ようこそ、冒険者宿へ(タカシ、野宿卒業するってよ)
アリステリアの捜索依頼を達成した俺たちは、報酬を受け取るためにギルドへ赴いた。
ギルドのカウンターに到着し、試験のときにもお世話になった受付嬢のミレイに声をかける。
「わぁ、おかえりなさい!噂は聞いてますよ〜。アリステリア様を無事に救出されたとか!」
「ま、俺らにかかれば当然ってやつよな」
タカシがどこか得意げに胸を張る。こういうときだけ妙に堂々としてやがる。
「ミレイさん、これ……依頼主のギルバルトさんから、アリステリアさんを無事に帰したことを証明する書類です」
俺は懐から羊皮紙の束を取り出し、ミレイに差し出した。
そこにはギルバルト直筆の依頼完遂証明書と、報酬支払いの承認が記されている。
「確認いたしました。それでは報酬、1000万ゼルをお渡ししますね!」
ミレイが手際よく手続きを済ませると、ギルドの奥から4つの小袋が運ばれてきた。
それぞれに250万ゼルずつ、ずっしりと重い。
どうやら依頼報酬は前払いされていたみたいだ。
「うぉおおおお……これが、1000万ゼル……!」
タカシの目が完全に¥マークになっていた。なんなら袋に顔を突っ込んで深呼吸している。
「やっぱり……金はいいよな……」
ソウタも呟きながら、小袋の重みを何度も確かめていた。
コイツ、金に囚われてる......
「実際に目の前にしてみると、ちょっと怖いわね...」
ラティは大金を前に怖気づいている様子だった。
そういえば、タピオカ屋を経営して一瞬小金持ちにはなったが、大金をぽんと目の前で出されたら怖気づく気持ちは分からなくはない。
「というわけで!今夜は贅沢に、宿屋に泊まるぞーー!!」
タカシが高らかに宣言する。
「賛成!」
「異議なし!」
久々のベッドで眠れることを期待してテンションが上がっている中、ミレイが再び声をかけてきた。
「宿をお探しでしたら、ギルドが直営している宿舎をご利用されてはいかがですか?お部屋も綺麗ですし、冒険者は割引特典を受けられますので!」
おお、それはありがたい話だ。
大金を手にしたとはいえ、出費は抑えられるに越したことはない。
こうして俺たちは、ギルドから百メートルほど離れた宿屋街に向かった。
※※※
部屋に入った瞬間、全員が感動で震えた。
広めのベッド、木の温もりが残る内装、清潔な浴室に加えて、ふかふかのカーペット。
久々に建物の中で寝られるという安心感もあったが、安価な割にしっかりとしていることに驚いた
ちなみに、野宿からの反動もあって、俺たちは思いきって各々個室を取ることにした。
俺たちはそそくさと各々の部屋に入り、つかの間の休息を謳歌していた。
そんな時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ルームサービスが付いているのかと期待してドアを開けたが、ノックした主はタカシで、その後ろにはソウタもいた。
そして、満面の笑みで、とんでもないことを言い出した。
「なぁ、今から俺の部屋で……枕投げ、やらね?」
何を言っているんだこいつは...…
中学生の修学旅行ではあるまいし、そんな子供じみたことはしないと、いつもの俺なら言っていた。
だが、久々にベッドで寝られて、大金が入ってきたという安心感から妙なテンションになっていた。
そして俺は、タカシの申し出を受け入れた。
「せっかくだし、ラティも参加させようぜ!」
タカシがノリノリでラティの部屋の前まで走っていき、部屋のドアをノックした。
「はーい!少々お待ちをー!」
ドアを開けた瞬間はにっこり笑っていたが、俺たちを見るなり、すぐ真顔になった。
「あぁ、あんた達ね、何か用?」
見るからにテンションが下がっていた。
こいつもルームサービスを期待してたのだろうか。
「なあ!今から俺たちと枕投げしない!?」
テンション高めのタカシがラティに言うと、
「はぁ?あんた達バカじゃないの?そんなガキみたいなことしてないで、さっさと寝なさいよ」
”バタンッッ!!”
そう言ってラティはドアを力強く閉め、しばらく俺たちの間に静寂が流れた。
まあ、正論だ。
こっちの世界に来て一か月ちょっと経つが、俺たちの周りで一番まともなのはラティなのではないかと思い始めてきた...




