おかえりアリステリア(某漫画のタイトルではありません)
王都へと戻る道のりは、驚くほど穏やかだった。
森でのドタバタ劇が嘘のように、俺たちはのんびりとした空気の中、夕暮れの王都へと到着した。
石畳の街道に足を踏み入れると、衛兵たちが軽く敬礼して門を開く。
アリステリアの存在に気づくと、彼らの表情が驚きから安堵に変わった。
「アリステリア様……!無事で何よりです!」
「ご心配をおかけしましたわ!わたくし、冒険してまいりましたのよ!」
堂々とした笑顔で胸を張る令嬢に、門兵たちは複雑な笑みを浮かべる。
そうして、俺たちはアリステリアの実家であるリューベルフラウス家の屋敷へと足を進めた。
家の前に到着すると、扉が勢いよく開き、メイド長と思しき女性が飛び出してきた。
「お嬢様あああああ!!」
「ふぁあああ!お帰りなさいませぇぇぇ!!」
泣き崩れるメイドたちに、アリステリアは笑顔でハグを返す。
「ただいま戻りました。少しだけ自由を満喫してまいりました。ご心配をおかけして申し訳ありません...」
周囲の使用人たちが口々に安堵の声を上げる中、アリステリアはくるりと振り返り、俺たちに深く頭を下げた。
「皆様、本当にありがとうございました。わたくし……この旅で、大切なものをたくさん見つけましたの」
彼女の目は真っ直ぐタカシを見ていた。
その視線を受け、タカシは耳まで真っ赤にして目をそらす。
頼む...露骨にタカシを意識するのはやめてくれ...
そして、予想外の展開が訪れる。
「アリステリアぁぁぁ!無事でよかったぁぁぁ!心配かけさせおって…!」
今にも泣き崩れそうになりそうな状態で現れたのは、気品に溢れた五十代くらいの男性だった。
「お父様!ご心配をおかけしました...」
あぁ、この人がアリステリアの父親か。
「もしや、あなた方がアリステリアを見つけてくださったのですか...?」
アリステリアの父親が俺たちの方を向いて訊ねてきた。
「まあ、そんなところっすね」
タカシが頭の後ろで手を組みながら、やれやれといった様子で返事をする。
「そうでしたか!あなた方が...本当にありがとうございます!申し遅れました。わたくし、当家の公爵であり、アリステリアの父でもあります、ギルバルト・フォン・リューベルフラウスでございます」
「この方々、本当に勇敢でしたわ!特にタカシ様!彼は私の命を助けてくださって!わたくしは将来この方とけっこんッ...」
「あぁ...!アリステリア様!口元に土が付いております!拭き取りますよ...!」
ラティが慌ててアリステリアの口をふさぐ。
この人は本当に油断ならない...
「おぉ!それは皆さん勇敢なことで...!もしよければ、今晩は、屋敷で夕食をご一緒に!」
まあ断る理由もないし、お言葉に甘えさせてもらうか。
※※※
貴族の屋敷にしてはどこか温かみのある食卓に、豪華な料理がずらりと並ぶ。
上品な香辛料の香りに包まれながら、俺たちはぎこちなく椅子に座っていた。
そして、未だに学ラン姿の俺たちはどこか浮いているような気がする...
そんなことを考えながら用意された食事をつまんでいると、ギルバルトは肉を切り分けながら、ふと俺たちに視線を向けた。
「……ところで君たち、アリステリアのことをどう思っている?」
え、なんだ急に。
「えーっと、勇敢で……でもちょっと自由すぎて危なっかしい素敵な方だと……」
俺の口から出たのは、とりあえず無難そうなことを寄せ集めたような返事だった。
「ふむ……ふむふむ……なるほどなるほど……しかし!」
突然、椅子をガタッと引いて立ち上がるギルバルト。
「君たち、アリステリアの“本当の可愛さ”をまるで分かっておらんな!!」
え、急にどうした...
「浅い!!君たち!!アリステリアに対する理解が浅すぎるぞ!!」
え、これは...もしかして酔ってるのか...?
俺はギルバルトの手元にあるグラスをちらっと見るが、ワインに手は付けられていなかった。
やばい、この人...シラフだ...
「いやぁ〜〜〜、アリステリアが小さい頃は、それはもう可愛くてなぁ!!」
その瞬間、空気が変わった。会話の流れが、完全に“親バカモード”に突入する。
あぁ、この人もまともじゃなさそうだ...
この世界、アンバランス過ぎるぞ...




