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世界の代行者  作者: 星之矢
第1章 始まりの過去編
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第8話 平穏な日常

第1部 過去への贖罪

 魔術痕の調査から約1ヶ月が過ぎた頃の夜10時。


 月明かりが差す廃ビルで辰巳剛毅と月明かりの陰に隠れて姿が見えない謎の人物。


「なぁ剛毅、オレはもう退屈になってきたぜ。もうそろそろ良い頃合いだとは思わねぇか? そう思うよなぁ?」


「良い頃合い…と言いますと…?」


「そんなの決まってんじゃねぇか。オレは早く全員をヤりたくて身体がウズウズしてんだ。

 ()()()使()()()()()()()()()魔術痕を発動させんだよ」


 辰巳剛毅はこの謎の人物を前にいつもの横柄な態度とは裏腹に萎縮している。


「あァァァァァ、想像するだけで興奮してきたぜ」


「ほ…本当に()るんすね…」


「あァ、もちろんだ。今すぐにでもヤりたいぜ。

 それに引き金(トリガー)の根はもう張り終えてる頃だ。

 まさかとは思うが、この期に及んでビビってるわけねぇよなぁ?」


「そ、そんなわけないじゃないすか!」


「そうだよなぁ? そうじゃなきゃお前に分け与えたオレの力、殺した後に返してもらうところだったぜ。

 まぁ、いっそのことビビって怖気づいてくれれば、恐怖で打ち(ひし)がれるお前を見ながら、なぶり殺しにできたのになぁ。

 あァァ、想像するだけで興奮してきたぜ」


 辰巳剛毅はこの変態性についてはいけない。なぜこんな殺人鬼が殺人衝動を抑えられているのかが不思議でならない。


「でもガマンは大事だよなぁ。抑えれば抑えるほどヤった時のあの言葉にはならない快感は何度もクセになるしなぁ」


「そんなもんなんすか…?」


「お前も自分に正直になって抑えに抑えた衝動を一気に解放した時、絶対に辞められない快感を得ることがデきるぜ」


 異常なまでの性癖に共感をすることができないでいる辰巳剛毅。


「それに! なんたってこの時代にはエイジがいるしなぁ! 楽しみが増えてオレは興奮しっぱなしだぜ!」


「なんでそこまで鐡瑛志に拘るんすか? あんなやつただの魔力の無い雑魚っすよ?」


「分かってねぇなぁお前は。まぁ分からねぇのも無理はねぇか。

 いいぜ、このオレが特別に教えてやるよ。エイジの秘密をよ」


 謎の人物はなぜ鐡瑛志に魔力が無いのか、その代わりにどんな力を持っているのか、なぜ自分が鐡瑛志に執着しているのかを説明した。


「――――――っ!!?」


「どうだ? 凄く(そそ)るだろ?」


「あいつに…そんな秘密があったんすね……」


「なんだ? 顔がニヤけてるぜ?」


 辰巳剛毅は不思議と笑っていた。それは自分では敵わないかもしれないという恐怖心からか、それとも壊し甲斐のある玩具としての嬉しさからの感情か。


「はい…、すげぇ唆るっす!」


「なら明日すぐにでも――」


「ただ、あと1日待ってもらえませんか?」


「あぁ? なんでだ?」


「どうせなら人が1番集まっている日にしましょう」


 謎の人物は自分の意見を却下され不愉快さを感じた。答え次第では今すぐにでも辰巳剛毅を殺す準備はできている様子だ。


「明後日、実力テストがあります。その日が1番人が集まっている日です」


「そういうことか。いいぜ、ならあと1日ガマンして楽しみを待つことにするぜ」


――――――――――――


 実力テストまであと1日。

 

