哲学猫現る(依頼達成です)
コイツ、喋るのかよ……
「もともと話せるわけではないぞ。おぬしのスキルによって、ワタシはお主らと会話ができるようになったのだ」
まさかの展開に、俺が呆気に取られていると、タカシが横から口を挟んできた。
「シンヤのスキルがコイツを喋れるようにしたのかよ……」
そういえば、初めて俺のスキルが発動したんだよな。
改めて俺はスキルパネルを開いて、発動したスキルがどんなものだったかを確認する。
【佐藤シンヤ】
スキル名:穏便
スキル説明:とにかくモノゴトを穏便に進められるよう頑張れる。
ランク:B
相変わらず曖昧なスキル説明だな……。
正直、なんでスキルが発動したのかすら分からん。
そのとき、ラティが不思議そうに珍獣へ問いかけた。
「そういえば、何であなたはここで叫んでたの?」
珍獣――ぽよぽよの猫(仮)が答える。
「それは――存在を問う叫びだ」
……え、どういうこと?
哲学者めいた声で語り始めた。
「この森に生まれ、この森で育ったワタシ。しかし誰もワタシを理解せぬ……この太った肉体も、この哲学的精神も……」
ポツリとソウタが呟く。
「……なんか、ちょっとカッコいいような気がしてきた……気のせい?」
ラティがすかさず核心を突く。
「つまり、誰にも気づかれず寂しく叫んでたってこと?」
「違う、世界が我を忘れないよう、魂の波動を森に響かせていたのだ」
なおも話を聞いていたラティが、少し呆れたようにまとめにかかる。
「つまり、寂しかったのね?」
「……寂しかったのだ」
あっさり認めたぞコイツ。
続けて、誇らしげに言い放つ。
「“ぽよぽよのデブ害獣”と呼ばれて久しいワタシだが、本当の名は――」
いや、名前はまだ聞いてないし。
「……名など、重要ではない」
すかさずツッコミを入れるタカシ。
「いや、重要なのかそうでないのかどっちだよ!」
そこでようやく名乗り出る。
「……アル・ニャーダとでも呼ぶがいい」
見た目に反して、名前はやたらとカッコいいのかよ……。
まぁ、何事も無く依頼が終わったのは良いことだ。
俺は簡単に依頼の報告書をまとめることにした。
【報告書】
依頼名:ダンジョン付近に出現する珍獣の調査
調査の結果、当該珍獣は明らかに不摂生な生活習慣に起因する肥満体であり、知性を有していた。
叫んでいた理由は「自身の存在を証明したい」という自己承認欲求に基づくものであったが、同行者・佐藤シンヤのスキルにより会話が可能となり、対話を実施。
その結果、珍獣に敵意は見られず、危険性が低いと判断。よって、駆除は不要とし、依頼完了とする。
「えーっと、こんな感じか……」
俺が書き終えたところで、タカシが思い出したように尋ねる。
「というか、アルは強いの? 戦力的には?」
アル・ニャーダが即答する。
「……哲学的に強い」
いや、戦力的には?って聞いてるんだが……。
「戦力としては、下の中くらいだ」
いかん、全然使い物にならんぞコイツ……。
するとタカシが急にノリ出した。
「いや、案外こいつ、“喋れるマスコット”枠として使えるんじゃね?」
ラティも苦笑しながら肯定する。
「戦闘には向いてなさそうだけど……まぁ、面白いから良しとするかしら」
珍獣本人が、当然のように話に乗ってくる。
「決まったか、では旅に――」
すかさず俺がツッコむ。
「待て待て待て!! 何勝手に仲間にしようとしてんだよ!」
タカシが笑いながら答える。
「いや、だってコイツ、面白そうだし」
「そんな最強主人公みたいな発言すんなよ! それが許されるのはル〇ィか孫〇空くらいだぞおい!」
ソウタが静かに、とんでもないことを言い出す。
「そうだね。これは金のなる木の予感がするね。手始めにストラップにして、一定数のファンが獲得できたら、アル・ランドを建設してガッツリ儲けられる」
こいつはこの珍獣を貨幣製造マシンとしか見てないらしい……
俺は大きくため息をついてから、肩をすくめて答えた。
「はぁ……もう分かったよ……コイツも連れていこう……」
「「よっしゃーー!!」」
W杯で優勝したかのようにはしゃぐ一同がそこにはいた。
また訳分からん奴が仲間になってしまった......




