4LDKでそんなに安いんですか!?(異世界相場です)
最後に俺たちが訪れた家は、ギルドから徒歩二十分ほどの場所にある、レンガ造りの一軒家だった。
俺はその外観を見た瞬間、思わず息を呑んだ。
深い赤茶のレンガが丁寧に積まれた外壁に、繊細な彫刻の施された木製の扉。家の前には小さな庭が広がり、そこには可憐な花々が風に揺れていた。
部屋の間取りは正真正銘の4LDK。風呂・トイレはもちろん別、広々としたダイニングキッチン、さらに何故か地下倉庫まで付いている。まさに俺たちが理想としていた条件が、全て揃っていた。
一階はほとんどリビングとキッチンという驚異の広さで、鉄製のらせん階段を上がった二階には、長い廊下と両サイドに二部屋ずつの個室が並んでいた。
「おお!すっげー良い家じゃん!」
タカシが子どものような笑顔で歓声をあげる。
「でも、この家の家賃、お高いんでしょ?」
ラティがジト目で不動産屋のおっさんに尋ねた。
「月額で五万ゼルだよ」
おっさんはあっけらかんと答える。
「「やっっっす!!!」」
ラティとタカシが同時に叫んだ。いや、俺も心の中でそう叫んでた。月に五万ゼルって……四人で割ったら一万二千五百ゼルだぞ?信じられん。
「月に五万って……なんかいわくつきの物件とかだったりします……?」
疑い深くなるのも無理はない。ラティが慎重に訊ねる。
「事故とか事件は起こったことないよ。ギルドから少し距離があるから、働き者の冒
険者たちには少し不人気物件でな、それで家賃を下げたんだよ」
なるほどな。立地だけの問題なら大丈夫だ。
「あと、この家って動物と居住することってできます?」
俺が尋ねると、おっさんは頷いた。
「あぁ、問題ないよ」
アル、良かったな。お前だけ野宿は避けられそうだ。
正直、こんなに条件の揃った家に月五万ゼルで暮らせるなんて、契約しない理由がない。
五分ほどの話し合いの末、俺たちはこの家に決めた。
「はい、契約完了ね。もう今日から住んでいいから、何か困ったことあったら連絡して」
不動産屋のおっさんが書類を手渡してくる。
こうして、俺たちの長い家探しの旅は終わりを迎えた。
てか、最初からこの家見せてくれればもっと早かったのに……
「じゃあ、家も決まったことだし、さっそくアレをやりますか」
タカシが妙にやる気を出している。
「アレって何だよ」
俺が訊ねると、タカシはドヤ顔で答えた。
「じゃんけんだよ、部屋割りじゃんけん。勝ったやつから順に部屋を決められる」
ああ、なるほどな。たしかに二階の部屋は広さも日当たりもバラバラだったし、特
に階段から遠い二部屋は、やけに内装が綺麗だったのが気になった。
「てかラティ、お前じゃんけん分かる?」
俺が聞くと、ラティはふふんと胸を張る。
「知ってるわよ。前に会った学ランのやつに教えてもらったし」
……またあいつか。教えたのがタピオカとじゃんけんって、もう少し有益な情報にしてくれよ。
「それじゃあ、気を取り直してやりますか〜!」
タカシが腕を振り上げる。
「「「「じゃーん、けーん、ぽん!!!」」」」
最初の勝負でラティがパー、他の三人はグーだった。
「やったわ!じゃあここで!」
ラティが一番いい部屋を迷わず選んでいく。
「じゃあ、いくぞ……」
「「「じゃーん、けーん、ぽん!!!」」」
二回戦ではソウタが勝った。
「よっしゃい!じゃあ僕もあの綺麗な部屋で」
「正直、俺あの二部屋以外ならどこでもいいわ。タカシ、お前好きな部屋選んでいいぞ」
俺が言うと、タカシが少し悩みながら言った。
「ぶっちゃけ、俺もどっちでもいいんだよな……じゃあこっちで」
「よし、部屋割りも決まったことだし、家具とか見に行ってみるか」
俺が提案すると、タカシが嬉しそうに頷いた。
「おぉ!良いなそれ!」
「私、部屋に何を置くかとか決めておきたいから一時間後にリビング集合でもいい?」
ラティが声をかけてきた。
「あぁ、そうだな。俺もリビングのそれぞれの場所のサイズとかも把握しておきたいし、そうするか」
「オッケー!じゃあ一時間後にリビング集合で!」
こうして、ようやく俺たちの異世界生活に“拠点”ができた。




