全国統一異世界テスト(運ゲーです)
ギルド試験の申し込みを終えた俺たちは、試験室に案内された。
石造りの建物の一室は妙に静かで、机と椅子がずらりと並ぶその空間に、俺たちはぎこちなく腰を下ろす。
「では、これより《基礎知識審査》を開始します」
監督官の声が静かに響いた。
「化学基礎、物理基礎、魔法物理、魔法化学からそれぞれ25点ずつ出題されます。回答方法は4択のマーク式。制限時間は1時間。合図とともに開始してください」
机の上には分厚い試験用紙と新品の丸軸鉛筆。
……筆記試験か。こういうの、地味に精神を削られるんだよな。
「始め!」
号令と同時に、紙をめくる音が一斉に広がった。
※※※
化学基礎と物理基礎は、高校でやっていた内容とほとんど変わらなかった。
この2科目だけ満点を狙って、あとの2つは適当にマークしても合格ラインには届くだろう。
そんな打算を頭の隅に置きつつ、他の3人の様子が気になった。
まず視線をソウタに向けると——
机に突っ伏して寝ていた。
(早くないか? まだ10分も経ってないぞ?)
もしかして、解けるところだけ解いて即仮眠?
それとも、問題文読んで寝落ちか?
こいつ、知識はあるのに体力と集中力は紙みたいに薄いんだよな…。
次に右隣のラティを見ると、眉間にしわを寄せて問題を睨みつけていた。
手は止まらずペンを走らせているけれど、その表情には迷いが滲んでいる。
(俺らみたいな異世界外の人間には厳しい内容なのか?)
…てか、タカシは大丈夫か?
と、不安を感じ始めたそのとき——
後方から『コロコロ…』という音が聞こえてきた。
ちらっと後ろを振り返ると、タカシが鉛筆を机の上で転がしていた。
「……3!」
鉛筆をサイコロ代わりにして、出た面の数字でマークを選んでいる。
(お前、またそれかよ……)
高校時代もこの方式で赤点ギリギリを突破していたこいつ、異世界でもブレない。
あれ? 支給された鉛筆って丸型だったよな…?
しかも、タカシの机の角が妙に削れてる…。
(…まさか、試験前の数分で鉛筆を削ってサイコロ化したのか!?)
執念がすごい。というか、ただのバカか。
俺はというと、可もなく不可もなくって感じだ。
2科目は解き切れたし、平均点くらいは狙えそう。
……ただし、タカシの鉛筆が転がるたびに「カラン」という音が鳴って、集中が切れる。
「……あの、静かにしてもらえますか」
ついに監督官の堪忍袋の緒が切れた。
「す、すいませんっ…!」
タカシはぺこりと頭を下げたが、次の瞬間にはまた鉛筆を転がしていた。
(頼むから、静かに転がせ……)
こうして、俺たちの“初めての異世界試験”は静かに——いや、少しうるさく、進んでいったのだった。




