張り込み場所は?(エアコン太っ腹です)
データベースを確認し、粗方の作戦を決めた俺たちは、再びギルドの受付に戻った。
「張り込みを行うとなると、長期戦も覚悟しなくてはならないな。周辺で張り込みができそうな場所があるかを聞いてみよう」
そう言うと、霧ヶ峰先輩は慣れた足つきで受付へ向かい、受付嬢のミレイさんに訊ねた。
相変わらず手際の良い人だ。
「貴族街で張り込みができる場所を手配してほしいのですが、可能ですか? 場所は......このあたりです」
そう言って、霧ヶ峰先輩は持っていた地図を指差しながら確認をした。
ミレイは目を丸くしたが、すぐに頷いた。Sランク冒険者の依頼なら話は早いらしい。
「ちょうど向かいの住宅が空いていますよ! ただ、条件が......一泊百万ゼルほどになるのですが......」
「お願いします。ちなみに、この場所の近くにも張り込める場所はありますか?」
「えぇ、この場所の向かいの物件が空いていますが、こちらも一泊で百万ゼルほどになるのですが......」
「構いませんよ。じゃあその二棟をお借りします。借りる日数は未定なので、とりあえず一千万ゼルを前払いしておいてもいいですか?超過分は後から支払うので」
あまりに当然のように言い放った霧ヶ峰先輩に、俺たちは固まった。
「あの、先輩......。桁が違いすぎませんか?一千万ゼルって、特別な依頼でない限り、俺らが何十回受けても届かない額なんですけど......」
「気にするな。安全を優先するなら、それだけのコストを払う価値はある」
あっさり言い切るその姿は、頼もしいを通り越して、もはや感覚が麻痺しているように見えた。
「うぉぉぉ!やっぱエアコンは太っ腹だな!さすが俺たちの会長!」
タカシは妙にテンション高く喜んでいる。お前にはもう少しまともな金銭感覚を持っていてほしい。
「ね、ねぇ......あんたってもしかしてやばい仕事でもしてるの......?その......表では言えないような仕事とか......変な薬とか売ってないわよね......?」
「さすがに非合法な仕事は引き受けていないな。俺の資金源は正規の依頼報酬と投資の利益だ。......まぁ、依頼内容が多少危険なのは否定しないがな」
「投資って、こっちの世界でもあるんですね......」
「あぁ。鉱山や交易、冒険者ギルドの支部運営など、運用できる場所はいくらでもある。金は寝かせておくより動かしたほうがいい」
その言い方が妙に現実的で、俺たちは思わず顔を見合わせた。
てか、今からこの人は人類史上初めてパンツ泥棒の張り込みに一千万ゼル使う投資家になるんだよな......。
「なぁ、エアコンさ、確認なんだけど報酬って......出るんだよな?」
タカシが期待を込めて訊ねる。
「出ないだろうな。そもそもギルド依頼ではないしな」
「出ないんだ......」
タカシが崩れ落ち、俺も頭を抱えた。
「マジすか......。じゃあ俺たちはボランティアで犯罪者を捕まえるってことですか......?それはあまりにも先輩が報われないんじゃ......」
「別に構わん。放っておけば、いずれもっと大きな事件になる可能性だってある。今のうちに芽を摘んでおけば、そのリスクはなくなるわけだ」
霧ヶ峰先輩は淡々とそう言い、ミレイに金の入った袋を差し出した。
俺たちは......とんでもない人を味方にしてしまったのでは......?




