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腐れ縁の男子高生3人で異世界行ったら案外楽しかった件  作者: 秋川悠


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御者の激推しカルポース梨(新しい町に着きました)

 乗合馬車に揺られること約四時間。座っているだけで目的地へ近づけるとはいえ、流石に座りっぱなしの状態が続くと疲れが出てくる。


 窓際の席に腰かけていたタカシはぐったりした様子で、ラティも口を開けたまま寝ていた。権田川確保の張り込みの時とは違って、えらく間抜けな寝顔だった。


 そんなことを考えながら再びタカシの方を見てみると、窓に頭を預けたまま、半分白目で呟いた。


「......もう着いた?」


「いや、まだ半分も来てないな」


「え、マジで......? あとどれくらい?」


「知らん。御者に聞け」


「御者さぁぁん......」


 魂の抜けた声でタカシが前方に呼びかけると、御者は慣れた様子で肩越しに振り返った。


「もうすぐ中継地点のカルポースですよ。そこまで行けば一度休めます」


「カルポース?」


 俺が聞き返すと、御者は待ってましたとばかりに少し嬉しそうな顔になった。


「えぇ、別名“果物の町”ともいわれています! 特にこの時期の名物は“カルポース梨”でしてね。王都に出回っている梨の中でも、カルポースの梨は甘みと果汁が段違いなんですよ!」


 先ほどまでのおっとりした感じとは打って変わって、オタク特有の聞き手を置き去りにする早口で、御者は俺とタカシに話し続ける。あまり長い話にならなければいいのだが......。


「へぇ~、梨か......」


 タカシがさっきまでの死にかけた顔から一転して、少しだけ生気を取り戻す。


「お、いい反応ですね! いいですよ、カルポース梨は! シャリシャリでみずみずしくて、疲れた体にも染みるんです! カルポースを訪れた旅人は必ず買っていかれるんですよ!」


 この御者には一体何が見えているのだろうか。さっきのタカシの反応は、そこまで食いついてなかったと思うのだが。


「へぇ、そんなにすごいのか」


 俺が適当に相槌を打つと、御者はさらに身を乗り出してきた。


「もちろんですとも! 生で食べても絶品、焼いても良し、煮ても良し! 最近では果実パンや果汁酒なんかも人気でしてね!」


 御者の梨トークはますますヒートアップしていった。挙句の果て、その御者は荷台の方にまで体を寄せて話し始めやがった。この世界に警察がいるなら、さっさとこいつをわき見運転で検挙してほしい。


 その後も、御者の“カルポース梨”語りはしばらく止まらなかった。

 タカシは「へぇー」「すげぇー」と適当に相槌を打ちながら聞いていたが、途中から明らかに“早く食いたい”という感情だけで会話していて、おそらく話は聞いていなかった。


 そんなやり取りをしているうちに、馬車の外の景色が少しずつ変わっていく。延々と続いていた木々の隙間から、今度は整然と並んだ果樹園の景色が見え始めた。


 枝には丸々とした果実がたわわに実っている。夕暮れに差しかかった柔らかな光を浴びて、どの実もつやつやと光って見えた。


「おお......! 果樹園が見えてきたぞ! ここがカルポースか!」


 タカシが窓に張り付くようにして外を眺める。


「ほんとだ! なんか空気まで甘い気がする」


 ラティもいつの間にか目を覚ましていて、窓の外を見ながら呟いた。

 さっきまで口を開けて寝てたとは思えないくらい、しれっと起きてやがる。こいつにも御者の話を聞かせてやりたかった。


 そうしてしばらく進んだところで、馬車はようやく目的の中継地点に入った。

 こぢんまりとした石造りの町。道沿いには果物を入れた木箱がいくつも積まれ、いくつか宿屋もあった。


「はい、カルポースに到着です」


 御者は手綱を軽く引いて馬車を止めると、こちらを振り返った。いつの間にか御者のテンションが元に戻っていた。情緒不安定なのか、この人は。


「ここで一時間後に研究施設方面への乗合馬車が出ます。ただ、今から向かうとなると、着くのは日付を跨ぐ頃になりますね」


「うわ、そんなにかかるのかよ......」


 タカシが一気に現実へ引き戻された顔をする。


「流石に、そこからソウタの研究室探しはしたくないわね......」


 ラティも珍しく即座に同意した。

 よくよく考えてみたら、深夜に研究施設に着いたとしても、ソウタは寝てるかもしれない。急いだところでしょうがないな。


「よし。今日はここで一泊するか」


「賛成!!」


「私も!」


 異論は出ず、御者も満足そうにうなずく。


「賢明な判断です! せっかくですし、宿を取ったらカルポースの町も少し見て回るといいですよ! 果物だけは本当に自信がありますから!」


 また果物の話か。てか、『果物“だけ”は自信がある』って、他にも良いところあるだろ。

 とはいえ、この町に入った瞬間からやたらと漂ってくる甘い香りのせいで、少し気になっている自分もいる。


 俺たちは馬車を降り、夕暮れの中、果物の町カルポースへと足を踏み入れた。


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