エルフ、夢を語る(まさかの有益情報付きです)
「ねえ、私さ、お店やりたいんだよね」
なんか言い出したぞこいつ。
「えーっと、急にどうした?」
「いやさ、前にもあんたらみたいなヘンテコな服着たヤツに会ったことがあるのよ」
ヘンテコな服って学ランのことか?ってちょっと待てよ…
「何!?今なんて言った!?」
「だからってば!ヘンテコな服着たヤツに会ったって言ってるじゃん!」
マジかよ…
俺たち以外にも、こっちの世界に飛ばされた人間がいる可能性…
しかも学ラン着てたなら学生だよな…
「そいつの名前は?どこに行く予定とかも聞いたか?」
「いやー、それは聞いてないんだよねー」
まあそうだよな。しかし、この世界に日本の学生が飛ばされてきたことは有益な情報だ。
「それでね、その人に“タピオカ”っていう飲み物のことを聞いたのよ」
「え、なんでタピオカ……?どんな流れでその話になったんだよ……」
「それがね、そいつの地元じゃめっちゃ流行ってたんだって!だから間違いなく売れるわよ!」
なるほど、タピオカねぇ…
でも確かに…さっき街を歩いた感じ、飲料系の店は確かに少なかった。普通のソフトドリンクを売ってる露店がぽつぽつある程度だ。
「…待てよ、これは…イケるかもしれないな」
俺はソウタに目を向けた。
「ソウタ、もしこのエルフが“タピオカドリンク屋”出したら、儲かると思うか?」
「うん、結構イケると思うよ。競合もいないし、こっちの世界ではタピオカってたぶん珍しい。しかも腹持ちも良いから、忙しい冒険者はこれさえ飲めば一食分になるっていう訴求で打ち出せば冒険者の顧客も囲い込めるし、物珍しさで単価を上げても売れると思う」
ソウタの冷静な異世界タピオカマーケティング論が炸裂した。ソウタのこういうところは本当に頼もしい。普通に成績も学年トップだしな。
てかこいつは何で俺らとつるんでるんだ…
「…決まりだな」
俺はエルフを指さして言った。
「おい、お前の望み通り、店を出すサポートをしてやる」
「えっ、マジで!? ほんとに!? アタイ、めちゃくちゃ頑張っちゃうからね!」
こいつ、キャラの方向性が定まってなさすぎる。
「おい、こっちでタピオカ屋やるって正気か…?」
タカシが心配そうに聞いてきた。
まさか俺がタカシから心配される日が来るとは…
「俺らが稼げる手段が増えるなら、むしろ都合がいい」
ソウタの計算通りに事が進めば、俺たちは大金持ちになれる。
そういえば自己紹介がまだだったな。
変なエルフに付き合う前に、まずは俺たちのこと、ちゃんと説明しとくか。