この世界の仕組み(新情報が山盛りです)
俺たちは下着泥棒の調査をするため、ギルドへと足を運んだ。
霧ヶ峰先輩はギルドの扉を開け、慣れた足つきで受付嬢のミレイさんに話しかけた。
「やぁ、ミレイさん、お久しぶりです」
「あら、霧ヶ峰さんじゃないですか!?お久しぶりです!それにシンヤさん達も!霧ヶ峰さんはグランメルに帰って来てたんですね!」
「えぇ、ある事件を追っていまして。あ、直近一か月の犯罪者データを閲覧したいのですが、シンヤたちにも閲覧を許可することは出来ますかね?自分が追ってる事件に協力してくれることになって、情報を共有しておきたいんです」
「構いませんよ!Sランク冒険者である霧ヶ峰さんの頼みであれば問題はありません!」
ん?ちょっと待ってくれ。二人のテンポに全くついていけないのは俺だけか?
まず、ギルドで犯罪のデータが閲覧出来るってのは初耳なんだが。
それに、Sランクってなんだ?この世界には冒険者で階級分けする制度なんかあるのか?
次々と出てくる疑問を霧ヶ峰先輩に一つずつぶつけてみる。
「なんだ、シンヤ。こっちの世界に来て三か月も経つのにそんなことも知らないのか。まずはランクから説明するか。ランクは冒険者の実績を示す指標だ。依頼の報酬から一割は勝手に天引きされてて、その積み重ねでランクが決まる仕組みだ。その額に応じてランクが振り分けられるんだ」
「え、税金で決まんのかよ」
思わずタカシが口を挟む。
ランク制度があったことにも驚きだが、その指標がまさか金だったとは。
「金で決まるって言い方は語弊があるな。活動した分だけ納税額も増える。だから結果的に、実力や行動力のある冒険者ほどランクも上がっていく仕組みだ」
「ということは、私たちが依頼を受けて貰ってた報酬は、あらかじめ税金が引かれてたってこと?」
「そういうことになるな」
そういうことは最初に言っておいてほしいんだが......。まぁこの仕組みはこっちの世界での常識なのかもしれないから強めには言えないが。
「次にランクの内訳についてだ。ランクはSSSからEまであって、年度ごとに“昇格・維持・降格”が判定される。たとえば、Dランクで降格判定を受ければ翌年はEになる、という具合だな」
「学校の成績表みたいだな……」
タカシが呟くと、ラティが小さく頷いた。
「イメージとしてはその認識で合っています。ランクが高ければ依頼の幅も広がりますし、犯罪データをはじめとした機密情報にもアクセスできるんです」
ミレイさんも補足で説明を入れる。
「なるほど……だから先輩はさっきあんな簡単に“データを見せてくれ”って言えたのか」
「あぁ。俺はSランクだからな。高ランクの冒険者には都市の安全を守る責任も課されている。そのために、犯罪者データの閲覧権限が与えられているんだ」
霧ヶ峰先輩の説明に俺はあることに引っかかった。
「あれ?先輩ってこっちの世界に来て一年も経っていないですよね?なのにSランクってどういうことですか?」
「……あぁ、そのことか」
霧ヶ峰先輩は特に隠す様子もなく、さらりと答えた。
「高難易度の依頼を一日に数件こなしていたら、気づいたらSランクになっていた」
「気づいたらって……!」
俺とタカシの声が揃って裏返る。
「そんなもん自然になるか!?」
霧ヶ峰先輩は「そうか?」と首を傾げる。
……この人、本気で分かってない。
ラティは肩をすくめて、「まぁ……そういう人なんでしょうね。普通じゃないわ」と呆れ気味。
「ちなみにシンヤたちも、もうDランクだぞ」
「はぁ!?」
唐突すぎる情報にタカシが思わず声を上げた。
「依頼を重ねて納税額がEランクの上限を超えたんだ。通知はないから、自分で確認しないと分からないんだがな」
なんで通知が来ないんだよ......。
相変わらず欠陥が多すぎるぞ、この世界は......。




