鎮まれ(謎の学ラン男、登場です)
街の巡回依頼を受けた俺たちはギルドを後にし、いざこざが起こりやすい飲み屋街を歩いていた。
「なぁ、今日はどんなトラブルが起こると思う?なんか面白いこと起こるといいよな!?」
相変わらず能天気な面をしながらタカシが俺とラティに言ってきた。
「縁起でも無いこと言うな。それに、面白いトラブルって何だよ」
「お前、面白いこと起こりそうだから依頼受けたんだろ?」
「いやちげーよ。歩いてるだけで報酬貰えるのはかなり優良依頼だろ。散歩の延長だと思ってやればいいんだよ」
「あなたたち、本当に緊張感がないわね」
ラティが呆れたようにため息をつく。
「まぁ、トラブルが起きない方がいいに決まってるけど……」
ラティの言葉に俺は内心頷いた。
……ただ、もし揉め事が起きたとき、俺のスキルはどう反応するんだろうな。
あのギルドでの一件以来、まだ自分の意思で発動させられた試しはない。
条件次第なのか、偶然なのか……。
そんなことを考えながら歩いていると、案の定、酒場の前で人だかりができていた。
「おい! 金はちゃんと払っただろうが!」
「払ってねぇよ!勘定はまだだ!」
声を荒げるのは酔っ払いの冒険者風の男。相手は店主だった。
周囲には野次馬も集まっており、ちょっとした騒動になりかけている。
「……あー、はいはい。早速トラブルが起きたぞー。タカシ、何とかしてみろー」
俺が呆れながらタカシに言うと、タカシが一歩踏み出した。
「おーい! 兄ちゃんたち、ちょっと落ち着けよ!」
タカシが場を収めようと声をかけるが――
「なんだテメェは!? 関係ねぇ奴は引っ込んでろ!」
「うげぇ。コイツ、結構酔ってんなおい......」
酔っ払いの剣幕に、タカシが思わず一歩退く。
「ほら、やっぱり簡単には収まらないじゃない」
ラティが呆れ声を出す。
俺も二人の間に割り込んで場を収めようとするが......。
……ダメだ。発動しない。こんな時こそ頼りたいのに。
こういう場面で発動してくれればどれだけ楽か。
「あ?お前も誰だよ!!部外者はどいてろよ!」
冒険者風の男にそう言われ、俺は押し倒されたがラティが支えてくれた。
「大丈夫!?これは収集がつかなそうね......」
そう言われて、俺は思わず考えてしまった。
もしソウタがここにいたら、どう動いただろうか?
冷静に状況を分析して、もっとスマートに場を治めていたに違いない。
その時だった。
「……鎮まれ」
背後から響いた落ち着いた声。
すると、不思議なことに酔っ払いの男の肩がガクッと落ち、次の瞬間、口論がピタリと止まった。
「え……?」
振り返ると、そこには見覚えのある学ラン姿の青年が立っていた。
堂々とした佇まいで群衆を見渡すその姿に、場の空気が一瞬で変わる。
そこに立っていたのは、かつて俺たちの高校を仕切っていた生徒会長だった。




