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珈琲、ピース、女

作者: ロック

僕は嗜好品を嗜む。

ショートピースを吹かしながら、角砂糖を6個とミルクを4本ほど入れた甘いアイスコーヒーを飲む。

「こんなに砂糖を入れると、珈琲の味もわからんでしょう」と店長が言う。

「わかりますよ…濃いコーヒーの苦味を砂糖が中和してくれる。

この味は…、まさに入浴後に飲む、コーヒー牛乳を彷彿とさせる。」

甘い香りが立ち込める喫茶店で、彼は一人、アイスコーヒーをかき混ぜていた。

角砂糖を6つ、ミルクを4本。琥珀色の液体は、見る間に淡いミルク色へと変わる。


店長はそれ以上何も言わなかった。

彼は甘ったるいコーヒーを飲み干し、会計を済ませる。

「クレジットカードで」と彼は2枚の黄色いチケットを渡す。

「はいよ」と彼は受け取る。


僕のリュックには、"クレジットカード"と呼ばれるチケットが数百枚入っていた。

彼は、給料のほぼ全額を貯金していた。

しかし、この世界に既に発行にコストがかかる紙幣や硬貨は、存在せず、クレジットカードと呼ばれるチケット型の通貨で経済が回っていた。

赤のクレジットカードがこの居住区にいるだけで毎日10枚もらえる。

当然10枚のクレジットカードだけだと生活ができないから、パントリーと呼ばれる場所で、食糧を受け取ったり、また国から配給される日用品や公営住宅で住むことにより、労働が0での生活が送れる。


しかし、働かなくても生きていけるが、より贅沢をするには労働が必要で、彼も、先程の喫茶店の店長も、そして多くの人間は労働者になるために学業に励み、労働に多くの時間を割く。