 朝8時、俺は学校へ行くために家を出た。道中、蓮次と合流をして一緒に登校することになった。


「なぁ瑛志、魔術痕の調査から1ヶ月くらい経ったけど、隊長たちからはまだ何も報告はないよな?」


「まだ何もないね。隊長たちも魔術痕のことだけじゃなくて他にもたくさん仕事を抱えてるみたいだし。

 魔術痕だけに注力することはできないんだと思う」


「そうだよなぁ。俺たちは魔術痕の調査方法は教えてもらったけど、その後のことは教えてもらってないからどうすればいいんだろうな。

 もう1ヶ月も何もしないで放置って流石に不安すぎるよな」


「確かに。シールを貼って魔力の遮断をしてるからって、ずっとこのままのわけにはいかないよね」


 俺たちはずっと何をすればいいのか分からないでいる。


「とりあえず今日はシールを貼った所に異常がないかを確認して周ろうぜ」


「そうだね。そのくらいしか今はできることがなさそうだからね」


 校門まで来たところで前を歩いている有栖川さんを見つけた。


「おーい、有栖川!」


「ちょ、蓮次!」


「ん? どうしたんだ?」


「い、いや…」


 有栖川さんは声のした方向へ振り向いた。


「おはよう天宮君」


「おう! おはよ!」


 俺は蓮次から少し距離をとって歩いていた。


「それと鐡君もおはよう」


「…え?」


「なによ?」


 俺は立ち止まり呆然としていた。そこに有栖川さんが近づいてきた。


「いや、だって学校では俺と一緒にいるところを見られると困ると思って」


 有栖川さんはクラスでも優等生という立ち位置にいる人物だ。優秀で今では人当たりも良く男女関係なく人気者だ。

 そんな人物がクラスカースト底辺の俺といるところを見られると都合が悪いと思っていた。


「あのね、私は鐡君のことも友達だと思ってるのよ。魔力の有る無しに関係なくその人の本質を見るようにしたの。

 だから鐡君と一緒にいて私や鐡君のことを悪く言う人がいたとしたらビシっと言ってやるわ。私の交友関係は私が決めるもの」


「そうなんだね。ありがとう」


「別に感謝されることでもないわ。でもどういたしまして」


 俺は少し自分に自信を持つことができたような気がする。


「そうだ、良かったら今日魔術痕のシールを確認しようと思ってるんだけど、一緒にどうだ?」


「一緒に確認してあげたいところだけど、きっと今日も私の周りにはたくさんの人で賑わっていると思うわ。

 だからごめんなさい。多分無理そうだわ」


「そっか! 全然大丈夫!」


 人気者であるが故の宿命だろう。

 俺には一生無縁なことだから分からないけど、大変そうだな。


 俺たちは玄関で靴を履き替え、教室へ向かった。

 その道中で俺を見る視線はやや痛いが、いつも通り気にしない。


「じゃ、俺はAクラスだからここで」


「うん、じゃあまた後で」


 俺と有栖川さんは自分のクラスであるCクラスに向かった。


 HR(ホームルーム)が始まり、浦邊(うらべ)先生が明日の連絡事項を話し始めた。


「明日は知っての通り実力テストがある。体力テスト、魔力量計測テスト、魔術テストの3つだ。

 ただ今の現状を知りたいだけだから気を楽にして臨めばいい」


「緊張する〜」


「俺は絶対に入学前試験よりも強くなった自信あるぜ!」


「いいや、俺の方が強い!」


 各々明日の実力テストに対して自由に言葉を口にしている。

 そんな中、俺は斜め前から俺のことを見ている視線を感じた。その方向へ目線だけを向けると辰巳剛毅が不敵な笑みを浮かべてこちらを見ていた。

 

 今更辰巳剛毅が何をしてこようと不思議には思わない。

 この1ヶ月間で絡んでくる回数は減ったとはいえ、訳の分からない因縁を吹っかけてくることは何回かあった。

 まぁなんにせよ、相手にしないのが1番だな。


――――――――――――


 A.R.C.S.(アークス)本部。


 昼1時、食堂にて昼食を摂る仙道遼司とエイミー・ターナー。


「ねぇエイミー、その炒飯(チャーハン)ひと口貰ってもいいかい?」


「ええ、いいわよ。その代わり貴方のかき揚げ1つ貰うわね」


「え!? ひと口に対する対価デカくない?!」


 エイミーは大きいかき揚げを持っていった。


「まぁ、いいけど。エイミーにならどんだけでもあげちゃうよ」


ほう、あひあほう(そう、ありがとう)


