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2人の時間

結構長くなってしまったかもしれません。基本的に私はハッピーエンドが好きです。

歩いて15分はたっただろうか。もちろん私が歩いているわけではないのですが。私は金髪の彼女にお姫様だっこをされているわけで。歩みが止まる。


「駅の反対側なんだな家、次はどっちだ?」


分かれ道に差し掛かる。


「右よ」


先ほどからこのような会話がつづいている。はっきりと言いたい。気まずいと。

この子背も高くて、細い。でもでるところはちゃっかりとしている。

間近でみるとわかるが目は切れ長で顔は整っており、非の打ち所がない。


「どうして歩って送ってくの?バス停まででもよかったのに」

「不思議で仕方ない」


彼女は少し考えて口を開く。


「その手があったか」

アホなのかこの子。非の打ち所はありそうだ。


「でも今日財布忘れてたし、バス代払えなかったから」

「別に暇だったし運動も兼ねて?かな」


そういえば私も今日財布を忘れたんだった。バス停まで送られても結局乗れない落ちが待っていた。


「そう、あ、そこのアパートが私の家よ」

「右側の2階」


私を抱えながら階段を登っていく。


「重くない?私」


「重い」


プシュ、チョップをかましてやった。


「痛いよ」

「痛くしたんだから正解」


随分前から立てるようになっていたのでそのまま少し強引に彼女の腕から降りる。鞄から鍵を取り出し、ガチャ、扉を開けた。


「じゃ私は帰るよ」


そそくさと後ろを向いて帰ろうとする彼女を呼び止める。


「お茶でも飲んでいきなさいよ」

「お礼ぐらいさせて」


そのまま私は部屋の中に入っていく。靴を脱ぎ右手で靴を揃える。

閉まりそうな扉が動きが止まる。ゆっくりと扉はまた開いていく。彼女と目が合った。

私のアパートは玄関からキッチンが見える。左手に水回り、その奥に扉がありそこに一部屋あるだけだ。


「狭い部屋だけど我慢してね」

「別に狭くたって文句は言わないさ」


一言多いぞ。別にイラつきもしないが。


「靴は脱いで上がってよね、ここは私の家なんだから」


「あぁ、うんわかってるよ」


その間はなんだ言わなかったらそのまま登ってきそうなその間は。

世間知らずなのかこの子。ただ鈍臭いだけだったりして。


廊下とは言えない廊下を渡りとりあえず洗面室で手を洗う。うがいをして彼女にもそれを促す。


彼女がうがいをしている合間に私は違和感を感じる。いつもとは変わらない景色。景色?

洗濯物を入れているカゴの中に下着が見える。普段ならいつもとは変わらない景色だが今日は違った。相手も女の子だし見られて困る物じゃないけど。いや、困る。クマさんのパンツはまずい。よりにもよってなんで!やばい。どうしようか、とりあえず私は洗濯機の中にぶち込む。見られていないことを只々祈る。


「み、左の扉の先部屋になってるから適当にくつろいどいて」

少し早口になる。


「わかった」


私はとりあえずお茶の準備をする。お湯を沸かしコップにお茶のティーパックを入れお湯を注ぐ。

このティーパックをリサイクルし私のコップに入れまたお湯を注ぐ。二番茶と私は呼んでいる。いつもならまだまだ酷使するところだったが、今日はお客様が来ているので辞めておこうと思う。


「はい、お茶飲めるよね」

「うん飲めるよ」「ありがとう」


「家この辺だったんだね静かでいいところ」

「夏になるとカエルの合唱が子守唄になるけどね」


グゥー。


「えへへ、お腹すいちゃったみたい」


子供みたいな笑顔にドキッとする。なんか母性本能をくすぐられるようなそんな感じ。


「ご飯食べてく?」

「いいの?」


「いいよ、私もお腹空いてきたし、今からご飯炊くから早炊きでも30分はかかるけど」

「うん我慢するよ」


急に子供っぽくなったな。お腹が空くと余裕がなくなるタイプなのかな?


「じゃぁ、ご飯炊いてくるからテレビでもつけて時間潰してて」

「わかった。ありがとう」


まんべんの笑みで返してくる。思わず頭を撫でそうになった。腰を上げる。さっきの痛みは一時的な物で今はなんともない。

キッチンへ向かう。

計量カップで三合分お米を釜に入れ水で洗う。何回か繰り返す。規定の位置まで水を入れて炊飯器にあとは任せる。ピ、ピ…、ボタンを押すと炊飯が開始された。

換気扇を回す。

コンロには一人にしては大きい鍋があり蓋を開けるとそこには昨日作りすぎたカレーがある。それを焦がさないようにかき混ぜながら温める。


まだ後20分以上はかかる。こう暇だと考え事をしてしまう。


いつぶりだろうか。家で一人じゃない食事は。ここ数年はない。

私は小さな頃に両親を亡くしている。その後祖母に育てられたが、その祖母も去年亡くしてしまった。

幸いなことに両親の残した遺産が結構あり生活には困らなかった。




たまに気持ちが落ちる時がある。人間生きていたらそんなのは当たり前のことで大概のことはお腹いっぱいになれば忘れてしまうだろう。それでいいんだと思う。私はそれでいいんだと思う。



温まってきたカレーの火を止め、ご飯が炊けるのを待つために彼女が待つ部屋に戻る。私の部屋なんだけどね。


「あと10分ぐらいでご飯炊けるって」

「ありがとう、待ち遠しいよ」


お笑い番組がかかっていた。一人の芸人がボケ、もう一人が突っ込む。くすっ。笑いが堪えられなかった。


「あはは、面白いねこの人たち」

「くすくす、そうねこの人たちセンスがあるわね」

「なんでそんな上から目線なんだよ」


名もわからない二人の芸人、テレビの中では大滑りしていたが私たちはそれが面白くて笑ったのではない。その二人だったから笑ったのだ。

思い返してみるとなぜ笑えたのかわからないが、その時笑えたからよかったのではないか。私はそう感じていた。もしかしたらこの子と一緒だったから…




「そういえばクマ好きなの?」

唐突だな。


「どうして?」

クマのぬいぐるみなど部屋にはない。


「くまさんのパンツ履いてたから…」

私はすっかり忘れていた。



私は顔を真っ赤にして彼女に2度目のチョップを繰り出すことになった。




















次回の投稿も気長に待ってくれると嬉しいです。

明日かもしれませんし一週間後かもしれません。

今回のこだわりはクマはクマでくまさんはくまさんの所です。

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