クレジットカードには、種類がある。

黄色いクレジットカードはクレジットカードの中でも一番価値が低く、赤が次に価値が高い。そして、青、シルバーに続き、最も価値が高いのは、金のクレジットカードだ。

ただし、製造コストは殆ど変わらずクレジットカードが偽造されることも多々ある。

そのため、クレジットカードを偽造し、流通させたときは、問答無用で死刑にされるため、クレジットカードの偽造は誰も行わない。


ちなみに黄色いクレジットカードは10枚で赤のクレジットカードに交換できる。

そして、100枚なら青のクレジットカード、シルバーなら1000枚、ゴールドなら1万枚のクレジットカードに交換できる。


僕の労働は、電子端末に文字列を入力するという仕事だ。

月給は、青のクレジットカード5枚だ。

しかし、彼は給料をもらうと決まって全てを黄色いクレジットカードに変えてしまう物理的に多くの紙幣を持つことに優越感を抱くのは、慣習のせいだろう。


僕は、この制度に最初こそ不満を抱いたものの、クレジットカード制度が導入後、貧富の格差が実質的に埋まり、社会主義に近づいたことに歓喜の声をあげたのであった。


労働は全て同一賃金である。

どの会社、どの組織でも事務仕事は青いクレジットカード5枚であり、

工事現場は青いクレジットカード4枚、製造現場は青いクレジットカード6枚で清掃は青いクレジットカードが2枚である。

官僚などの一部のエリート層になると、月給金のクレジットカードが2枚なのだが、官僚などの上級職の人間は別の区域で生活しているため、接点がない。

そのため、ここは、平民のユートピアである。


しかし、能力が高い者にとってこの区域は、不公平に感じるだろう。

生まれながらに自分の人生が決まっており、自分の賃金の操作ができないというのは、エリートを目指したい人間からすると地獄である。


そして、この区域自体に生産性はなく、一つの社会実験のために作られた、擬似的な、居住環境でしかないことを、国民は知らない。

居住区域から脱走を図る者もいるが、殆どが処刑されてしまう。

僕からするとこのユートピアから脱出しようとする人間が理解しがたかった。


僕は、クレジットカード制度が導入される前は、低賃金で働くサラリーマンであった。

彼は、社内で嫌われており、また出会いを求めるために婚活パーティーに参加するのだがそこでも、相手にされることはなかった。

こうして、孤独なまま28歳になった。

28歳のある時、クレジットカード制度が導入され、富豪の資産は押収され、貧乏人にも富が分配されるようになった。

そして、企業による格差が埋まり、彼は必然的に低賃金から脱却ができた。


もちろん僕が、女性から相手にされない現状は変えられないが、それでも理想的な社会主義の構築のためという名目で政府が用意した女性と交際することができた。

この女性の容姿は美しく、彼女の所有権を与えられた彼は、社会主義にますます傾倒するようになる。


僕は、娯楽としての女、タバコのショートピース、珈琲のために働くのである。

全ての願望が叶った世界、僕は幸福だった…そう断言できるのだろうか。


僕の生活は、表面上は幸福に見えたが、内面では何かが欠けているように感じていた。彼は、自分の人生が制度によってコントロールされていることに不満を感じ始めた。


僕は、自分の努力や才能が報われる世界を求めていた。

そして、心のどこかで、本物の愛や絆が欲しかった。


僕はある女性とカフェで出会った。

名前は渡部彩奈。

渡部彩奈は少し寂しそうな目でこちらを見つめていた。

僕は渡部彩奈に尋ねた。


「どうしたんだ?」

「私は国が決めたある男性と結婚することになったの。

でもあの人の性格は横暴でとても私は愛せない。だからお願いがあるの」

「なんだ?」


「私を助けて」

渡部彩奈は泣き出した。

僕はゆっくりとショートピースを吸い考えた。

もし、渡部彩奈がその男と結婚すればきっと彼女は不幸になる。

僕は彼女を助けたいと思った。渡部彩奈は、サラリーマン時代とても優しくしてくれて、彼女は私が何も言わなくても、僕が何を言おうとしてくれたのかを察してくれた。

「この国を出よう」

「え、そんなことしたら殺されちゃう」


「知ってるだろう?俺は悪運が強いんだ。

絶対生き延びるさ」


僕は地下シェルターに行き、渡部彩奈と一緒にシェルター内にある戦闘機に2人に乗る。

俺は操縦席、渡部彩奈は、後部座席に乗った。


「行こう、渡部彩奈」


ハッチを開いたら、警報が鳴り響いた。

「さあ、行こう!」


戦闘機のエンジンが咆哮を上げた。シェルター内は赤い警報灯が点滅し、銃声と怒号が響き渡る。渡部彩奈は怯えた様子で後部座席に座り、必死にシートベルトを締めていた。


「しっかり掴まってろ!」"俺"は、叫びながら、操縦桿を握りしめた。

戦闘機がゆっくりとシェルターの滑走路を進み始めると、すぐに出口が閉じられようとしているのが見えた。


「くそっ、間に合うのか…!」俺は歯を食いしばり、全速力で加速させた。シェルターの扉が完全に閉じ切る直前、機体は狭い隙間をすり抜け、夜空へと飛び出した。


