2人の時間②
楽しんで頂けると嬉しいです。
そろそろかな、そう思い私が立つと彼女は
「手伝うよ。料理はできないけどさ運ぶのは手伝わせてよ」
「あら、ありがとう」
私は素直にそのご厚意に甘えることにする。キッチンに向かう。もちろん盛るのは私だ。お皿を2枚、スプーンを2本?本でいいのかな?
用意する。
炊飯器を開ける、立ちこめる湯気に圧倒されながらもお米が潰れないように優しく混ぜる。
「ご飯どれぐらい食べる?ストップお願いね」
そういいながら私はお皿に1回、2回とご飯を盛っていく。
「ストップ」
3回目で彼女がストップをかけた。
カレーは私にかけさせてと彼女が言ったので任せることにした。
「あれ?ニンジン入ってないんだね」
「苦手だった?ニンジン」
「んー、あんまり得意じゃ無い」
「ラッキーだったじゃない」
実を言うと私もニンジンが苦手である。でも栄養面を見たら入れた方がいいことは明らかである。
だからミキサーにかけてから入れてある。このことは内緒にしておく。
「じゃー持ってくね」
「ありがとう」
お盆に2人分のカレーを乗せ彼女は運んで行った。
私は作り置きの麦茶をガラスのグラスに注ぐ。勿論2人分だ。
グラスを両手に彼女の待つ部屋に向かう。そこには食べたくて食べたくて、でも我慢している犬の様な彼女がいた。私は思わず両手の麦茶をテーブルに置き、
「お手」
彼女は不思議そうな顔をしたが、お手をしてくれた。かわいいなこいつ。
「食べようか」
律儀に私は手を合わせる。彼女も一緒に手を合わせている。
「いただきます」 「いただきます」
私の後に続くように彼女は繰り返す。小学校の給食みたいだ。
「甘くて美味しい」
「2日目のカレーだからね」(ニンジンのおかげだと思う)
「美味しいわけだ」
確かに昨日食べた時よりかは深みが出ている気がする。それと同時に2回目と言う何だか飽きのような感情も芽生える。
「あなたが食べなかったら3日目のカレーになるところだったわ」
「3日目?すごく美味しいだろうなぁ」
3日間カレーを食べるという事をわかっているのだろうか。私なら最後の方はまたカレー?となってしまう。だったら少し作ればいいじゃないかとなるが、あれもこれも具材を入れると自動的にこの量になってしまう。
「あなたの家はどこら辺なの」
「私の家は、キミの家の真逆、ここから1時間ぐらいかかると思う」
さっきまでの子供っぽさは無くなりクールな彼女が戻ってくる。
それにしても結構遠いな、春とはいえまだ日が落ちるのは早い。私の家に着いた時にはもう日は落ちていた。今は勿論外は真っ暗なわけで。
「これ食べ終わったすぐ帰るよ」
「勿論片付けは手伝う」
私は少し考える。
「も、もしあなたさえ良ければ今日は泊まっていきなさい」
「外ももう真っ暗だし、女の子1人の夜道は危ない」
彼女は少し驚いたような表情を見せる。
顔を赤めながら彼女は
「わ、私はいいんだけどさ、お泊まりは最低でも付き合ってからだってお婆ちゃんが言ってた」
ん?
はえ?
思考は徐々に動き始める。
確かにこの国では女の子同士の結婚も27年前に認められた。難しい話しはわからないが、デモだか何だかで国の偉い人?が認めたらしい。学校の教科書でも習うことだ。でもそれはそれ。私も周りの人も認められたんだなぁ程度の軽い認識だった。制度が変わった。その程度だ。
「相手が女の子でも?」
「相手が女の子でも」
なるほど、でもよく考えてみるとそうなるのか。私に友達がいなかったからわからないけど確かに。納得させられる。私がおかしかったのかも知れない。でもそうなるとご飯もまずかったのではなかろうか…
でもやっぱり夜道1人は危なすぎる。ここら辺は街頭も少ないし。どうするべきか。
「じゃあ付き合えばいいのか?」
ぼそっとそんな考えが頭に浮かぶ。それは流石に違うか。
「き、君が良ければ…実は一目惚れしてたんだ」
「この人しかいないって」
ん?
もしかして口に出してた?彼女の口から告白みたいのまで…というかただの告白でした。た、確かにカッコいいけどこんな形で恋人になって良いものなんだろうか…。考えてもわからない。付き合ってきた経験も告白されたことも無い。ましては私に恋人なんて出来るはずもないと思っていた…。
私も混乱していたのだと思う。
「私でよければぜひ」
混乱はしていた。でも思い返してみるとその気持ちに迷いは無かったと思う。
急展開になってしまいました。
次回もまだ未定です。気長に待っていただけると嬉しいです。