珍獣との遭遇(宇宙人ではありません)
武器を買い終えた俺たちは、噂の珍獣が出るとされるダンジョンの入口付近へ向かっていた。
広めの林道をのんびりと歩いていると、タカシが何気なく口を開く。
「なぁ、珍獣ってどんな感じだと思う?」
「いやー、正直見当がつかないね。ただの魔物じゃなくて、“珍”獣だからね……」
ソウタがぼんやりと返答する。
まぁ、無理もない。俺たちが聞かされている情報といえば、「とにかくうるさい」という噂くらいなもんだし、果たしてそんな相手を俺たちでどうにかできるのか――正直、怪しい。
「まぁ、何とかなるわよ」
そう言い切るラティが頼もしく見えなくもないが、口調はいつも通りだ。
そんな他愛ない会話をしているうちに、目的地であるダンジョンの入り口に到着した。
「本当にここで合ってるの? 何も出てこないじゃない。無駄骨だったら泣くわよ!」
若干不満げに、ラティが俺に確認を求めてくる。
「……合ってる。はず」
地図と周囲の地形からしても、場所は間違っていない。だが、不気味なほど静かだ。
風もなく、木々も微動だにせず、あたりには鳥の鳴き声すらない――
その沈黙を、突然の音が破る。
パキッ。
乾いた枝の折れる音が、はっきりと聞こえた。
「今、向こうの方から音しなかった……?」
ソウタが周囲を見渡しながら問いかける。
「えぇ……枝が折れる音だったわ……」
ラティも真剣な顔になる。
――ガサガサッ!
「え、なんか……こっちに近づいてきてね……?」
タカシが怯えた声で言う。
「気のせいであってくれ……!」
両手をぶんぶん振って後ずさるタカシ。その姿はもはや小動物である。
――ガサガサガサッ!!
茂みの奥から音が連続して響き、俺たち全員が一斉に視線を向けた。
「……来るぞ……!」
息をのむ俺たちの前で、草を押しのけて現れたのは――
「……え?」
ぽてっ、ぽてっ、とゆっくり歩いてくる影。
その姿は、思わず言葉を失うほど――
太っていた。
「猫……?」
ソウタがポツリと呟く。
いや、猫じゃない。明らかに猫“っぽい”何かだ。
まん丸のフォルム、短すぎる足、ほっぺに埋もれた小さな目。
極太のしっぽは、歩くたびにズルズルと地面を引きずっている。
「な、なんだこいつ……やけに……迫力が……」
「っていうか……うるさくなくね? 今んとこ、ただの……ぽよぽよだぞ?」
一瞬の沈黙。
そして次の瞬間――
「ギャオォォォォォォォォォーーーーン!!!」
叫んだ。
尋常じゃない声量で。あまりの大音量に、足元の小石が微かに震えている。
このままじゃ……マジで鼓膜が破れる……!
そのとき、俺の目の前にスキルパネルが表示された。
――【スキル:穏便】を発動しました――
直後、猫らしき珍獣がぴたりと叫ぶのをやめた。
「……止まった……?」
一同が静まり返る中――
「はぁ、なんか急に疲れてきたな、叫ぶのやめるわ」
え? 誰だ今の声……?
それは渋くて深みのある声だった。
「おいタカシ、お前、今なんか言ったか?」
「いや俺じゃねーって!」
「え? じゃあソウタか?」
「僕でもないよ?」
えーっと……じゃあ…
「ワタシだ」
俺は恐る恐る猫らしき珍獣の方を見て、訊ねる。
「もしかして...今の声ってお前だったりする...?」
「その通り」
おい、嘘だろ…ここにきて再び謎キャラかよ...




