張り込みの続き(またまた昔話です)
窓際に椅子を並べて、俺とラティは張り込みを続けていた。
壁掛け時計の針が、ゆっくりと十一時を指す。
眠気を誤魔化すように、俺は湯気の立つマグをひと口すすった。
「そういえばさ、あんたたち三人って、いつから一緒なの?」
「俺たち? んー、小学生の頃からだから……今年で十一年目になるかな。
俺たち十七歳だから、人生の半分以上は一緒にいることになる」
「あんたたちってホントに腐れ縁なのね。じゃあ重ねて聞くけど、どうやって仲良くなったの?」
「俺たちが通ってた小学校は、全校生徒が少ない学校だったんだ。だから六年間ずっとクラス替えもなかった」
俺は窓の外を見ながら、昔を思い出す。
「最初は、ただ席が近かっただけ。特に仲良くなる理由も無かったんだけど、
気づいたら放課後も一緒に帰ってた」
「まぁ、誰かと仲良くなるきっかけって、だいたいそんなもんよね」
「そうなんだよな。毎度タカシがバカみたいなことやって、
それを見てソウタが笑ってるっていう、そのループが六年間続いてた感じだ」
ラティが少し目を細める。
「なるほどね。でも『六年間一緒だった』ってことは、そうじゃなかった時期もあるってこと?」
「あぁ。中学校ではクラスがバラバラになってさ。それに、ソウタは途中で引っ越したんだ。確か家の都合とか言ってた気がする。中二の春頃だったかな。受験控えてるのに引っ越すなんて、あの時はさすがに気の毒だったよ」
「そう……寂しかった?」
「まぁ、ちょっとはな。でも、あいつらしいというか、『また会える気がする』とか言って笑ってたな」
「それはソウタらしいわね」
俺は苦笑しながらマグをテーブルに置いた。
「それに加えてさ、中三になった頃、タカシと俺は同じクラスになってな。そしたらあいつ、俺の進路希望票を見て『お前がそこ行くなら俺も行く』って言い出してさ」
「タカシってほんとに何も考えてないのね……」
「基本的にあいつの行動はその場の思いつきだからな。それにあいつの成績、正直ひどかったんだぞ。絶対無理だと思ってたのに、なぜか合格してた」
「えぇ……それは、才能で受かったの?」
「いや、俺は裏口入学だと思ってる」
俺が真顔で言うと、ラティが吹き出した。
「でも、タカシって“幸運(笑)”のスキル持ちでしょ? それかもよ」
「……確かに。こっちの世界に来る前からそのスキル持ってたなら、笑いごとじゃないかもな」
俺が肩をすくめると、ラティは少し口元を緩めた。
「それで、ソウタは?」
「それがさ、たまたま同じ高校になったんだよ。
理由は“家から近かった”ってだけ」
「……そんな偶然の連続あるのね」
「そう。運命とかそんな大げさなもんじゃない。ただの偶然が積み重なって、今も一緒にいる。そんな感じなんだよな」
ラティは窓の外を見つめながら、小さく微笑んだ。
「でも、そういうのって素敵だと思うよ。理由がなくても続く関係って、なかなか無いもの」
「……まぁ、腐れ縁ってやつだな」
俺がそう言うと、ラティはくすっと笑った。




