野宿からのリスタート(いよいよギルドに行きます)
タピオカ屋は、あっけなく潰れた。
撤去された屋台の跡地を一瞥してから、俺たちはその場を離れ、町外れの広場まで歩いていた。
地面は草と土。周囲には木々がちらほら生えており、ここなら夜でも誰にも邪魔されずに済みそうだ。
「…とりあえず、ここにするか」
ソウタがかつてタピオカ屋経営中に“念のため”と購入していた激安テントを取り出す。
「まさか、本当に使う日が来るとはな…」
タカシが虚空を見つめながら、ぺたんと座り込んだ。
テントは4人用と書かれていたが、明らかに狭い。
中に全員入ると、ソウタの膝がラティの顔に当たり、タカシは足をはみ出して寝るハメになった。
「…ちょ、顔近い」
「ごめん、足が収まんない」
「というか、何で私まで同じテントなのよ!」
「仕方無いだろ、宿は金かかるし、野宿が一番安上がりなんだよ!」
まあ、タカシの言い分は分かるが、こんなポンコツ男子3人と一緒に寝る羽目になった女性キャラもなかなか可哀そうだぞ。ラティ、すまんな...
※※※
静かになった空間で、タカシがつぶやく。
「3週間前まで、日収50万ゼルだったんだぜ…」
「それが今じゃ、寝袋生活か…」
ソウタが寝返りを打つたびに、テントがきしんだ。
残った資金は、15万ゼル。
タピオカ屋が大繁盛していた頃なら“装飾費”で消えそうな額だが、今の俺たちにとっては“生き延びるための命綱”。
「「このままじゃマジで底をつくぞ…なんか手、考えないと」」
異世界、思ったよりシビアすぎる。
「…なあ、俺たちさ」
不意に、そんな言葉がタカシの口からこぼれた。
「「ん?」」
「異世界に来てから、何か“異世界っぽいこと”したっけ?」
沈黙。
隣の寝袋で寝ていたソウタがごそりと身を起こし、真顔で言った。
「…してないね」
「「タピオカ売って、営業許可なくて、人を発光させて、金取られて野宿してるな」」
「っていうか、日本にいたときの文化祭とやってること変わってなくね?」
「むしろスケールだけ派手になって損してるっていうね」
しばしの静寂のあと、俺がぽつりと呟いた。
「「…ギルド、行ってみるか」」
「おお、いいね」
「異世界ならギルドは定番だろ!」
テンションが上がったタカシが寝袋を蹴り飛ばして立ち上がる。
「おいシンヤ、明日行こうぜ! ギルド! ダンジョン! 冒険者!」
「「急に単語だけ並べるのやめろ。なんか怖いから」」
「でもまぁ、生活の糧は必要だし…稼げる手段が見つかるといいなー」
「ラティ、お前も来るだろ?」
「もちろん行くわよ!タピオカ屋の雪辱を果たさないといけないし!」
まあ、タピオカ屋が潰れたのは自業自得なんだけどな。
「よし!じゃあ明日から冒険者生活の幕開けだ!」
異世界転移から約1ヶ月。
ようやく、俺たちの異世界生活が“それっぽく”なってきた気がした。




