英雄
戦争を集結させたことで俺は、奴隷から軍人となった。
階級は少尉。奴隷どころか10階級特進という大出世。
俺は、その後各地の戦線が停滞している戦場に連れて行かれ、というわけだか、俺が行くと一年も経たない内に
戦争が集結してしまう。
そのうち、俺は『戦場の英雄』とか『守護者』とか前線の兵士のあこがれの存在となってしまった。
まぁ、それでも彼らの大部分は俺のことを差別的思考で見ているが。
そんな俺に声をかけてくれたのが、アル・カイダ公爵家の当主であり、陸軍総司令官でもあるエル・メシアス=アル・カイダ様だ。階級は、平時は大将、戦時は元帥となる。エル・メシアス様は、俺を公爵家にむかえいれてくれた。
既に次期当主が確定しているので、その息子さんに忠誠を違うことが条件だったが、それによって俺が暮らしやすくなるのなら、安いもんだ。
ただ、1つ受け入れ難かったのは、名を変える必要があったことだ。俺は彼の亡くなった次男の名を受け継ぎ、エドワード=アル・カイダと名乗るようになった。
それからは、俺も正規部隊に組み込まれ、戦歴を積み重ねていった。中には、地球侵攻のように突然攻め込む事もあったが、感情を殺し軍務をやり遂げた。
誘拐から3年が経過する頃には、順調に昇進を重たことで、
陸軍にて中尉となり、捕虜だった事を追求する者も殆どが
いなくなった。
そこでエル・メシアス様は、俺に軍大学への進学を勧めた。
普通なら二等兵とか末端兵が昇進を早めるために行くことや
貴族が現場研修を回避するために行くことが多いが、俺には
戦争における知識が乏しいため、補うべく行ったらどうか。
そのようにお考えだったようだ。
俺に断る理由もなかった。
軍大学での教育は、最前線を知る俺にとっては復習みたいなもんだった。わからなかったのは、軍隊による規律や法律類のモノであり、元々地球で大学へ進学していた俺にとっては、難しくもなかったが勉強できるというのは、楽しいものだと感じられる日々だった。
勉強する中でわかったことだが、この世界というか宇宙には日本のアニメで登場するモビルスーツというモノが実在しているようだ。特に対宇宙、防空においてモビルスーツの有用性は認知されているようだ。ただ、空軍と海軍には支給があるものの、陸軍には不要との考えが根強く、俺にはほど遠い話だ。
学内でもトップ間近の成績を残し、元々尉官の軍人であることから、教授陣もとにかく優遇してくれていた。卒業も通常の4年から2年に変更され、卒業と同時に大尉に昇進し、元々いた部隊の中隊長を任されることが決まった。自分の副官には、部隊でお世話になっていた現場叩き上げの鬼軍曹が務めることとなったらしい…。
頑張れ…俺の部隊諸君。
そして、俺が卒業間近となった時。この国は因果応報とも言える事態を迎えることとなった。
そう、襲撃されたのである。
機動戦士ガンダムでもよくある光景であるが、俺が今いるここは、この国の王都がある宇宙コロニーの1つだ。この国最大のコロニーであり、防衛能力が整っていたが、その意識が災いし侵入されたのだ。
敵戦力は、陸上戦力とモビルスーツ部隊。数は陸上部隊が100名程度(まぁ、特殊部隊だろうが。)、モビルスーツは1個中隊
(1個小隊が3機だから中隊で36機。)。陸上戦力はともかく、この数のMS(今後は省略する)では、王都の壊滅は避けられないだろうな。
俺は、大学側に王都防衛のため一時休学を申し入れ、受諾され支給されていた装備を身に着け、戦場へ向かった。
そこで、侵入された経緯が明らかとなった。特に気にしていなかったので知らなかったが、この国は今日、建国記念の式典を開催していたのだ。
そこで、敵が偽情報を掴ませ、防衛部隊をコロニー外に出し、悠々と侵入してきたようだ。外に出されたMS部隊も外で待ち伏せていた敵艦と接敵しているため、帰還できないようだ。
つまり、詰というわけだ。
といっても、再び虜囚となるのは真っ平ゴメンだ。せっかく手に入れたこの地位と権力。加えて、まだ明らかにはなっていないが、明らかに特殊能力とも思える戦闘技術。
ここで少なくとも陸上戦力として功績を上げて、大尉どころか、少佐として復任してやる。
そこから俺は、単独で敵部隊の撃滅に動いた。俺の特殊能力は特異なもので、一度手の触れた武器を空中に浮かべて使用できる。部隊連中から『動く固定砲台』なんて呼ばれ方もしているが、攻撃力に関しては折り紙付きだ。
この武器には戦車や戦闘機も含まれるため、武器というより兵器といったほうが遜色ないのかもしれない。
俺はこの能力を使い、単独で王都防衛のために用意されていた兵器を使用し、単独で敵部隊を迎え撃った。
俺のもう1つの能力は、おそらく言語理解なのだろう。敵側が話している声が日本語として変換され聞こえてくる。俺はそれを聞き取り、回り道して敵を襲撃する。これを繰り返すことによって、敵軍の侵入から1時間で壊滅に成功した。
兵器の返却した際に、防衛の指揮を取っていた立派な白いヒゲをたくわえたおっさん司令に謝辞を受けたが、公爵家の一人として当然のことをしたまでとカッコいいことを言ってやった
しかし、MS部隊の方は形勢不利となっていた。残っていた味方戦力は予備役と訓練兵のみ。ほぼ老兵と学生だ。階級で言えば、俺のほうが格上みたいなへっぽこばかり。数は揃っていても、敵部隊に次々と落とされている。
MSの見た目は、時代背景が見えないぐらい色々な機体があるが、恐らくこちらが地球連合。相手側がザフトorジオン。
これってさ…俺が戦ってもいいよね?
俺の眼の前には、誰も使うのを避けているガンダムがある…