リオン、師を見つける(人格が変わります)
旧研究施設の書庫で無事にリオンを保護した俺たちは、リオンの難ありな性格に四苦八苦していた。
ラティもタカシも、リオンの鋭い言葉のナイフでズタズタにされて意気消沈している。
そんなことをよそに、ソウタは棚の前で顎に手を当てながら、興味深そうに資料を読み込んでいた。 小声でぶつぶつ呟きながら、ページをめくる指先は異様なほど真剣だ。
その姿を、リオンはじっと見つめていた。
「……あの」
唐突にリオンが口を開いた。
「あなた、ここにある資料の内容……理解できるんですか?」
リオンの目は、先ほどまでとは打って変わって真剣そのものだった。
「ん? あぁ、まあね。この世界の図書館にあった研究資料は一通り読んでるから、大体分かるよ。でも、ここにある資料は現代の研究内容とは全然違うアプローチだから面白いね」
さらりと言ってのけるソウタに、リオンの瞳が一気に輝きを増す。
「す、すごい……!」
次の瞬間、リオンは床に散乱した資料をかき分けるようにしてソウタのもとへ駆け寄った。
「じゃ、じゃあ、この資料のここに書かれてる理論についてはどう思いますか!? 僕、この式は現代の魔導理論を大きく覆す内容だと思うんです!もし応用できれば、魔力消費を今より七割以上削減できるはずで、そしたら――」
すげぇ切り替えの速さだなおい......。
さっきまで「おばさん誰?」ってラティをボコボコにしてたやつと同一人物とは思えん。
「うん、その仮説は面白いね。ただ、この式だと魔力の流れを強制的に圧縮してるから、制御に失敗すると暴走の危険がある。 だから、ここの補助式をこう組み替えれば、安定化できるんじゃないかな」
ソウタは指で図をなぞりながら、さらっと的確な回答を返す。
というより、ソウタが何を言っているのか全く理解できない。コイツ、本当に何者なんだよ......。
「な、なるほど……! 補助式をそこに組み込むなんて発想、僕にはなかったです……!」
リオンは完全にソウタに夢中だった。
その横で、タカシが不満そうにぼそっと呟く。
「おいおい、何だこの温度差は……。俺にはアホ面言っといて、ソウタには弟子入り志願みたいな顔してんじゃねぇか!ふざけんじゃねーよ!」
……いや、仕方ないだろう。
今のリオンにとってソウタは、たぶん神のように見えている。
「ソウタさん、僕、あなたに弟子入りしたいです! お願いします!」
あ、ほんとに弟子入りを申し出たぞこの子。
「僕、弟子とかそういうのは取らない主義なんだよね。お互いに疑問点が出来たら色々教え合うってのでいいんじゃないかな?いつでも家においでよ」
弟子を取らない主義って......。お前はいつからそんなに偉くなったんだ。
まぁ、ソウタもリオンと似たようなもんだもんな。
ソウタの父親も大手製薬会社の研究長だったし、何か共鳴するものでもあったんだろう。
「え!?いいんですか!?やったーーー!」
俺はその光景を眺めながら、心の中で深いため息をついた。
今回みたいに、ソウタの才覚が活かされる場面に遭遇すると毎回思うのだが、なんでコイツ、俺たちなんかとつるんでるんだろうな......。




