異世界でも試験はあります(魔法は苦手です)
翌朝…
広場に張ったテントから、ギシギシと音を立てて這い出た4人。
「うわ…顔がむくんでる…」
「「ソウタ、寝袋で寝ると浮腫むタイプなのか」」
「この程度の野宿で浮腫むなんて、あんたら駄目駄目ね。行きましょう!ギルド!冒険者の第一歩よ!」
寝起きとは思えないほど爽やかに伸びをするラティ。流石は異世界のエルフ、こういう生活には慣れてるのか?いや、こいつが特殊なだけか。
そして、案の定タカシのテンションも高かった。
「お前ら、準備はいいな? 今日から俺たちの異世界生活が始まるぞ!!」
異世界生活はすでに始まっていた。
ただ、俺たちがこれまでやっていたことに異世界要素が無かっただけだ。
※※※
「おお…ギルドだ…」
目の前にそびえる石造りの立派な建物。
入り口の看板にはでかでかと——
《ギルド協同組合 本部》
「…なんか、協同組合ってつくだけで一気に生活感出ないか?」
確かに、農協みたいだな。ギルド米とか売ってないだろうな。
中に入ると、空気が一変した。
酒、歓声、怒号、受付の怒鳴り声、バケツを蹴飛ばす音。情報量が多すぎる。
「…わ、すごい…マジでRPGだ…!」
受付前で列をなしている新人冒険者たち。
その中をスッと抜けて、俺たちの前に現れたのは——
「失礼、登録をご希望の方でしょうか?」
黒髪を一つにまとめたクール系美女。
しかも、声まで美しい。惚れそうだ。
「お、俺たち…冒険者になりたくて…」
「あれ?もしかして、昨日までタピオカ屋やってた方々、ですか?」
「あっ、やっぱバレてる!?」
あんな騒動があったせいか、俺たちはこの街でちょっとした有名人になっていた。
彼女――ミレイと名乗ったその女性は、少しだけ笑みを浮かべた。
「ご安心ください。履歴は問われません。ですが、冒険者登録には試験がございます」
「え…?試験…?」
タカシの顔が青ざめ始めた。
「はい、試験でございます。最低限の魔力耐性、運動能力、知識力、簡易戦術判断、最低でも模擬戦闘までがセットとなっております」
俺たち、こっちの世界でも試験受けるのかよ。どの世界でも試験というものは厄介なものだな...
とはいえ、ここで逃げたら野宿生活が続くだけ。
「「やるしかないか…」」
「はぁ、試験受けなきゃダメですか…?」
「受けないとダメですね...」
あからさまにタカシのテンションが下がっていた。
こいつ、中学の頃から定期試験は赤点しか取ってなかったしな。
てか、何でこいつ俺らと同じ高校に入れたんだ…
「私、魔法以外なら自信あるわよ!」
ラティはこぶしを胸に当て、任せなさいと言わんばかりの表情を浮かべていた。お前魔法苦手なのかよ。
こうして、俺たちの次なる目的地は“適性試験会場”となった。
今度こそ、まともに“異世界らしいこと”をやれるといいんだが…




