下着泥棒作戦会議(高レベルな変態でした)
霧ヶ峰先輩がギルド受付横の端末を操作すると、淡い光を帯びたパネルに記録が次々と映し出された。
「これが直近一か月の盗難事件のデータだ」
俺とタカシ、ラティは画面を覗き込む。そこに並んでいたのは……。
「……ほとんど“下着盗難”だな」
思わず呟いた。ほとんどの報告に「盗まれた物:下着」と書かれている。他の金品や宝石には一切手が付けられていない。
「犯行推定時刻は夜間」「足跡や侵入痕なし」「被害者はすべて貴族の女性やその娘」
霧ヶ峰先輩が淡々と読み上げる。
「……これはもはや、プロの変態だな」
「なに誇らしげに言ってるのよ……」
俺は頭を抱えるしかなかった。異世界に来て三か月ほどになるが、まさか下着泥棒の手口を真面目に分析する羽目になるとは思っていなかった。しかも、これほど“ハイレベル”な変態を相手にしているとは……。
だが、ラティの表情は笑っていなかった。
「……貴族が被害者っていうのはまずいわね」
「あぁ」
霧ヶ峰先輩は真剣な顔で頷いた。
「えっ?貴族が被害者だと何かマズいことでもあるの?」
タカシがぽかんとした顔で、霧ヶ峰先輩とラティの方を向いて訊ねた。
「このまま被害が広がれば、街の治安や警備体制のもろさが露呈する。ギルドや都市の信用問題にもつながる。放置はできん」
パンツ一枚で都市の威信が揺らぐとか、冗談じゃない。
ただ、正直今回は相手が悪い気もした。
透明になれる能力を使って窃盗を働くというのは、相性が良すぎるのだ。
「じゃあ、どうやって捕まえるんですか?」
俺の問いに、霧ヶ峰先輩は再び端末を操作しながら答えた。
「まだ被害に遭っていない貴族の邸宅が数件ある。奴のパターンを考えれば、次に狙われる可能性が高い。そこで張り込むのが最も確実だろう」
「こんな分かりやすい手掛かりを残すなんて、豚に真珠とはまさにこのことだな。俺だったらもっと足が付かない方法でやるのによ」
頭の後ろで手を組みながら、タカシがボソッと呟いた。
「あんた、バカなこと言ってんじゃないわよ!それより、女としてこういう卑怯な真似は許せないわ!絶対ここで終わらせるわ!」
「良い気概だ。データベースを確認する限り、グランメル地区で下着を盗まれていない貴族は二組いる。それぞれ二人ずつに分かれて張り込みをするのはどうだろうか?」
霧ヶ峰先輩がざっくりとした作戦を俺たちに提案してきた。
「分かりました。では二人一組で張り込みをしましょう」




