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2-1

誤字脱字が多いかもしれないので、すみませんがなにかありましたら、お知らせください。

 気づいた時には木に囲まれていた。

 それはそうだ。あの漆黒の空から翼が砕かれて、見えない大地の力に引っ張られることによって落ちたのだ。

 晃人は頭を揺する。

 落ちる直前に記憶としては曖昧になっているが、落ちる直前に翼を取り戻し重力を相殺し、そのまま強固な地面に叩きつけられることを回避したのを覚えがある。だが、それでもそれなりに地面に頭を叩きつけてしまったためか、晃人はいまいち動かない頭を叩く。

 いったいあれから何時間経ったのだろうか。

 周りは霧に包まれている。

 白く、深く、向こう側が全く見えない。途方もなくこの森の中心に来てしまったような感覚に襲われる。

 だが、白い霧が見える。

 それはつまり、朝を迎えているということだ。

 今晃人がいる場所まで朝日が入ってくることは、どうやら無理のようだった。だが、ある程度深い森の中で数メートル先まで見えるのは、ありがたいことだった。

 まだ冬のように寒いというのに、コートを着込んだだけで一夜を過ごしてしまい、当然風をひいていてもおかしくはない。鼻がむずかゆく、晃人は今日から学校だというのにどうやら初日から休むことになりそうだった。

 依然として頭は動こうとしてくれないが、いつまでもここにいるわけにはいかない。晃人は重い腰を重力に逆らいながら、二本足で立つ。

 しかし、動けない。

 あまりにも体が重い。動かしたくても動かせないもどかしさを噛み潰しながら、晃人は一歩でも前へと歩こうとする。

 だが、その一歩目もうまく踏み込むことができず、そのまま横に倒れてしまう。

「っ!」

 石の少ない場所で助かった。地面がクッションのように体に跳ね返ってくれたおかげで、大して体に痛みは溜まることはなかった。

「はぁ……」

 仕方ない、晃人は仰向けになって大の字になってから、何度か深呼吸して体を、心を落ち着かせる。


 いったい何をやっていたのだろうか。


 無理に力を使ってしまったためか、背中が全体が固まっているように感じ、筋肉痛に近い痛みを感じていた。

 いつもなら、徐々に力を加えて高度を上げていくことをしていたのだが、いきなり夜中にあんなことをしてしまったのだ。その代償ならば仕方ない。

 今は開き直るしかなかった。

 偽りの翼。

 それは生まれながら晃人が持っていたものだ。それはある人間が見れば、天使というだろうし、神というだろうし、はたまた、悪魔だというだろうし、堕天使というだろう。だが、晃人は自分がそんな得体の知れない存在だという自覚がない。それは自分が人間だということに直結している。その方が良い、そう晃人は思っている。

 どちらの存在でもない、ただの人間なのだ。

 ただ翼が生えただけなのだ。

 それだけの違いしかない。

 晃人は自分が人間とはかけ離れたことをしようとしたのを悔やんだ。

 そんなことはできるはずもなかったのだ。

「くそっ……!」

 何に対してそう言ったのか自分自身でもわからなかったが、晃人は知らず知らずに拳を握っていた右手を自分の胸に叩いて憤りを収めた。

2012年最後の投稿となります。


来年もがんばりますよ

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