第二十話:ゴート村の新たな仕組み
ゴート村に新しい仕組みを作るための準備が始まった。
村全体で盗賊対策を行う互助組織が動き出し、まず必要となったのは依頼を管理する仕組みだった。
「どこで依頼を受け付けるのか?」
「誰がそれを管理するのか?」
「どうやって依頼の内容を村人に伝えるのか?」
そうした課題をひとつずつ整理し、解決していく必要があった。
「まずは、依頼をまとめるための“依頼書”を作る必要があるな」
ギルバートが酒場のテーブルに腕を組んで座りながら言う。
「依頼書?」
サムが首を傾げる。
「そうだ。盗賊の目撃情報や被害報告、見回りの募集なんかを明文化して、誰でも確認できるようにする。口伝えだとすぐに内容が変わっちまうからな」
「なるほど、それなら酒場に掲示板を置くのがいいかもしれません」
俺が提案すると、ギルバートは頷いた。
「そうだな。酒場には人の出入りが多いし、俺もここにいることが多い。誰かが依頼を持ち込んできても、すぐに対応できる」
「じゃあ、酒場を本部みたいなもんにするってことか?」
サムが確認するように言うと、ギルバートが頷いた。
「そういうことだな」
「でもよ、依頼を出すときはどこでやるんだ?」
「それも決めないとな……」
そこで、バルザックが口を挟んだ。
「なら、村の入り口の警備所に仮設の窓口を作ればいいんじゃねぇか?」
「警備所?」
「村の出入り口にある小屋だよ。元々、見張りのやつらが詰めてるし、あそこなら村に入る人間もすぐに情報を得られる」
バルザックの言葉に、俺はすぐに納得した。
村の入り口に窓口を置けば、外部の冒険者や商人も依頼の情報を得やすくなる。
それに、盗賊の目撃情報をすぐに報告できる場所としても機能するはずだ。
「それなら、警備所を窓口にして、酒場を本部とする形で進めましょう」
俺がまとめると、ギルバートとバルザックが頷いた。
「よし、決まりだな」
「んじゃ、さっそく依頼書を作ってみようぜ!」
サムが意気込む。
依頼書の作成
俺たちは酒場の奥のテーブルで、依頼書の書式を決める作業に取りかかった。
「どんな内容を書けばいい?」
サムが紙を前にしながら、少し困ったような顔をする。
「まず、依頼の種類を分けるべきだな」
俺は考えながら、紙に分類を書いていった。
1. 見回り依頼(夜間の警備を行う人を募集)
2. 目撃情報の報告(盗賊や怪しい人物を見たら記入)
3. 盗難被害の報告(被害に遭った家畜や物資を記録)
4. 冒険者への依頼(特定の危険がある場合、冒険者を雇う)
「こんな感じで分ければ、分かりやすいと思う」
「なるほどな! これなら、どんな依頼があるのかすぐ分かるぜ!」
サムが頷きながら、依頼書の枠を書き加えていく。
「それと、誰が依頼を受けたのか、いつ報酬を支払うのかも明記する必要があるな」
バルザックが補足する。
「そうだな。報酬の支払い方法が曖昧だと、後で揉める原因になる」
看板の掲示と窓口の設置
依頼書がまとまったところで、看板を作り、掲示する作業に移った。
村の広場、酒場の入口、警備所の壁に目立つように掲示板を設置する。
「これで村人たちがすぐに情報を確認できるな」
ギルバートが掲示板を見上げながら、満足そうに頷いた。
「んじゃ、窓口も動かすか!」
サムが意気込むと、俺たちは警備所に向かい、依頼の受付を開始する準備に取り掛かった。
こうして、ゴート村に新たな依頼管理の仕組みが誕生した。
まだ始まったばかりだが、これが村の未来を変える一歩になるかもしれない。




