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第八話:最初の依頼

 依頼掲示板が、村の広場に立てられた。


 村人たちは興味深そうにそれを眺めている。

 「こんなものが役に立つのか?」と疑問を持つ者もいれば、

 「便利かもしれないな」と期待を抱く者もいた。


 だが、今のところ掲示板には何も書かれていない。

 つまり、“最初の依頼”を出す者がいないのだ。


「アルクさん、最初の依頼って、どうすればいいんでしょう?」


 リナが首をかしげながら尋ねる。


 「そうだな……。まずは、何か実際に困っていることを掲示するのがいいだろう」


 俺は、広場を見渡す。

 村の人々の暮らしは、基本的に自給自足だ。

 畑仕事や家畜の世話、狩りや薪割り……それぞれが生活のために働いている。


 「村のみんなは、今一番困ってることは何だ?」


 俺がそう問いかけると、しばらくの沈黙のあと、村の老人がぼそりと口を開いた。


 「……薪が足りねぇな」


 「薪?」


 「最近、ワイルドボア騒ぎで誰も森に薪を取りに行かなかったからな。このままだと冬を越せねぇ」


 なるほど。

 ワイルドボアの討伐に気を取られていたが、確かに冬支度は必要だ。


 「薪集めを依頼として掲示するのはどうですか?」


 リナが提案する。


 「いいな。それなら、誰でも参加できるし、実際に役に立つ」


 俺は板を手に取り、依頼内容を書き込む。


【依頼内容】

『薪集め』

・村の西側の森から薪を集めてくること

・乾いた木を選ぶこと(生木は燃えにくい)

・集めた薪の量に応じて報酬を支払う

・報酬は食糧(干し肉または麦粉)


【依頼主】

村長・ガルド


「これでいいだろう」


 俺が掲示板に貼りつけると、村人たちが興味深そうに集まる。


 「ほう、薪集めか」


 「こうやって仕事を分担できるのはいいな」


 「報酬があるのもいいな……」


 誰かが呟く。


「さて、最初にこの依頼を引き受けるのは誰だ?」


 俺がそう声をかけると、村の若者の一人が前に出た。


 「俺がやるよ」


 「お、サムか」


 村人たちが彼の名を口にする。

 サムは、村では働き者の若者として知られているらしい。


 「じゃあ、サムが薪を集めたら、報酬として干し肉を渡すことにしよう」


 俺は報酬の管理方法を確認しながら、彼に頷いた。


 「おう、やってみるぜ!」


 サムは意気揚々と斧を手に、森へと向かっていった。


「……こうやって、仕事が回っていくんですね」


 リナが感慨深そうに掲示板を見つめる。


 「最初は小さなことでも、これが習慣になれば、村全体の仕組みが変わっていくはずだ」


 俺はそう答えながら、広場を見渡した。


 少しずつ、村の空気が変わり始めているのを感じる。


 ここから先、どんな依頼が増えていくのか――

 それは、村の成長次第だ。


へと消えた

~~登場人物紹介(第八話時点)~~

◆ アルク(主人公)

年齢:17歳(転生者)

特徴:黒髪、鍛えられた体つき、落ち着いた雰囲気

性格:冷静で論理的だが、困っている人を見捨てられない

背景:転生前の記憶は曖昧だが、ギルドという概念を知っている

能力:

状況を分析し、戦略を立てる力がある

戦闘よりも知恵を活かすタイプ

実践を通じて少しずつこの世界の知識を得ている

現状:ルーデ村で目覚め、村の問題を知り、ギルドの原型となる依頼管理の仕組みを作り始めた


◆ リナ(村娘)

年齢:16歳

特徴:栗色の髪、素朴で明るい性格

性格:

優しく世話好きで、アルクを献身的に支える

物怖じせず意見を言うが、少し天然な一面も

村人想いで、村が良くなることを本気で願っている

能力:

村の生活に精通しており、農作業や家事が得意

人の気持ちを察するのが上手い

現状:アルクの活動を支えながら、村の変化に期待している


◆ ガルド(村長)

年齢:50代

特徴:大柄で頑強な体つき、厳格な雰囲気

性格:

村を守るために強い責任感を持つ

保守的な考えもあるが、合理的な提案には耳を傾ける

能力:

村のまとめ役としての統率力がある

村の歴史や土地のことに詳しい

現状:アルクの提案に興味を持ち、村の発展を見守っている


◆ マリア(村長の妻)

年齢:40代

特徴:穏やかな笑顔、包容力のある女性

性格:

面倒見が良く、村の人々の母親のような存在

若者たちを支えつつ、陰で村を支えている

能力:

料理や裁縫が得意

調薬や治療の心得もあり、アルクの怪我を治療した

現状:アルクに温かい目を向けながら、村の変化を静かに見守る


◆ サム(村の若者)

年齢:18歳

特徴:短髪で快活な青年、筋肉質な体型

性格:

力仕事が得意で、体を動かすことが好き

責任感があり、頼まれると断れない性格

細かいことを気にしない、シンプルな思考の持ち主

能力:

村の力仕事全般を担当

森での作業や木材の扱いが得意

現状:最初の依頼「薪集め」を引き受け、掲示板の効果を実感し始める


◆ バルド(狩人)

年齢:30代後半

特徴:長い弓を背負い、革鎧を着た寡黙な男

性格:

口数は少ないが、実力のある狩人

危機管理能力が高く、戦闘経験も豊富

直感的に状況を把握し、的確な判断を下す

能力:

高い狩猟技術を持ち、魔物にも対処できる

足跡や痕跡を読み取り、獲物の動きを予測する

現状:アルクに罠の仕掛け方を助言し、村の異変にも気づいている


◆ 未知の獣(名称不明)

特徴:

黒い毛並みを持つ、しなやかな体つきの獣

長い爪を持ち、ワイルドボアとは異なる行動をする

高い知能を持ち、人間を観察しているような素振りがある

現状:

畑に爪痕を残していた正体不明の存在

ワイルドボア討伐の後、村を伺うように姿を現し、静かに森へと消えた

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