異世界初仕事は日雇いバイトになりそうです
「残金、300ゼル…」
布袋の中身を改めて確認しながら、俺はため息をついた。
「ってことはさ、宿もアウトだし、飯も厳しいんじゃね?」
タカシがさっき食べた焼き串の串だけを持ちながら吞気に言う。
それより、それ早く捨てろよ、武器にでもするのかお前は。
まあ、タカシが言っていることは正しい。
さっき服屋に向かう途中にいくつか宿屋を見つけたが、素泊まりでも最低700ゼルは必要らしい。
「このままだとマジで野宿になるな…」
異世界に来たらまずは宿確保という流れがテンプレだと思っていたが、どうして俺たちはそれすら守れないのか。
そんなことを考えていると、タカシがテンション高めにこんなことを言いだした。
「だったらさ、バイトしようぜ!」
なるほど、バイトねぇ。異世界に来てまでやるのか...
「異世界でバイトってどこで働くつもりなんだよ」
俺は半信半疑でそう尋ねると、
「いやあるって、絶対!ほら!!」
そう言ってタカシが指差した先、街角の掲示板に『日雇い歓迎!即日支払い!荷物運ぶだけ!』と書かれた怪しげな張り紙がペタペタと。
うん、明らかに怪しいな。
こっちの世界に来る前にニュースになってたやつだ。
いわゆる"闇バイト"。こっちにもそんなのがあるのか…
「これ絶対やばいやつだって、やめとこうぜ…」
俺はタカシに諭すように言ったが、
「いや、背に腹は代えられん。見るからに怪しそうだったら奇声をあげて逃げればいい」
覚悟の決まった顔でタカシが言った。
なぜ奇声をあげて逃げるつもりなんだ。