりへと徐々に近づいてく。
さて、次は三章でございます。