オリジナルと複製体(タカシたちと合流します)
権田川を捕らえた俺たちは、霧ヶ峰先輩たちと合流して俺たちが張り込みをしていた屋敷の応接室に集まっていた。
俺たちが捕らえた権田川は、霧ヶ峰先輩の能力によって霧ヶ峰先輩の言葉通りに動くようになっていた。
コイツを捕らえるのに縄も手錠も要らないとは、先輩の能力はほんとに便利なもんだな。
そんなこんながあって、俺たちの目の前には三人掛けのソファに座る二人の権田川が座っている。
こいつら、並ぶとどちらが本物か見分けが付かないほど完璧に複製されてるんだよな。それだけ複製スキルが強力なものってことか。
右側に座る泥だらけの方が、俺たちの落とし穴に落ちた“オリジナル”権田川。
左側に座る、霧ヶ峰先輩に捕まえられた方が“複製体”の権田川だ。
まぁ、どっちもオッサンなのには変わりないんだが。
「うわ、改めて並ぶときっついわね……」
隣のラティが小声で言った。下着泥棒を犯した中年男性二人が俺たちの目の前に座っているから、まぁ分からんでもないがそう言ってやるな。
「しかしさ〜、俺たちが捕まえたのは複製体の方だったのかよ〜。なんかオリジナルの方が倒した感あるじゃん?」
俺の右隣に座っているタカシが、またも訳の分からない理由で気分を落としている。
別にオリジナルでも複製体でも下着を盗もうとしていたのなら変わらんだろ......。
そんな中、霧ヶ峰先輩が冷静に状況を整理しながら切り出した。
「さて……まずは確認だが、二人とも自分が権田川であるという認識で間違いないか?」
「あぁ、俺がオリジナルの方な」
「俺も権田川だけど複製体の方な」
即答だった。
すげーな、複製体の方は喋り方もオリジナルにそっくりだ。
となると、思考や性格まで完璧に複製されてるっぽいな。てか、こいつはどの段階で自分が複製体だと認知したんだ?
気になったことを俺が尋ねると、複製の権田川は肩をすくめて答えた。
「俺が生まれた瞬間に、コイツ、”オリジナル”から言われたんだよ。お前は俺の複製体だって」
「ちなみに、生まれた瞬間ってどういう風に生まれるんだよ」
「さぁ?目が覚めたらこっちの世界にいたんだよ」
なんか、軽いな。
複製って、そんなガチャ感覚で作れるもんなのかよ。
「でな、俺がこいつに言ったんだよ」
オリジナルがニヤァと笑って、自慢げに言う。
「お前は夜中に貴族宅を巡回して、女の下着だけピンポイントで盗んでこいってな!!」
「あんた、生まれた瞬間にそんなこと指示されるなんて可哀想ね.....」
ラティは複製体に哀れみの目を向けて言う。それに関しては俺も複製体に同情するよ。
「こいつにも色々聞かれたんだが……」
複製体は霧ヶ峰先輩の方を見ながら続ける。
「オリジナル以上の情報は持ってねーよ。こっちは、言われた仕事を実行するだけだしな」
仕事の出来る殺し屋っぽく言うな。さっきまで同情してやっていたが、急にその気が失せてきた。
「シンヤたちから聞いたが、お前たちは”三日月商会”と関わりがあるそうだな」
霧ヶ峰先輩が本題に切り込む。
「関わりがあるとは言ったが、そこまで深くは関わってねーよ。結局は、あの複製スキル野郎が仲介してるから詳しいことは分からねーんだよ」
それを聞いた霧ヶ峰先輩は少し低いトーンで呟いた。
オーダー、”権田川、事実を述べよ”
また出た、チートスキルだ。確かに、先輩の能力を使えば三日月商会や複製スキルを持ったやつの情報を引き出せるかもしれない。
と思ったのだが、
「だから、俺はこれ以上何も知らねーんだよ。お前らにとっても、俺が嘘に情報を吹き込まれる方が損するだろ?」
オリジナルの権田川はニヤッと笑いながら霧ヶ峰先輩に言った。
「どうやら、こいつは本当に何も知らないようだな」
「あーあ、なんかまた分かんねーこと増えたなー。下着泥棒捕まえたは良いけどよ、なんかまたわけわかんねーことに巻き込まれそうだな」
真剣に考える霧ヶ峰先輩をよそに、タカシは頭の後ろで手を組みながら呟いた。
「ここで考えていても進展は無さそうだな。今日のところは一旦解散しよう。権田川は俺が留置所に連れていくよ。シンヤたちは帰ってもらって構わんぞ」
霧ヶ峰先輩の意見はもっともだ。三日月商会についても何も分からんし、俺たちの方でも色々調べたほうが良さそうだな。そのうえで複製スキルを持ったヤツに対抗するのかも決めよう。
「じゃあ、お言葉に甘えて、俺たちは帰らせてもらいます」
「あぁ、協力してくれてありがとうな。あ、帰るまでが張り込みだから気を抜くなよ!」
そんな遠足みたいなノリで言われても......。




