門と森と謎のテント(ゆ〇キャン△ではありません)
俺たちは西門を訪れていた。門番のおじさんに話を聞こうとしたら、案の定けんもほろろな対応。
「ここ数日の間で、この門を通った黒いローブ姿の女性を見かけませんでしたか?」
ラティがすかさず切り出すと、門番の表情が少しだけ変わった。
「ああ、なんか見たかもしれん。三日ほど前だったか。顔ははっきり見えなかったが、細身で、小さなトランクを持ってたな。あれは確か……昨日の明け方近くだった」
「それ、アリステリア様かもしれない……!」
「行き先とか、何か言ってませんでしたか?」
「さあな。ただ、“少しひとりになりたいの”とか言ってたのは覚えてる。なんか貴族っぽい喋り方だったな。馬車にも乗らず、徒歩で出て行ったのは印象的だった」
「どっちの方向へ行きました?」
「西の森の方角だな。今の時期は人気がないが……あんな嬢ちゃんがひとりで行く場所じゃねえ」
「――よし、森に行くぞ!」
タカシが早口で言い、ソウタが「準備なしで森って……」と若干げんなりしていたが、俺も同意した。
「急がないと、足跡が消えちまうかもしれない」
「アリステリア様を放っておけないもの、早く行きましょう!」
こうして俺たちは、森へと向かって歩き出した。
※※※
森の入り口は、街から歩いて20分ほど。入口付近はまだ整備されているが、奥に入るにつれてだんだんと草が生い茂り、道もあいまいになっていく。
「ここから先、誰かが通った形跡を探してみましょう」
ラティの指示のもと、全員で手分けして地面や枝を確認していく。
「……あった、足跡!」
ソウタが声を上げる。確かに、小さな足跡が森の奥へ続いていた。
「これ、アリステリア様のも足跡かもな」
俺たちは足跡を頼りに進んでいく。
――そして、視界が開けたその瞬間。
「……あれは……!」
少し開けた小道の先、木々の合間に、こぢんまりとしたテントが一張り見えた。見た目は質素だが、使い込まれた調理器具や水筒、小ぶりなランタンがきれいに並べられている。野営に慣れ始めたのか、すでに数日は過ごしているようだった。
そして、そのテントのそばで、黒いローブを羽織った少女が、木に背を預けて腰を下ろしていた。
髪はほどよく乱れ、頬にはうっすらと土の汚れ。けれど、その表情はどこか満ち足りているようにも見えた。
「……まさか、あれが……」
「アリステリア様……?」
俺たちは息をのんだ。
顔ははっきりとは見えない。けれど、あの髪、あの姿勢、漂うオーラが、ほとんど答えを出していた。
貴族街のインフルエンサー嬢は、森の木陰でカップに何かを注ぎながら、ひとときの“自由”を噛み締めていた――。




