表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐れ縁の男子高生3人で異世界行ったら案外楽しかった件  作者: 秋川悠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/85

大切な人を守りたいから(婚約阻止編完結です)

セドリックの家で目を覚ましてから、もう数時間が経っていた。

 

 すっかり夜は更け、窓の外には無数の星が瞬き、街は温かな光に包まれていた。


 気絶して中途半端に眠っていたせいか、妙に頭は冴えていて眠気はまるでなかった。

 

 俺はひとり部屋を抜け出し、ノルディア地区の街を一望できるバルコニーに足を運んでいた。


 別に黄昏れてカッコつけようとかは思ってないぞ。ただ夜風に当たりたかっただけだ。


 眼下に広がる街並みは、昼とはまるで違う姿を見せていた。


 石畳の道には街灯が等間隔に並び、その光が淡く街を照らしている。人々のざわめきは遠くかすれ、光だけが夜を彩っていた。グランメル地区の荒々しい活気とはまた違う、落ち着いた華やかさがそこにはあった。


 ぼんやりと街を見下ろしていると、不意に背後から声がした。


「こんな時間に外に出ると、風邪をひいてしまいますよ」


 振り返ると、そこに立っていたのはアリステリアだった。

 

 月明かりを受けた横顔は白く輝き、昼間の華やかな花嫁姿とは違う、静謐な雰囲気をまとっている。


「アリステリアこそ、こんな時間にどうしたんだ?」


「私も夜風に当たりたくて来たのです。ここから眺める景色が、昔から好きでして」


 まさか同じ理由だとは......。


 俺が苦笑すると、アリステリアはふっと唇を緩め、少しの沈黙を置いてから口を開いた。


「それにしても……無茶をしますね、あなたたちは」


 その声音は責めるものではなく、どこか柔らかかった。


「すまないな。あんな案しか思いつかなかったんだ。本当は婚約破棄に持ち込むつもりだったけど……俺にはできなかった」


「いいえ。そんなことはありませんわ」


 アリステリアは小さく首を振る。


「私も納得のうえで選んだのです。それよりも……今回の作戦、わたくしの性格を見抜いたうえで、あの展開に持ち込んだのでしょう?本当に無茶をなさいますね」


 何も言い返せなかった。図星すぎる。


 沈黙を埋めるように、俺は口を開いた。


「俺が言うのもどうかと思うけど、どうしてセドリックと結婚すると決めたんだ?」


 問いかけると、アリステリアは一瞬、視線を夜空に向ける。

 

 星の光を映したその瞳は、静かな決意を湛えていた。


「……わたくしがセドリック様との結婚を選んだのは、ただ家のためではありません。ここ数か月で、本当に多くの人と出会いました。そして気づいたのです。わたくしにも、守りたい人が増えたのだと。家族だけでなく、友人や......あなたたちもそうです。誰かを守るということは、とても大きな責任。でも、逃げてばかりでは大切な人を失ってしまう。だからこそ、少しでも大人になろうと思ったのです。今回の婚約は、そのために必要な選択でした。セドリック様なら、きっと共に歩んでいけると信じられたから。けれど、タカシ様への想いを忘れたわけではありませんよ!彼はわたくしの運命の相手であることに違いはありませんから」


「相変わらずだな、アリステリアみたいな人に好意を持たれてるタカシが羨ましいよ」


思わず本音がこぼれる。冗談半分に言ったつもりだったが、妙に胸に刺さった。


アリステリアはくすりと笑い、首を横に振った。


「ふふっ、そういうあなたがいたから、私はここまで来られたのですよ。忘れないでくださいね」


 言葉が詰まった。


「……別に俺は何もしてないよ、ただのお節介な部外者だからな」


「部外者ではありません。あなたも、わたくしが守りたい大切な人の一人なのですから」


 アリステリアはそう言って、穏やかに微笑んだ。その顔は、これまで見てきたどんな表情よりも美しくて、胸が苦しくなるほどだった。


 そんな顔を見せられたら、もう何も言えないじゃないか。ほんと、ずるいよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