再び作戦会議(結婚式から十日前の話です)
結婚式当日から十日前に遡る。
ある策を思いついた俺は、翌日の朝に各々をリビングに集めた。
この時点で全員が「また何かやらかす気だな」という顔をしていたのは見なかったことにする。
「突然集まってもらってすまない。俺が思いついた婚約阻止の案をみんなに共有しておきたくてな」
「俺も一晩考えたんだけど、結局思いつかなかったから助かるわ」
「それで、シンヤが考えた策ってどういうものなの?」
ソウタが興味津々に聞いてくる。
「今回の作戦は、セドリックとアリステリアの両者が幸せになれるものだ。その名も――政治も愛も丸く収める、爆破系恋愛成就作戦だ」
「えーっと、あんた何言ってるの?」
ラティが腕を組みながら眉をひそめて言う。
「ちょっと作戦名がな……お前ネーミングセンス皆無だな」
タカシが遠慮なく刺してきた。
こいつら……俺が睡眠時間を削ってひねり出した作戦名を秒で切り捨てやがった。
まぁ正直、名前はどうでもいい。重要なのは中身だ。
「まぁお前ら、落ち着けよ。作戦を簡単に説明すると、結婚式会場をぶっ壊して、セドリックがアリステリアを助ける状況を作る。そしたら、彼女は助けられた相手に恋する。つまり、アリステリアがタカシに恋をしたあの時の再現をするわけだ」
「お前、また随分と派手なことをする案を提示してきやがったな…てか、そもそもセドリックは今回の結婚に前向きなのか?」
タカシが腕を組みながら俺に聞いてきた。
「あぁ、昨日話した限りでは、セドリックはアリステリアに気がある。だから、簡単に婚約破棄させるのも惜しいと思ったんだ」
「で、どうやって結婚式会場を壊すわけ?」
ラティの声が微妙に鋭くなる。
「業者を装って、あらかじめ式場に細工をしておく。昨日のパーティで聞いたが、結婚式の一週間前に会場の点検があるらしい。その業者に紛れ込んで、天井を崩す細工をするってわけだ」
「それ……犯罪じゃね?」
タカシの容赦ないツッコミが飛んでくる。
「ギリギリ合法の範囲に収める。あくまで“自然な不運”だ」
「シンヤ、倫理観終わってるね…」
ラティがため息をつきながら言う。
心外だな。少なくともギリギリは意識している。
「結局、僕たちは何をすればいいの?」
ソウタが首をかしげながら俺に訊ねてきた。
「まずは三日後に控えている細工の準備だ。三日後の役割分担も決めてある。俺とソウタ、アルで会場の天井に細工。タカシは外で見張り、ラティは式場関係者とのトーク係だ」
「トーク係って何よ!あと、細工にアルも連れていくつもり!?怪しまれるでしょ!」
「お前は式関係者から当日のタイムスケジュールを聞いておいてほしい。天井を壊すタイミングが分かれば成功率が上がる。アルは低級魔法が使えるし、細い通路も通れそうだから役立つ」
「あんなデブ猫に何が出来るのよ……」
「思ったんだけど、天井に細工って具体的に何すんの?」
タカシが眉をひそめながら言う。
「壊す天井の材質を変えるんだ。セドリックなら本物の瓦礫が落ちても余裕で粉砕できるが、念のため発泡スチロールみたいな素材に変えておく。それを落とす。言ったろ、“ギリギリ合法”だって」
「教会の天井を壊してる時点で犯罪では……」
ラティの鋭いツッコミが入る。
「事が済んだら修復する。問題ない」
「シンヤ、やっぱり倫理観終わってるね」
「今回の策が成功すれば何でもいい。ちなみに当日、天井を壊す役はアルだ。俺たちは招待客として会場にいるからな。それにアルなら壊した後、素早く逃げられる」
「なるほど。流石シンヤの案だね、抜かりがない」
ソウタは妙に納得している。
「ちなみになんだけど、アリステリアがセドリックに惚れなかった場合は?」
「その際の案は全く考えていない。惚れてもらうしかない」
「そこは他人任せなのね……」
「まぁ、俺たちの役割はあくまで舞台装置作りだ。後は当人同士がどう燃え上がるかって話だな」
タカシはそう言いながら、座っていたソファから立ち上がりながら言う。
「ちなみにさ、結婚式当日の役割分担とかも決まってるの?」
「当日に俺たちがやることは特にない。当日もアルにやってもらうからな」
「というと?」
「怪しまれずに天井を破壊するとなれば、小回りが利いて現場からすぐ離れられるアルに任せるのが一番いいと思ったんだ。それに、破壊する瞬間に俺たちが会場にいればアリバイも作れるだろ?」
「なるほど、作戦後に疑われないシナリオもしっかり考えてるんだね。流石だよ」
「あ、そうだ。ラティは天井が破壊された直後に大声で叫んでくれ。そっちの方が天井が壊れたこともセドリックに伝わりやすいしな」
「叫ぶ係って…私今回なにもできてないきがするんですけど…」
「情報収集とか諸々役に立ってるよお前は。そういうわけだから、みんな、よろしく頼むぞ」
こうして、俺たちはセドリックとアリステリアをくっつけるという奇策を行うのであった。




