二回目の閑話(またまた無駄話回です)
※今回のエピソードは、シンヤたちが家に住み始めてから三日が経過し、暇を持て余している四人がただ無駄話をしているだけのエピソードです。
新居のリビング。カグノミヤで購入したふかふかのソファに座りながら、俺たち三人は特に意味もなくダラダラしていた。
「こっちの世界に来て思ったんだけどさ、美味い飯屋が多いよな」
最初に話題を振ったのはタカシだった。
「確かに。色々な場所に行ったけど、どの店もハズレは無かったね」
ソウタは淡々と同意する。
「俺らの舌に合う店が多いんじゃないか?名古屋って結構味付けが濃いものが多いじゃんか。みそ汁は赤味噌だし、とんかつにも味噌かけてるし」
俺もタカシの話題にフォローを入れるように返す。
「なるほど。確かにこっちの世界で控えめな味付けの料理は食べてないね」
「ずっと気になってたんだけどさ、あんたたちが元居た名古屋ってどんな場所なの?何か魅力的な場所があったりするの?」
ラティが急に話に乗っかってきたが、あいにく名古屋の観光案内はしたことがないぞ。
「名古屋の魅力的な場所ねぇ……」
タカシがしばらく考え込み、再び口を開いた。
「無いな」
「いや、そこはどこかしら挙げろよ!色々あるだろ!オ〇シス21とかレ〇ランドとか!」
諦めるような返しに少しイラっときた俺はすかさずツッコんだ。
「それはそうなんだけどよ、前にたまたま見たテレビ番組で名古屋には何にも無いって特集されててよ、人に薦められる場所ねぇなって思ったんだよな」
「でも名古屋城とか文化的に価値の高い場所とかあるよ」
ここにきてソウタが珍しく反論する。
「名古屋城ねぇ……。俺、十五年間名古屋住んでて名古屋城行ったこと一回もねぇぞ」
「はぁ!?お前名古屋出身名乗るのやめろ!」
「そんな批判されるような事なのかよ!ほら!京都に住んでる人も意外と清水寺とか行かなかったりするじゃんか!それと同じ感覚だろ!」
「はぁ……タカシは名古屋の恥だね……見損なったよ……」
タカシの必死の説明もむなしく、ソウタは失望の表情をあらわにする。
「ソウタまで俺を批判するのかよ……。まあ行けたら行くよ!もうあっちの世界では死んじまってるけど」
「あのー、私を置いて勝手にヒートアップするのやめてよ。あと、あっちの世界で死んでるっていうジョークは笑えないわよ」
「いや本当に死んじまってるんだからしょうがねーだろ」
いや開き直るなよ。お前が自転車に三人乗りしようと言った事実は一生忘れないからな。
「全然話変わるんだけどさ、タカシ、新しい家でもリビングくらいは綺麗に使ってね。タカシの部屋は別にどうなろうが気にしないけど」
「流石に共用スペースくらいは綺麗に使うって……」
「え、何。タカシって掃除苦手なの?」
ラティの目が細くなった。これは完全に詰問モードだ。
「前の世界でのコイツの部屋、めっちゃ汚かったんだよ。床には漫画が散らかって足の踏み場が無いし、飲み終わった空のペットボトルが山ほどあるし。あれは何だ?お前ペットボトルの収集癖でもあんのか?」
俺もここぞとばかりに追撃する。
「お前らうるせーぞ!漫画は後で読むから床においてんだよ!そんでペットボトルはまとめて捨てようと思ってたんだよ!」
「あぁ……。これは典型的な掃除の出来ない人間ね……。あんた、リビング汚したら家から追い出すわよ」
ラティの声が低い。これはガチで怒ってるやつだ…。
「ラティまでそんなこと言うのかよ……。まぁ善処するよ……」
「善処じゃないの。やるのよ。返事は?」
ラティの目が細められ、射抜くような視線を向けてきた。
……こいつ、マジでやる気だ。
「はい……。頑張ります……」
タカシの情けない返事は、リビングの壁に吸い込まれるように消えていった。
新居に引っ越してから三日目にして、我が家の主導権は完全にラティに握られたらしい。




