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『双星のヴァルキュリア  堕天のミスト』一白き死に神の涙一パートI

血に惹かれし者よ……

エインへリヤーが語る

白のヴァルキュリア

ミストの物語

――プロローグ――


光の粒子が集まり語りかける。

「私はアーサー王。

ヴァルキュリアに選定された者。

光と白のヴァルキュリアの物語を伝えよう。新しきエインへリヤーよ……」


「ルナァァ!!」

ミストの叫びと共にルナの腕に神の糸が巻き付く。

一気に距離を詰め、斬る!

「ガキン!」

天界の境界で、二人のヴァルキュリアは刃を交えた。


「ルナ!世界を一からやり直す時が来ているのだ!なぜそれがわからない!!」


ルナは真正面から応える。

「ミスト……神が人に、哀しみを与えるなんて……どうして!!」

ルナは素早く神の糸を剣で切り払う。


世界は破滅かそれとも……


アーサー王は続けて語る。


世界は『哀』で満ち遥か昔、神々は滅びた。

ラグナロクという戦争で。


天界は砕け散り、神々は悟る。

――このままでは、全ての世界は「哀しみ」に沈む。


神々は託す。

「哀しみを切り取り、その身に宿す者」

二柱のヴァルキュリアをクリスタルに封じ、地上へと送る。


名は――ルナ。 ミスト。


二人は同じ力と、同じ運命を背負うはずだった……


先に目覚めたのは、白のヴァルキュリア――ミスト。


さらに時が流れ、光のヴァルキュリア――ルナが目覚める。


彼女の手元にある神剣は伝える。


人の死に際に生まれる哀しみ。

それを切り取り浄化し、天のオーブへ捧げる事で天界を再び甦らせる力となる。


ただひとつ。


天界が完全に再生した時、彼女の役割は終わる。すなわち――ルナはこの世から消滅する。


まだ二人は知らない。互いが、最も近く、最も遠い存在であることを。


――これは、救済の物語ではない。


これは……『哀』の物語だ。


第一章:堕天の導き


「ようやくか……ふふふっ」

一つの瞳から喜びが溢れ出ている。

地上のさらに奥深く。 人の踏み入れぬ地下世界にて、堕天の者は闇のオーブを掲げ、天界の様子を覗いていた。


二人のヴァルキュリアが地上へ遣わされたのを確認すると、その声はまっすぐにミストへと伸びてくる。


――「目覚めよ」


「ううぅ……この声は夢?」

顔が歪む。最悪な目覚めだ。

白のヴァルキュリア――ミスト。


長い眠りで記憶はぼやける。

使命も、理由も、思い出せなかった。

「私は……何者なの……誰か教えて」

頭を抱える彼女のもとに、“声”が届いた。


神々の戦争で生まれた失敗と後悔の念。

名も役割も失い、天界から零れ落ちた存在。――堕天の者。


「お前の行いは常に正しい……。白のヴァルキュリアよ。人の哀しみを集めよ。それが、お前の使命だ」


ミストは、まだ意識が朦朧とする中、その声を救いだと信じた。


ミストは剣を取り、哀しみを狩る者として歩き出す。


「哀しみ」

人は死の瞬間、己の人生を振り返る。

幸せだった記憶、叶わなかった願い。

「なぜ」

「どうして」

という、答えの出ない後悔の念。


それらが混ざり合い、行き場を失った想いが世に溢れ出す。


哀しみは、叶えられなかった

「希望」

それは天のオーブを介し創造の力へと変換される。


「キィーン」

共鳴した羽根飾りと共にミストは降り立つ。

村は盗賊に襲われた後だった。

道端に倒れた男性を見つける。


周囲に黒い霧状の塊が漂っていた。

「人の哀しみ、これが?」

「ドクン!」「ドクン! 」

「カチャ」「カチャ」「カチャ……」

胸の鼓動が剣に伝わり刃先が揺れる。


男性の哀しみは切り取られ、結晶へと変わった。

「爺さん!早く走って逃げろ!殺される」


「ギャハハ!何正義ぶってるんだ」

「武器も何もないくせに」

「ほら、痛いだろ?」

「グフフッ」

哀しみが記憶の断片をミストに伝える。

「老人を庇って斬られたのか。可愛そうに、苦しかっただろう」


「ジャリ……」

ミストが振り返る。

「まだ生きてる奴がいたか」

「その綺麗な羽根飾りも全部置いていけ!」

盗賊がミストに不意に襲い掛かかる。

「救いようのない者め!」

「ガキン!」

鈍い音と共に盗賊の剣が折られ飛び散る。

「あぁぁ……」


「命は取らない。消えるがいい」

ミストはそう言うとその場を離れようとした。

「くそっ!まだだ!」

ミストに掴みかかった。

