冒険者、無職説(しばらくソウタは出ません)
ソウタが研究に専念するために家を出てから、一週間が経とうとしていた。
家の中はどこか物足りない。妙に広く感じるし、ソウタの部屋で居候をしていたアルも最近はつまらなそうにしている。
タカシはというと「体力をつける!」と張り切ってジョギングを始めたが、案の定、三日坊主だった。今では深夜に寝て、昼過ぎに起きるという自堕落な生活に逆戻りしている。
ラティは料理の腕を磨こうと頑張っているが……どうも結果がついてこない。腕の問題というより、食材の組み合わせが奇抜すぎるんだろう。俺はそう信じたい。
俺はというと、相も変わらずこの街で散歩をしている。ほとんどの場所を歩き尽くして、最近は時間を変えて散歩をすることが多いが、そのせいか、どの場所に何があるかを把握するだけでなく、それらの店の営業時間まで頭に入ってしまっている。
果たして、この能力が活きる日は来るのだろうか......。
それぞれが自由に過ごしているように見えて、どこか同じ場所をぐるぐる回っているだけの気がしてきた。
この光景、前にも見たような。いや、前っていうか、二週間くらい前にも同じことがあったよな。
……何度同じ過ちを繰り返せば学習するんだ俺たちは。
さすがに危機感を覚えた俺は、タカシとラティ、アルを強引に連れ出し、ギルドへ直行した。他の奴らの意見は聞かん。リオンの依頼で大金を得て余裕ができたとはいえ、このままじゃ本当に廃人一直線だ。
※※※
ギルドにたどり着いた俺たちは、いつものごとく掲示板の前で依頼を探す。
相変わらず掲示板には深夜の自販機に群がる蛾のごとく、びっしりと依頼書が貼られていた。
ギルドに行くたびにこれだけの依頼書が貼られているのを見るが、これらの依頼はちゃんと消化されているのか? この街の冒険者たちは何をしているんだ......。
冒険者という職業はフリーランス、悪く言えばフリーターという扱いになると思うのだが、この状況だとほぼ無職という肩書になるだろうな。
この街の冒険者達の肩書に対して勝手に疑問を抱いていると、ずらりと貼られた依頼書の中から、タカシがひとつを指差した。
「お、これなんか良さそうじゃね? 街の巡回依頼だってよ」
依頼の内容は単純だ。街を回って治安を確認しながら、インフラに異常がないかを報告する。難易度もかなり低めだ。
「簡単そうで悪くないわね」
ラティも頷く。
俺もタカシの案に賛成だ。
依頼も簡単そうで、トラブルも無さそうだと思ったが、この依頼を引き受けたい理由はもう一つあった。
それは、俺のスキルが大きく関わっている。
ギルドでの一件以来、まだ使いこなせていない。何に反応して発動するのか、どうすればレベルが上がるのかもわからない。
もし街で揉め事や小さなトラブルに出くわすなら、そのときスキルがどう作用するか確かめられるはずだ。
「よし、これにしよう。今回はソウタ抜きでやってみるぞ」
俺の一言に、タカシとラティが顔を見合わせて頷いた。アルも珍しくやる気を見せている。
こうして俺たちは「街の巡回依頼」を受け、ギルドを後にした。
胸の奥で、ソウタがいない状況で何が起きるのか、そして俺のスキルがどう働くのかを意識しながら。




