その家は無理心中を図ったらしい
「酷いな、こりゃ。無理心中か?」
「ええ。こりじゃあ、誰も生き残っちゃいないでしょうね」
崩壊した建物の中で先輩の言葉に後輩は相槌を打ちながら呟いた。
様々な事故物件を見てきた二人からしても、ここまで凄惨な状態となっている事故物件を見るのは初めてだ。
何せ、この家はもう取り返しのつかないほどに荒れ果てているのだから。
「大方、家主が自棄になっちまったんだろうな」
「はい。私もそう思います。どうにもならなくなって……という感じでしょうか」
「多分な」
「でも、この家、結構広いですね。もしかしたら生き残りはいるかもしれませんよ?」
「まぁ、生体レーダーの反応もあまり当てにならないしな」
そう言いながら先輩は持っていたレーダーに目を向ける。
しかし、残念ながらレーダーから出る情報からは命の息吹一つも感じられない。
「結構良い家だったのになぁ。もし綺麗だったら私が住みたいくらいでしたよ」
「同意見だ」
そう言いながら二人はこの家、地球の捜索を続けた。
星を一つの家として捉えるほどに発達した文明を持つ彼らにとって、この星で起きた『無理心中』がまさか『戦争』の結果、核ミサイルを押したことで滅びたなどということは予想もつかないことだった。