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3ケツで死んだら異世界だった件

 名古屋市の片隅にある、空気と偏差値が少し重たい私立の男子校。


 小・中・高と10年一緒に過ごした俺たち三人の関係は、はっきり言って「腐れ縁」ってやつだ。

 仲が良いわけでも悪いわけでもない。

 他に代わりがいないから一緒にいるだけ。

 そう言いながら、今日も俺たちはつるんでる。


「なあ、お前ら。自転車、乗ってくか?」


 思い付きでそう言い出したのは、いつものごとくタカシだった。


「……は?」

 俺が返すと、


「いや、あのイ〇ンモールまで歩くのダルいじゃん? 河川敷まっすぐ行けば近いし。ほら、俺のチャリ乗ってけよ」


「いや、俺とソウタがいるんだぞ? チャリ1台でどうするんだよ?」


「うるせーな!俺が運転してソウタが後ろ、シンヤはカゴな!」


 当然のツッコミを入れる俺に、タカシはイライラしながらで答える。


「何で俺がカゴ!? 流石に無理だろ!?」


「風感じてみろって。心も軽くなるぞ」


 タカシは決め顔でそう言った。


「そのまま魂も飛んでくだろバカかお前は!!」

 

 そう言いながら、なぜか俺たちは乗っていた。

 タカシのボロチャリに、ぎゅうぎゅうの3ケツで。


 春風が心地よくて、何かちょっと青春っぽい気がした――その、ほんの数秒後。


「おっしゃ! 加速すんぞォォ!!」


「おい待て! 坂入ったって!スピード出すなバカ!!」


「すごい、風がぴゅーって鳴ってる〜」


「ソウタ!そんなこと言ってる場合か! って、これハンドルめっちゃガタついてないか!?」


「あー……実はブレーキちょっと甘いんだよね」


「甘いどころじゃねぇだろ!!これもう“ブレーキという概念”が死んでんだよ!!」


「あ、あそこ曲がれるかな?」


「いやー、ちょっとキツいかもなー!」


「おい待て!? “かも”って何だよ!いけるかいけないかで言えよ!!」


「……よし、祈れ!!」


「お前が操作しろォォォ!!」


 次の瞬間、世界はスローモーションになった。


 前方、左カーブ。右には水路。舗装の悪い坂道でタイヤは跳ね、ハンドルは言うことを聞かない。


 カゴの中の俺は軽く浮き、ソウタの体が後ろに揺れた。


 そして、チャリは護岸のコンクリート斜面に

最高速で突っ込んだ。


 ガッシャアアアアアアアアン!!!


 何かが砕ける音がした。

 たぶん骨か、チャリか、現実か。

 

 空がぐるぐる回って、視界が白くなって――

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