旧魔導実験室(久々の依頼です)
俺たちは小銭稼ぎとリフレッシュも兼ねて新しい依頼を探すためにギルドに来たのだったが...。
「それがですね...少々厄介な依頼でして...」
ギルド受付嬢のミレイさんが開口一番、妙に含みのある言い方をしてきた。
……嫌な予感しかしないんだが...。
「といいますと...?」
ソウタが淡々と尋ねる。
「とある場所に迷い込んでしまった子を連れ戻してほしいんです!」
あぁ、またこの手の依頼か......。
アリステリアといい、珍獣だったアルの件といい、全く異世界っぽくない人探しや動物駆除みたいな依頼ばかりを引き受けている気がするんだが……。
「具体的には、この街の研究機関に勤めている息子さんが旧魔導実験室に入り込んでしまったようで...。この研究機関に勤めている方が今回の依頼主なんです」
「旧ってことは、今は使われてない場所ってことすか?」
「はい。大昔に魔術を研究するための場所として使われていて、今は資料が残っている程度の場所なのですが、その場所に魔物が住みついてしまっていて...ギルドでも立ち入り禁止の場所として扱っていたのですが...」
おいおい、めちゃくちゃ危ないじゃねーかよ...。
「それで、俺らに依頼を頼んだんですね。他の冒険者とかに声は掛けなかったんですか?」
「それがですね...他の冒険者の方は別の依頼で出払ってしまっているんです...。なのでシンヤさん達に依頼をお願いしたいのですが...」
ミレイは上目遣いで俺の方を見て頼み込んでくる。
「他に頼める人いないから」で危険案件を俺らに回してきているような感じもする。
てか、こんな時に他の冒険者達は何をしてるんだよ...。
おかげでとんでもない依頼が俺らのところに来ちまったじゃねーか...。
だが、正直迷い込んでしまった子の安否も気になる。
……くそ、そんな目で見られたら断れねぇだろ。
受付がゴリゴリの強面男性だったら秒で断ってたのに。
しばらく考えてから、俺は他のメンバーに訊ねてみる。
「みんな、今回の依頼、引き受けてもいいか?」
「当たり前だろ!?魔物でも幽霊でも何でも来いや!」
タカシは即答。
コイツが即答するときほど厄介ごとを引き寄せる気もしているのだが...。
「報酬を弾んでもらえるなら、僕も参加するよ」
「もちろんです!依頼者の息子さんを無事に助け出したら2000万ゼルが支払われます」
「「「に、2000万ゼル!?」」」
全員の声がワントーン上がった。
「はい、そうです!依頼者が研究所の幹部なので、それなりに報酬は出るんです!」
この地区の研究機関はそんなに偉いのか...。アリステリアの捜索の依頼でさえ1000万ゼルだったのに...。意味が分からん。
「シンヤ、受けよう。絶対引き受けよう」
ソウタの目の色があからさまに変わった。
こいつ...。金の話になるとガラッと人が変わるのが本当に怖い...。
「ラティはどうする?別に無理にとは言わない」
「えー...。その言い方はズルいわよ...。だって参加しなかったら私に報酬は入らないんでしょ...?」
「当たり前だよ。働かざる者に報酬は無いよ」
俺が答えようとした瞬間、金の話になってむきになったのか、ソウタが割って入ってラティに言った。
「だよね~...。じゃあ私も行くわよ...」
「よし。決まりだ。ミレイさん、今回の依頼、引き受けさせてもらいます」
こうして、俺たちは旧魔導実験室の救出依頼を引き受けた。
……このときはまだ知らなかった。
これが“ただの迷子救出”じゃないなんて。




