理想の住居へ(まだ家具屋には行きません)
新しい住居が決まった俺たちは、家具を揃えるために家具屋へ向かおうとしていた。
家具屋に行く前に、色々部屋の寸法とか確認しておかないとな。こういう作業をタカシに任せると、絶対に家具のサイズとか間違える未来が見える。ここは俺がやっておくしかない。
※※※
リビングに一番に顔を出したのはラティだった。
「お待たせー!遅れてごめん!」と、元気よく入ってくる。
てか、もう一時間経ったのか。自室やリビングのあれこれを測っているうちに、けっこうな時間が過ぎてたみたいだ。
まぁ調べておきたい場所のサイズは全部把握できたし、準備は万端だ。
ラティがキョロキョロとあたりを見渡して言った。
「あれ?タカシとソウタはまだ来てないのね」
「ほんとだな…あいつら、集合時間のこと忘れてそうだな」
俺はそう言ってため息をつきつつ、二階に上がった。まずはタカシの部屋の扉の前で声をかける。
「おーい、タカシ!もう集合時間とっくに過ぎてるぞ!何してんだ~?」
……が、反応なし。いや、無反応はやめてくれ、不安になるんだよ。
「おい!大丈夫か?ドア、開けるぞ!」
心配になった俺は、ためらわずにドアを開ける。
――そこには、倒立しながら目を瞑るタカシがいた。
「……え?お前……なにやってんの……?」
俺の静かな問いに、タカシはひょいと倒立をやめてこちらを見た。
「あぁ!ごめん!もう集合時間か?」
「時間じゃなくて!今の体勢なんだよ!」
ツッコまずにはいられない。
「え?新しい部屋来たら倒立するのが常識だろ?」とタカシは真顔で言ってのけた。
「いや、しねーよ!もしかして、お前ここ来てからずっとその体勢で過ごしてたのか!?」
「いや、倒立したり、バク転したり。」
まじで…お前何やってんだよ……。
そういえば、さっきリビングで作業してたときに、上からドスンって音がしてたけど……まさかコイツのバク転の音だったのか?バカだろほんとに。
「もう時間だろ?家具見に行こうぜ!」と満面の笑みで言ってくるタカシに、俺は冷静に返す。
「いや、まだソウタがリビングに来てないから、お前とソウタを呼びに来たんだよ」
「おっと、そうだったのか。じゃあソウタ呼びに行こうぜ!」
タカシと一緒に、今度はソウタの部屋の前へ。
「おーい!ソウター!時間になったし、家具見に行こうぜー!」とタカシが声をかける。
……またこの沈黙パターンか。
「ソウタ!シカトすんならドア開けるぞ!」
すると中から、慌てた声が返ってきた。
「あぁ、ごめん!声に気が付かなかった!今ドア開けるよ!」
扉が開くと、床には紙が散乱し、そして――倒立したアルがいた。
「……え、今度はお前が倒立してんのかよ……」
呆れている俺に、ソウタはにこやかに言う。
「アルのキーホルダーを作るために、僕がいろいろポーズを取らせてたんだよ」
ああ、この紙の山はアルを描いたスケッチだったのか。てか妙に上手いのが腹立つ。
「てか集合の時間とっくに過ぎてるぞおい!集団の意識を絶やすな!」
……集合時間に来なかったお前が言うな。
※※※
その後、全員でリビングに戻ると、案の定ラティの雷が落ちた。
「まったく、次から気をつけなさいよ!じゃあ、行くとしましょうか!家具屋に!」
気を取り直してラティが明るく言うと、タカシがきょとんとした顔で尋ねる。
「てか、家具屋ってどこにあるんだ?」
それにソウタが答える。
「ギルドと僕らの家の中間に、一店舗あった気がするよ」
「じゃあそこ行くか!」とタカシ。
こうして、俺たちはようやく家具屋へと出発するのだった。




