表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腐れ縁の男子高生3人で異世界行ったら案外楽しかった件  作者: 秋川悠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/85

お前が信じてくれるなら(今回も真面目回です)

 夕食を終えた俺たちは、すっかり夜も更けた頃、家へと戻ってきた。


 ラティは腹が苦しいとか言ってソファに倒れ込み、タカシとソウタに運ばれ自室へと戻り、タカシとソウタもそのまま自室へと戻っていった。


 そして俺は、一人リビングに残った。


 部屋の中は静かで、魔法ランタンの光だけが淡く揺れていた。昼間の喧騒と笑い声が嘘のように、しんと静まり返っている。


 俺はソファに深く腰を沈めて、ため息をついた。


 婚約阻止、その言葉が今も頭の中で繰り返されている。


 アリステリアの言葉も、セドリックの言葉も、どちらも嘘じゃない。

 

 二人の言葉は、どちらも自分の信じるもののために、まっすぐだった。


 でも、どちらかに傾けば、もう一方を切り捨てることになる。


 グランメル地区とノルディア地区。

 

 自由と統制。


 個人の思いの尊重か国益か。


 俺が考えすぎなんだろうか。でも、こうして静かになると、どうしても考えてしまう。


 もし俺たちがこの婚約を本当に阻止したら、アリステリアは笑顔になれるかもしれない。

 

 だけど、その未来でセドリックはどうなるんだ?


 あの人は……本気だった。わずかな時間での会話だったが、あの目は、嘘をつく人間の目じゃなかった。


 あんな想いを、俺が踏みにじっていいのか?


 たった数時間話しただけの人間に、情が移ったってだけか?


 いや違うな。この気持ち悪さは、俺自身が見届けたい未来と違うからだ。


 じゃあこれは俺のエゴなのか…?


 俺の見届けたい未来のために、誰かを犠牲にしてもいいのか...?


 アリステリアとセドリックにとって最善の選択とは...?


 そんなことを延々と考えていた時だった。


 キィ……と、リビングの扉が小さく開いた。


「……まだ起きてたんだ」


 入ってきたのは、ソウタだった。


 時計を見てみると、家に帰ってきてから一時間弱経っていた。


 こんな時間まで考え込んでいたのか俺は…結構重症かもな…。


「ソウタこそ、こんな時間にどうしたんだよ」


「いや、ちょっとだけ。なんか眠れなくてね」


 そう言うと、ソウタはキッチンに向かい、ミルクを取り出して温めていた。


 数分ほどして俺の座っているソファに腰かけ、手に持っていたホットミルクを俺に手渡した。


「さっきからずっと、難しい顔してたよね。パーティのときから、なんか様子おかしかったし」


「……そう見えてたか」


 ソウタにはバレてたらしい。


「考えてるんだ、婚約阻止のこと。アリステリアのためにやるべきだって、頭では分かってるんだけど……」

 

 セドリックの顔が、脳裏に浮かぶ。


「それでも、どうしても……引っかかるんだ。セドリックの気持ちを、踏みつけにするような気がしてさ」


「シンヤって、そういうとこあるよね」


 ソウタが、ぽつりと呟く。


「ちゃんと見て、ちゃんと悩んで、ちゃんと考えて……それって、すごいことだと思うよ」


 少し間を空けて、ソウタが再び話し出す。


「悩んだうえで出した答えなら、それが誰かを傷つける結果になっても、ちゃんと意味はあると思うんだ。だって、全部わかったうえで選んだんだもん。それって、ちゃんと誠実なことだよ」 


 俺は言葉を返せなかった。


 いつも飄々としていて、バカみたいなことを口にしてるソウタの言葉が、今はやけにまっすぐ響いた。


「......ありがとな、ソウタ」


「ううん」


 それだけ言って、ソウタはふわっと立ち上がる。


「僕はシンヤが出す答えを信じるよ。おやすみ」


 そう言って、ソウタはミルクの入ったマグカップを手にしたまま、リビングを出て行った。


 しばらくその背中を見送ってから、俺はまたソファに背を預けた。


 簡単には答えは出ない。でも、誰かが信じてくれてるなら。


 そして、頭の中に浮かんだのは、ひとつの奇策だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