空に出た瞬間、無数のサーチライトが機体を照らし、後方から追撃のドローンが迫ってくるのが見えた。

「追手が来てる!逃げ切れるの?」渡部彩奈の声が震えていた。


「俺を信じろ!」そう言いながら、俺は機体を急上昇させた。追撃ドローンのミサイルが後方で爆発し、激しい振動が機体を揺らした。

「くそっ…!」俺は必死に操縦し、山岳地帯へと逃げ込む。ドローンたちは執拗に追いかけてきたが、戦闘機の機動力を駆使し、次々と撃墜していく。


「このまま行けば、国境を越えられる!」俺はそう叫びながら計器を確認した。だが、その瞬間、警告音が鳴り響く。

「敵の主力艦が前方にいる…!」渡部彩奈が不安げに言う。


目の前には巨大な飛行戦艦が待ち構えていた。空中には無数の迎撃ミサイルと砲台が配置され、俺たちの逃亡を許す気配は微塵もない。


「これ以上行けば確実に撃墜される…どうするの?」渡部彩奈が涙ぐみながら問いかける。

"俺"は静かにショートピースを取り出し、火をつけた。煙が静かに空間を漂う。


「渡部彩奈、俺がこの国を嫌いになった理由はな…自由を奪われたからだ。だが、たった一度の人生なら、俺は最後まで自由を追い求める。」


俺は戦闘機のスイッチをいくつか操作し、急降下を始めた。敵の迎撃ミサイルがこちらに向かって飛んでくる。

「どこに行くの?」渡部彩奈が叫ぶ。


「いいか、信じろ。この戦闘機には隠された一手がある。」

俺は戦闘機の特殊兵器システムを起動させた。「EMP(電磁パルス)兵器だ。この一撃で、周辺の電子機器を全て無効化する。」


戦闘機が激しい衝撃を受けながらも敵戦艦の目前に迫る。僕は深呼吸をし、スイッチを押した。


激しい閃光が空を覆い、あらゆる電子機器が沈黙した。戦艦のシステムは停止し、ドローンは次々と墜落していく。


「おお…!」渡部彩奈が安堵の声を漏らす。


「まだだ、これからが本番だぞ。」俺は不敵に笑いながら、操縦桿を再び握り直した。


ドローンは次々に機能を失い、空中で静止したかのように動かなくなる。僕らの戦闘機もEMPの影響で動力を失い、ただの鉄の塊となって落下を始めた。


「これで終わり…?」渡部彩奈の震える声が聞こえた。僕は笑みを浮かべながら振り返った。


「終わりじゃない。ここからが本番だ。」


僕は予備動力を起動させた。戦闘機のエンジンが再び動き始め、僕らは落下から辛うじて持ち直した。しかし、燃料はほとんど残っていない。計器を見ると、国境まであと少し。だが、この状況では飛び続けるのは無理だ。


「彩奈、パラシュートを準備しろ。僕らはここから飛び降りる。」俺は冷静に指示を出した。


「飛び降りるって…そんなの無理だよ!」彩奈は怯えた表情で首を横に振った。


「信じろ。俺たちにはこれしか選択肢がない。」俺は彼女の手を取った。「必ず生き延びる方法はある。」


渡部彩奈は渋々頷き、パラシュートを身につけた。俺は戦闘機を自動操縦に切り替え、国境へ向かう最後の加速をさせた後、脱出ハッチを開いた。


「行くぞ!」俺たちは手を繋ぎながら戦闘機を飛び出した。暗闇の中を自由落下し、タイミングを見計らってパラシュートを展開する。風の音が耳をつんざく中、徐々に速度が緩まり、遠くに国境線が見えた。


しかし、安心する間もなく、後方で大きな爆発音が響いた。戦闘機が敵の防衛システムに撃墜され、空が炎で染まる。俺たちが飛び降りるタイミングが少しでも遅れていたら、間違いなく巻き込まれていただろう。


地面に着地すると、そこは荒涼とした山岳地帯だった。周囲には監視の目はないようだが、まだ油断はできない。


「大丈夫か?」俺は彩奈に声をかけた。彼女は震えながらも頷いた。


「…ありがとう。アイトくんがいなかったら、あたしあの地獄から逃れられなかった。」


僕軽く笑った。「これで自由になれたわけじゃない。ここからが本当の始まりだ。」


俺は互いを支え合いながら、荒野を進み始めた。新しい生活が待っているのか、それともさらなる困難が待ち受けているのか、まだ誰にもわからない。


ただ一つ確かなのは、この瞬間、俺たちは制度に支配された世界を抜け出し、真の自由への一歩を踏み出したということだ。


空は徐々に明るくなり、朝日が地平線を照らし始めた。その光は、俺たちが目指す未来への希望を象徴しているようだった。


「ありがとう…本当にありがとう…」渡部彩奈が後部座席で涙を流しながら呟く。


「渡部彩奈さん、僕は君を愛し過ぎた。

キスをしても良いかい?」

「いいよ」

キスをした。このキスの味は、心の渇きを潤した。


僕は再びショートピースを吹かし、煙を静かに吐き出した。

「自由の味は、コーヒーやタバコよりも甘いな。」

だが、僕たちの自由への旅路は、これからも波乱に満ちたものであることを知っていた。


僕は彩奈に言った「ずっと一緒だよ」

渡部彩奈は、僕に言った「うん」


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