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腐れ縁の男子高生3人で異世界行ったら案外楽しかった件  作者: 秋川悠


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天才二人、置いてけぼり三人

 地下フロアの書庫には、ページをめくる紙の音と、ぶつぶつとした声だけが響いていた。


「……だから、この補助式を逆算して、魔力の流路を一次圧縮から二次展開に切り替えれば、理論上は――」


「でも、その場合、魔力密度が臨界点を超える直前で安定式を追加しないと暴走する危険があるよね。ほら、ここの式を見て」


「本当だ……っ! じゃあ、この符号を反転させれば――!」


 二人は夢中になって、床に散らばった資料を次々と広げては書き込みをしている。


 ……うん、全くわからん。


「タカシ。こいつらが何言ってるか理解できるか?」


「できるわけねぇだろ。あれだ、難しい顔して喋ってるだけのやつだ」


「ひどい解釈ね……」


 ラティも俺の横で腕を組んで見守っているが、完全にポカーンとした顔をしていた。


 そんな俺たちの視線に気づいたのか、ソウタが少しだけ顔を上げて口を開いた。


「簡単に言うと、この研究資料には“魔力制御式”っていう、現代じゃもう失われた技術の原型が書かれてるんだ」


 ソウタが分かりやすく説明してくれているつもりなのだろうが、まだ分からん。


「つまり、今の魔法は制御効率が悪いんだ。ポンプで水を汲むと必要以上に水が出ちゃうことがあるよね。でも、この資料の方法なら“蛇口をひねって必要な分だけ出す”みたいな制御ができるんだ」


 なるほど、その説明はめちゃめちゃ分かりやすいな。


「......それ、すごくね?」


「ほんとにすごいんだよ! 革命的!」


 タカシの言葉にリオンが力強く同意した。目は完全に輝いている。


「これを実現できれば、魔法を使うときの消費魔力量を半分以下にできる可能性があるんだよ。そうなれば、今まで魔力量が足りなくて魔法を使えなかった人でも、一流の魔導士になれるし、冒険者にとっては長期的な探索が可能になる」


「なるほどな……。すごいのはわかったけど、それは実現できるものなのか?」


 俺がそう尋ねると、ソウタとリオンは顔を見合わせ、小さく頷いた。


「ちょっと、僕たち二人で研究を進めてみるよ。だからしばらく家には帰らないかも」


「「「はぁ!?」」」


 突然の宣言に、俺たち三人の声が見事に裏返った。さっきまで高度な会話に置いてけぼりだったせいか、余計に混乱がひどい


「ここで話してたんだけど、これ、現代の常識を変えられる可能性があるんだ。だから新しく家を借りて、そこにこもって研究を進めたい。ギルドからの報酬も出るし、それを資金にすれば実現することも夢じゃなくなるからね」


「お前、そんな急に決めて大丈夫なのか?」


 タカシが心配そうな顔をしながらソウタに訊ねる


「大丈夫だよ。やりたいことは決まってる」


 そう言って、ソウタは静かに微笑んだ。


 ここまで何かに夢中になるソウタを久々に見た気がした。


 多分、このまま俺たちと一緒にいてもソウタは前には進めないかもしれない。それなら......。


「良いじゃん。お前の好きなようにやってみろ!それで、この世界の常識を変えてやれ!」


「え、いいのかよ?また妙なことに巻き込まれるかもしれねぇぞ?」


 俺の言葉にタカシが


「それはそれでもう慣れた。むしろ、何でもかかってこいって感じにまでなってきてる」


 正直、この異世界に来てからまともな日常なんて一度も過ごしていない。

 

 だったら、ソウタが本気でやりたいことをやらせる方が、俺たちにとっても面白いはずだ。


「それに、ソウタの知識って俺らじゃ到底使いこなせないレベルだろ? なら、ここで伸ばせるだけ伸ばさせてやった方がいいと思うんだよ」


 タカシは少し考え込み、やがて肩をすくめた。


「……まぁ、確かに。ソウタがやりたいってんなら止める理由もねぇな」


「私も別にいいけど……その結果、とんでもないトラブルを連れてきたら許さないわよ」

 

 ラティは眉をひそめながらも、一応は同意したらしい。


「みんな、ありがとう。頑張るよ」


 こうして俺たちの依頼は、思わぬ形で幕を閉じた。


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