貴族の街は胃に悪い(今回も情報収集回です)
「……ここが、貴族街か」
俺たちは街の一角にある、明らかに庶民とは違う雰囲気の区域に足を踏み入れていた。石畳は妙にツヤツヤ、街灯も無駄にゴージャス、通行人の服もキラキラしていて、未だに学ランを着ている俺たちの場違い感がすごい…
とりあえず、俺たちは貴族街の真ん中で聞き込みを開始した。
※※※
まずは街の中心で雑貨店を営んでいる女性に話を聞いてみた。
「アリステリア様、行方不明なのね...知らなかったわ。近頃、婚約話が出ていたから、それはまた大変な時に…」
「婚約話?いつ頃ですか?」
「1か月くらい前に話題になったわよ。セドリック様と結婚する予定だって」
「セドリック?誰だそいつ?」
タカシが露骨に首を傾げると、女性は少し驚いたように目を見開いた。
「まあ、知らないの?この国でも指折りの名門出身なのよ。端正な顔立ちで、剣術にも優れ、将来は騎士団長候補って噂されているくらい」
「……へえ、完璧超人系か」
俺はぼそっと呟いた。
「ただ、どうもアリステリア様はあまり乗り気じゃなかったみたいよ。最近はいつも浮かない顔をしていたし、ときどき、ふらっとどこかに出かけていたわ。お付きのメイドが心配していたくらい」
「ストレス溜まってたのかな……」
ラティがぽつりと呟くと、女性は頷いた。
「たぶんね。もともと自由を好む方だったから……結婚の話が決まったあたりから、まるで別人みたいに覇気がなくなっていって……あ、そういえば――」
女性が思い出したように声を潜めた。
「黒いローブ姿のアリステリア様を街の西門で見かけたって人がいるの。しかも、早朝に、馬車にも乗らずにこっそりと歩いていたって……」
「黒いローブ?」
「らしくない格好だったから、見間違いかもって話だったけど……でも、あれが本当にアリステリア様だったなら……」
俺たちは顔を見合わせた。
「街の外……ってことか?」
「しかも、こっそり出ていったってなると、誰にも行き先を伝えてない可能性も高いな」
「家出かな......本人が望んだ結婚じゃなかったのなら、可能性はあるわね」
ラティが真剣な表情でつぶやいた。
「……ってことは、やっぱり街の外に出た可能性が高いよな」
タカシが腕を組みながら言うと、ソウタがすぐに提案する。
「だったら、門の見張りに聞いてみるのが早いんじゃない?出入りの記録とか、何か覚えてるかもしれないし」
「それは名案だな」
俺もうなずき、全員の視線が一致する。
行き先は――街の西門だ。
朝方にアリステリアらしき人物が目撃されたという、あの門。
「よし、聞き込み再開だ。とにかく手がかりを集めよう」
俺たちはすぐに足を向けた。
アリステリア様は、いったいどこに行こうとしているのか――
その答えは、門の向こうにあるかもしれない。




