異世界初日、スキルを見て絶望する
視界が白に染まった、次の瞬間。
「痛っ...」
硬い石畳に頭を打ちつけて、俺は上半身を起こした。
見上げれば、見知らぬ建物に囲まれた開けた広場。
そしてまわりから聞こえてくるざわめき。
「ここ…どこだ?」
隣を見ると、タカシとソウタもほぼ同時に身を起こしていた。
どうやら、俺たちは何事もなく異世界に転移されたようだ。
「…ん? なんか見られてね?」
そう言ったタカシの視線の先には、俺たちの周囲に集まった人だかり。
老若男女に民族衣装みたいな服装。
しかも、こっちをまるで見世物でも見るかのような目つきで見ている。
「……そりゃそうか。学ラン姿の男子高校生が、石畳のど真ん中で3人並んで寝てたらな」
余計な騒ぎになる前に場所を移動しようと立ち上がった、そのとき
「…ん?」
視界に、青白い光のパネルが浮かび上がった。
透明な板のようなソレに、何かの文字が表示されている。
《STATUS》
「おいシンヤ、なんか出てきたぞコレ!」
「…俺にも見えてる」
この流れ――まさかとは思ったが、どうやら“あの定番イベント”が来たらしい。
異世界転生モノのお約束、ステータス表示。
「スキルとか確認できるやつか…?」
タカシが興奮気味に画面をタップした。
すると、パネルが一瞬光を放ち、スッと情報が浮かび上がる。
「よっしゃー来い!俺の無双タイムだッ!」
そして表示されたのは、
《天野タカシ》
スキル名:幸運(笑)
スキル説明:重要な場面でだけ、なぜか運が良くなるが、本人の意図と噛み合わないことが多い。
ランク:B
はい、解散。いや、タカシだから許されてるけど、俺だったら泣いてるぞ。
続いて、ソウタのパネルが起動された。
《工藤ソウタ》
スキル名:知性
スキル説明:やたら無駄な知識だけ記憶力が良くなる。
ランク:B
あー…うん、なんか納得。
というか、「だけ」とか書くなよ。
「やったよ!これ当たりじゃない!?」
ソウタが無垢な笑顔で喜んでる。
お前がそれで嬉しいなら、俺は何も言わんよ。
せめて…せめて俺だけはまともであってくれと、祈るような気持ちで画面を開いた。
《佐藤シンヤ》
スキル名:穏便
スキル説明:とにかくモノゴトを穏便に進められるよう頑張れる。
ランク:B
これスキルっていうか、精神論だろ。
"頑張れる"って、努力目標かよ。
スキルってもっとこう…アクティブに発動したりしない?
あ、そういえば転生前に女神さんが俺たちにチート能力はないって言ってたな...
俺はうな垂れながら、二人に向かってつぶやいた。
「とりあえず、服、買いに行くか…」