異世界枕投げ勃発(絶対に負けられないわけではありません)
引き続き、俺たちはBattle Pillowの分厚い公式本を読んでいた。
《第4章:反則行為について》
・以下の行為は重大な反則と見なされ、1沈のペナルティが与えられる。
- 枕以外の道具を用いた攻撃(通称“カバーアタック”)
- 枕の中に重りを仕込む“鉄枕チート”
- 羽根を口に含んで吹きかける“フェザーブレス”
- ベッドカバーでの巻き取り拘束“スリープストラングル”
- 寝落ち(※本当に寝てしまった場合)
もう何がなんだか分からん……てか最後の“寝落ち”って……
それ、枕投げ関係ないだろ。
《第5章:戦術用語》
・ピロークラッシュ:連続して相手に枕を叩き込む猛攻。
・スリープゾーン:相手が油断している空白地帯。ここを狙え。
・ラストフェザー:ラスト1分で発動できる“全力枕投げ”。
・羽根舞い:空中に投げた枕がスローで落ちる状態。美しさで加点される。
え、美しさで加点されるって...
駄目だ...枕投げのくせにルールが複雑すぎる…
その時、タカシがバタンと本を閉じ、こう言った。
「ダメだ...意味が分からなすぎる…今回は俺らのルールでやろう」
さすがのタカシも公式ルールに則って競技するのは無理だと判断したらしい。
俺たちの一万五千ゼルはどうなるんだとツッコみたくもなったが、このルールだと途中で破綻する気がする...
そんなことを考えていると、すかさずソウタがタカシの部屋に移動式の黒板を持ってきて、ルールを決め始めた。
てか黒板どこから持ってきたんだ...
ソウタが黒板に書き上げていったルールはこうだ。
《シン・Battle Pillow 非公式ルール》
・試合は一対一の総当たりで行われ、ポイントの高い上位二名が決勝に進む
・一試合の制限時間は五分で、枕が顔面に当たった場合は三ポイント、それ以外の箇所は一ポイントとする
・投げられた枕をキャッチできた場合、キャッチしたプレイヤーに一ポイントが追加される
・各プレイヤーの持ち枕は2つ、プレイヤーにキャッチされた場合の枕は、投げたプレイヤーにリリースされる
なるほど、シンプルで分かりやすいルールだ。
この世界の枕投げもこれくらい簡単なルールにすればいいのに...
まあ競技になっていくうちに、多くの例外的プレーが現れてルールを追加せざるを得なくなったという経緯もありそうだが、それにしても難しすぎる...
そんなこんながあって、俺たちは枕投げを始めることにした。
《第一試合:ソウタ 対 タカシ》
「第一試合、始めッ!」
ソウタとタカシ、どちらも枕を両手に構え、ベッドの上で睨み合う。
「いくぜソウタァァァァ!!」
開始と同時に、タカシが低めの体勢から鋭く枕を投げ込んだ。
回転をかけたその枕は、まるでスライダーのように左へ曲がりながら軌道を変える。
「うわっ、なんか曲がった!? えっ、これどうやって……あっぶな!」
ギリギリで身を反らして避けたソウタ。だが、床に着地する瞬間、バランスを崩しそうになる。
「ふははっ、枕を制する者が戦場を制すッ!」
タカシは続けざまに2つ目の枕を投げ込んだ。
しかし、今度はソウタが予測していたように、スッと手を伸ばして見事にキャッチ。
「キャッチ成功、一点!」
俺は思わず、バレーボールの審判のようにソウタ側にビシッと腕を伸ばして得点を宣告した。
ちなみに、試合に出ていないやつが審判をするという決まりもあったので、この試合は俺が審判をしている。
「……うおっ、マジで取ったの!?」
思わぬソウタの好プレーにタカシは驚いた様子を見せた。
ソウタはふわりと笑って枕を持ち直すと、やや下段から放るように投げた。
枕はふわっと空中に舞い、天井近くまで浮かんでからゆっくりと降下していく――
「おおっと、“羽根舞い”か……っつっても加点はないぞ!非公式ルールだし!」
「うん、でも狙ってるのはそこじゃないんだよね……」
その言葉に一瞬目を奪われたタカシの隙を見逃さず、
ソウタは2つ目の枕を直線的に叩き込んだ。
「しまっ……!」
枕がタカシの肩に直撃。1ポイント。
「くっそ、やるじゃねぇか……! なら、こっちはどうだ!」
タカシの目が本気になる。
残り1分を切ったところで、タカシが再びあの技を繰り出そうとしていた。そう、回転付きスライダー枕だ。
「いけぇッ、タカスペシャル・スライダーVer.2!!」
勢いよく飛んだ枕は、今度は逆回転のフェイントをかけ、ソウタの反対方向へ鋭く曲がる。
「えっ……こっち!?」
避け切れなかったソウタの顔面に枕がヒット。
「顔面ヒット、三点追加!」
結局この一撃が決定打となり、試合はタカシが逃げ切り勝利。
最終スコアは タカシ:3点、ソウタ:2点。
「ふっふっふ……俺の“タカスペシャル”、なめんなよ」
いや名前ダサいな
「すごいね、あんな枕が曲がるなんて……」
ソウタが目をぱちぱちさせながら素直に感心している。
「いや感心するなよ!せめて悔しがれ!」
と、そんなやりとりを経て、次なる戦いが始まる――




