秘策、発動!!(とんでもない費用がかかってます)
寝室の扉が勢いよく開き、権田川のものと思われる足音が階段へと向かっていく。
権田川も相当焦っているのだろうか、寝室を出る際に足音と共に荒い息づかいも聞こえてきた。
このまま放っておいても奴は捕らえられるだろうな。しかし、莫大な金を投じて作った仕掛けにかかる様子を間近で見てやりたい気もする。まぁ、俺の金は一銭も使われていないんだけどな。念のため、奴を追いかけてみるか。
「ラティ、俺あいつ追いかけてみるわ。お前も特等席で奴が罠にかかる姿、見たくないか?」
「いいわね!じゃあ正面扉まで競争ね!よーいドン!」
そう言うと、ラティはものすごい勢いで寝室を飛び出し、権田川の後を追っていった。
お前、そんなに速く走れたのかよ。だったらさっきもそれくらいのスピードで走れよ。
そんなことを思いつつ、俺も急いでラティの後を追う。
俺が寝室を出た頃には、ラティは階段の一階と二階の間を走り抜けていた。
そう考えると、権田川はちょうど一階に着いたところか。今から一階に降りても、罠にかかる姿は見られないかもしれないな。
そう思いながらバカでかい庭の方に目を向けると、その庭が一望できるテラスがあった。
おぉ、こんなにも素晴らしい特等席があったとは。最高じゃんか。
そうして、俺はゆっくり歩いて二階のテラスへとつながるガラス張りの扉を開け、テラスの中央に立つ。相変わらず綺麗な家だな。俺もいつかこんな家に住んでみたいもんだ。
そんな夢物語を思い描いていると、ガタンッと勢いよく正面扉が開く音が聞こえた。下を覗くと、権田川のものと思われる足跡が芝生に一つ、また一つと増えていく。
※※※
話は再び、張り込み一日目を終え、霧ヶ峰先輩とタカシが作戦を練っている場面に遡る。
「でも、あのバカでかい屋敷でどこに落とし穴作ればいいんですかね......?誘導するにしても敷地が広すぎて見当がつかないんですよ」
「落とし穴の見当がつかなければ、庭全部を落とし穴にすればいいじゃないか」
ん? 俺の聞き間違いか? 庭全部を落とし穴にするって言ったか、この人は?
「えーっと、先輩?あの屋敷の庭、テニスコート四面分くらいの面積あるんですけど?そこにバカでかい落とし穴を作るってことですか?」
「あぁ、その通りだ。業者を雇えば一日でやってくれるだろ?今からでもお願いしよう。資金は全部俺が出すよ」
出た。やっぱりこの人、感覚がズレてる。
「うお!最高じゃん!俺もバカでかい落とし穴作りてーな!!」
「バカでかい落とし穴」というワードに、タカシのテンションが分かりやすく上がる。相変わらずこいつはダメだ。ブレーキにならん。
「でも、今日の夜までに間に合いますかね......?」
「街中の職人に頼めば一日あれば足りるだろう。俺が今すぐ発注しておこう」
この人、マジかよ......。
でも、バカでかい落とし穴は見てみたい気もする。テレビの企画でもテニスコート四面分の落とし穴は見たことがない。
まぁ、先輩が金を出してくれるなら何でもいいか。
※※※
さぁ、来るぞ......。
そう思いながら、俺は心の中でカウントダウンしてみせる。
さん、にー、いち。
次の瞬間、最後についた左足の足跡から地面に大きなひびが入り、轟音とともに庭の地面が崩れていった。十秒ほど轟音が続いた後、その庭はバカでかい穴と土埃に包まれた。
地面が崩れてから三十秒ほどで、辺りの土埃はほとんど収まり、穴の中の様子も見えるようになっていた。
そして、その穴の中には、土に埋もれかけた権田川の姿があった。透明化のスキルは解除されており、初めて目視でその姿を確認したが、情報通り、本当に中年の男だった。
何とか捕獲できたな。権田川が敷地に入るときに、落とし穴の外沿いを辿って屋敷に入ってきたときはヒヤッとしたが、俺たちが追いかけて冷静さを欠けば正面から出ていくだろうとは思ってたから、問題なかったんだけどな。
はぁ、またずいぶん派手にやっちまったな......。まぁいいか、権田川も捕まえられたし、金を出してくれた霧ヶ峰先輩も喜ぶだろう。この穴を作るのに一千万ゼルかかったけど.......。




