豪華絢爛パーティ会場(お酒は二十歳になってから)
パーティ当日。
俺たちはアリステリアと共に会場であるセドリック家の前にいた。
眼前にそびえ立つのは、もはや「屋敷」というより「宮殿」だった。真っ白な壁に金細工の装飾が光を反射し、庭には意味がわからないほど精密に刈り込まれた植木がずらり。噴水には謎の神獣っぽい像が五体も立ってる。
「……タージマハルかよ」
「これが家なのか...」
俺がぼそりと呟き、ソウタはやや緊張した様子で声を漏らす。ラティはすでに姿勢を正して、貴族モードに突入しているようだった。
「何度訪れても素晴らしいお家ですわね」
豪華な屋敷に住んでいるアリステリアでさえ感心した様子だった。
俺も気を引き締めて、正装の裾を整える。今回の任務は「護衛」だ。変なやらかしは絶対にNGだ。特にタカシ。
屋敷の正門をくぐると、すぐに広大なエントランスホールに出た。天井は高く、シャンデリアはデカくて重そうだ。
てか、語彙力無いな俺...
目の前には、パーティ会場へと続く長い赤絨毯の廊下が伸びていた。すでに数組の貴族らしき人々が、談笑しながら会場に向かって歩いている。
「全員キラキラしてるな...」
ソウタがぼそりとつぶやいた。確かに、宝石の主張が激しい。近づいたら目が潰れそうな服装ばかりだ。
だが、俺たちだって今日は一応、アリステリアの家から支給された正装でここに来ている。
「よし、気合い入れていこうぜ。問題起こすなよ?」
「了解。僕は壁になる覚悟で来てる」
「私は目線の動きで刺客を見抜く所存よ」
「わたくしも全力でパーティを楽しみますわ!」
全員、思いのほか前向きだった。……まぁ、タカシが黙ってれば多分大丈夫だろう。
そして、俺たちはパーティ会場の扉を開いた。
まばゆい光と音の波が、どっと押し寄せてくる。
天井は信じられない高さで、黄金の装飾が施された梁がきらめき、数えきれないシャンデリアが輝きを競っている。中央には大理石のダンスフロア。左右には高級そうな料理が並んだ長テーブル。執事らしき人がワインを注ぎ、貴族らしき人々が笑っている。それはまるで西洋の絵画そのものが現実世界に出てきたようなキラキラぶりだった。
今回のパーティに参加するにあたって、俺たちはあらかじめ役割分担をしていた。
タカシとソウタはアリステリアの護衛を、ラティはパーティに参加している婦人などから情報収集を行う。
俺はというと、セドリックに接触するために会場をうろうろしていた。
にしても、人が多いな。会場にいるだけで体力が削られていきそうだ...
人混みの中を抜け、ワイングラスを手に壁際で人心地ついたその時だった。
会場の扉の扉が開き、一人の青年が護衛と共に会場に入ってきた。
青年が会場に入ると、周りのざわめきが大きくなる。
そのざわめきに耳を傾けてみると、『セドリック様』という言葉が頻繁に出てきていた。
なるほど、あれがセドリックか。噂通り、整った顔立ちをしたやつだな。
様子を伺っていると、セドリックがこちらの方に歩いてきていた。
まさか、俺の方に来てるのか...?
流石に自意識過剰だと思ったが、確実にこっちに来ている。まるで「君こそが目的地です」みたいな足取りで来てる。
やばい、逃げたい。頼むから俺をスルーしてくれ...セドリックと接触できるのはありがたいが、こんなに直接的に来られても困る...
そんな願いも空しく、セドリックは俺の前で立ち止まり、こんなことを言ってきた。
「失礼、あなた、“タピオカの男”で間違いありませんか?」
「え…?あ、あぁ……そう呼ばれてるのは初めてですけどね」
予想外の出来事に多少動揺はしたが、すかさず俺は取り繕うような笑みで返事をした。てか、タピオカの男って...
「アリステリア嬢を助けていただいた件、深く感謝しています。リューベルフラウス家の皆様とともに、私も何度もあなた方の話を耳にしました」
噂というより、もはや有名人みたいな扱いだな。
「まぁギルドからの依頼だったので、助けるのは当然ですよ」
「それでも礼は尽くさねばなりません。少しだけ、お時間をいただけますか?」
向こうから時間を取ってもらえるとは...好都合だ、断る理由は無いが...
会場にいるほとんどの人間がこちらに視線を向けている。これ以上注目されるのは勘弁だ。いい意味でも悪い意味でも。
「構いませんが...少し場所を変えていただけると助かります...」




