野宿生活のままギルド登録(住所不定でも大丈夫です)
俺たちは朝靄の残る石畳を踏みしめながら、ギルド本部へと向かっていた。
昨日の試験結果がどうなったか、不安で胃がキリキリする。
おまけに、相変わらずの野宿生活。寝袋の跡が背中に刺青みたいにくっきり残ってる気がする。
※※※
ギルド本部の掲示室には、再び緊張した空気が漂っていた。
「それでは昨日までの試験の最終結果を発表します」
ミレイさんの一声に、俺たちは思わず背筋を伸ばす。
「……全員、合格です」
「「「よっっしゃああああああ!!」」」
その瞬間、俺たちは思わず声を合わせてガッツポーズを決めていた。
あれ、ちょっと待て。全員合格って……それってアリなのか?
そんなことを考えていると
「なお、詳細な点数の開示は行いませんのでご了承ください。また、本試験は絶対評価での採点をしており、点数が0点ではない限り合格になります」
え、じゃあ何で試験なんか設けてるんだ…?
「この試験は、倫理的思想を持ち合わせていない人を篩にかけるために行われておりますので、基本的には猿でも合格します」
なるほど。まぁ言い分は分かるが、猿でも受かるって嫌な言い方するなこの人…
※※※
試験を突破した俺たちは、そのままギルド登録の手続きをすることになった。
「こちらが登録用紙になります。名前、スキル、職業、住所などご記入ください」
そう言って差し出されたのは、やたらと細かい記入欄が並んだ書類。
あれ、住所って言ったよな…?
俺たち野宿なんだが...
「「あの、俺たち……住む家がなくて、住所が書けないんですけど……」」
「そうでしたか、では住所不定で大丈夫です」
「「え?それで大丈夫なんですか?」」
「よくいるんですよ、全体の6割くらいのメンバーが住所不定です」
おい、このギルド大丈夫か...?
急に信用できなくなってきた。だが今はそんなことを言っていられない。
俺たちは渋々、登録用紙に住所以外の個人情報を書いた。
※※※
「では、次にパーティー登録ですね。パーティー名はどうなさいますか?」
パーティー名か、どうするか…
ふと、俺の横に液晶タブレットのような機械があることに気づく。
「「あの、この機械って何ですか?」」
「ああ、パーティーネーム生成機ですね。パーティー名を決められない人が意外と多いので設置しました。この機械は、パーティーメンバーのこれまでの経歴や経験などを踏まえて、それにふさわしい名前が生成されるんですよ」
なるほど。他の奴らに決めさせるのも不安だし、試しに使ってみるか。
「では、こちらに手をかざしてください」
ピピッ!
電子決済機のような音を鳴らしたその機械から、FAXみたいに紙が出てきた。
そこには、こう書いてあった。
【あなた方にふさわしいパーティー名が見つかりました】
・不良債権たち
・運ゲー依存集団
・トラブルフォーメーション
etc…
俺は機械の電源を切った。他3人も絶句している。
「と、とりあえず、(仮)ってパーティー名でどうよ?」
ラティが慌てて即席で使えそうなパーティー名を挙げる。
「もうそれでいいよ…」
タカシが俯きながらつぶやいた。
ともあれ、パーティーが成立した俺たちはギルド内の依頼掲示板へと足を運んだ。
「よし、まずは簡単そうなやつから……」
と俺が言ったその時。
「おいシンヤ!これ見ろ!賞金1000万ゼルだってよ!」
タカシが目を輝かせて指差したのは、とある依頼だった。
【捜索依頼:アリステリア嬢の捜索】
詳細:1週間ほど前から城に戻られていないアリステリア嬢の捜索をお願いします。
条件:ランク不問
報酬:1000万ゼル
アリステリア嬢って……
あの、タピオカドリンクを爆売れさせた“貴族系インフルエンサー”じゃないか!?
行方不明って…何があったんだ…?