「くっ!無礼な!」

「シュパ!」

ミストの腕から神の糸が放たれ盗賊を斬ってしまう。

「あっ……」

血が舞い、ミストに付着した。


糸はミストの意思で羽根のように軽くてしなやかに、また鋼のように強靭で細く鋭利に、伸縮自在に操ることができる。


「私はなんて事を……神が人を殺めてしまうなんて」


すると、ミストに声が響く。

「お前は間違っていない。……ミストよ正当な行為だ」


「私は人の命を……奪った」


「盗賊達は村人の命を奪った。奴らは罪人なのだ」


「やめて!!」

ミストは声を振り払うようにその場を離れた。


血は生々しく、ミストの純白を際立たせた。

「何……この気持ちは」

理由はわからない。ただ胸の奥から響いてくる。


数日後、ミストは再び羽根飾りに意識を集中させる。

「キィーン」

共鳴した羽根飾りに導かれ、ミストはそっと古い小屋へと足を踏み入れた。


薄暗い中に男性が一人ベッドに横たわっている。

その周囲に黒い霧のように哀しみが漂っていた。

ミストが哀しみを切り離そうとした――その時だった。


「バタン!」

突如として、扉が開き女性が現れる。


「主人に何をしているの? やめて!」


「くっ!気配を消しきれていなかったのか」

ミストは神の糸を放ち、女性に巻き付け動きを封じた。


「誰か!誰か来て!!」


「なぜ抵抗する!」

縛られても周囲の人々を呼ぼうとする。

ミストの感情に神の糸は敏感に反応した。


次の瞬間――


「大切な私の……お願い助け……」

大きく目を見開く女性。

糸の刃は、女性の身体を引き裂き、鮮血と共に肉片となり崩れ落ちた。


「止まらなかった……」


哀しみは浄化した。

だが、それはあまりにも重い代償だった。


月明かりに照らされ、鏡は写し出す。

その身に付着した返り血を。

自分の姿に、罪悪の念が胸を締め付ける。


「私は何という罪を犯してしまったの……ごめんなさい」

手の震えが止まらない。

「ガシャン 」

剣を落とし、斬られた首を膝に抱き、ミストは混乱した。


すると、再びあの声が囁く。


「ミスト…ミストよ…お前は正しい……」


ミストは首を横に振る。

「私は、罪の無い人の命を……」


堕天の者の声は、さらに続く。


「よく聞くのだミストよ。人は哀れで下等な生き物なのだ……神の声など届かないのだ。お前の言葉を聞かなかっただろう」


堕天の者は、ミストを肯定する。

「私は!助けたかったの!奪う気なんて無い!」


しばらくの沈黙続く。

ミストはゆっくりと立ち上がり、鏡の姿を見つめる。


飛び散った血が頬や腕に付着する姿。

なぜだろう。

不思議と赤が綺麗に見えた。

鮮烈な赤は白をより美しく際立たせてくれた。

「あっ……この感覚は」

ミストの心は再び奪われた。


希望と哀しみ。

浄化と破壊。

鮮血と白。

魅了される理由など必要ない。


「違う!!私は!」

ミストは否定し、その場を離れた。


その後、哀しみを浄化し人生や記憶を共有していくことで、ミストは人の世界を理解していく。


「あいつから奪ったらいいんだ」

弱いものから奪う。

「逆らうのか……じゃあ、あの世行きだ」

逆らう者は切る。

「もうこれ以上やめてよ。いやー!」

耳を塞ぎたくなるような悲鳴。

「金がいるんだ!俺の代わりに稼げよ!」

自分の欲のために嘘を付く。


人の嘘や裏切りは、絶望や哀しみを生む――

繰り返される悲劇。

あまりにも残酷な世界だ。


そのような光景を目にするミスト。

その者達に未来や救いなどは無い。

ミストの下した決断だった。


次第にミストは盗賊など、悪と呼ばれる者の哀しみも集め始める。


そして、一度否定した赤の誘惑……

「返り血は……美しい。だから、白でなくてはいけないの」


哀しみを集めることは容易だ。

人は死の直前、必ず哀しみを生む存在なのだ――そう認識するようになる。


ミストの思考の変化は、堕天の者と行動を共にする事となる。


闇のオーブに哀しみを集め破壊の力とする。

ミスト・ヴァルキュリアに与えられた使命となった。


そしてこの歪みは、やがて―― もう一人のヴァルキュリア、ルナとの運命を大きく揺るがすことになる。

ミストは戒めとして傷と羽根を残した

油断も未練も全て断つために


『双星のヴァルキュリア 堕天のミスト』

一白き死神の涙一

パートⅡに続く

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