「それはそうと、明日いよいよだね」


「そうね。あの子たちの頑張りがようやく前進しそうね」


 明日は朝11時から国際機関高等学校に仕掛けられた魔術痕についての対策会議が本格的に特設される。


「私は魔術痕に一瞬しか触れていないから確証はなかったけど、仙道くんはどうだったの?」


「間違いないと思う。あの魔力は俺たちが5年前に戦ったあいつのもので間違いない」


「やっぱりそうなのね。でもなんで5年も経ってまた動き出したのかしら?」


「そこまでは分からない。気まぐれで動いているのか、何か目的があって動いているのかはさっぱりさ」


 5年前のこととは、魔族侵攻災害のことだ。

 仙道とエイミーはその時、戦った魔族とは少なからず因縁がある。


「対峙した時間はそんなに長くはなかったけど、理由としてはどっちもあり得ると思う」


「でもどっちかというと後者の方が可能性は高い」


「うん…」


「いずれにせよ、今は魔術痕をどうにかする方法を考えないといけないわね」


「そうだね、明日の会議で方針くらいは決まるんじゃないかな」


 仙道とエイミーは昼食を終え、それぞれの仕事に戻っていった。


――――――――――――


 実力テスト当日。


 昨日は魔術痕を確認しに行ったが、特に問題はなく、シールの機能もしっかりと役割を果たしていた。

 朝九時、実力テストが開始した。1年生はグラウンドで体力テスト、2年生は第一体育館で魔力量計測テスト、3年生は魔術訓練場で魔術テストから始める。これを学年ごとにローテーションしていく。


「おーい、集まれ。出席番号順で測るぞ。

 まずCクラスはハンドボール投げから始めるから準備しろ」


「せんせー、魔術って使ってもいいんですかー?」


「おっと、そうだった忘れていた。

 体力テストは魔術禁止だ。純粋な体力だけで臨むこと。

 もし魔術を使っていることがバレたらペナルティがあるから気をつけろよ」


「はーい」


 純粋な体力だけなら俺も案外良い結果を残せるかもな。


 順調にハンドボール投げが進み、流石は名家出身が多いとでも言うべきか、男女共に一般高校生の平均を軽く超えてくる者がちらほらいる。

 

 さて、俺は本気で投げるべきか抑えて投げるべきか。


 順番待ちをしている中、俺は重護が持久走をしている姿が目に映り、周りの人たちもその光景に目が釘付けになった。

 重護は周りの男子とは比べ物にならないくらい早く、常に全速力で走っている。

 そのペースは落ちることはなく、決して息を切らさず、汗をかくこともなく1500mをたったの2分30秒で走り切った。


「バケモノかよ……」


 そんな声が周りから漏れた。


 重護がそこまで本気を出しているなら俺も遠慮なく本気を出してみたい、張り合ってみたいという思いが湧き上がってくる。


 俺は周りからどんな反応をされようと本気を出すことを決意する。


「よし、次は鐡、投げろ」


「はい!」


 俺はボールを持ち、助走をつけて勢いよく投げた。

 手から離れたボールは落ちることを知らず一直線に飛んでいく。そのボールは次第に速度を落とし、地面にバウンドしながら着地した。


 結果は86m。


「あ……あっ……」


「なんだ…あいつ……」


「ヘッ! ただ肩が強いだけだろ! そんなに気にすることはねぇ!」


「そ、そうですよね!」


 俺はもう1球投げたが、少し肩に力が入ってしまい、筋肉が硬直してしまった結果、さっきより2m短い84mだった。


「鐡って弱そうに見えて意外と凄いんだな…」


「私、なんだか怖いわ」


 俺を見る周りの目はより一層冷たいものとなったのを感じた。


「やるじゃない。見直したわよ」


 そう俺に声をかけてくれた人がいた。その声のした方を見ると隣には有栖川さんが立っていた。


「ありがとう」


「私はそれでいいと思う。魔力が無いからって自分の力を偽る必要はないわ」


 有栖川さんに背中を押してもらい、俺は躊躇(ためら)うことなくこの後の種目も手を抜かなかった。


――――――――――――


 朝11時A.R.C.S.(アークス)本部会議室。


「久しぶりだね、こうやって隊長格が全員揃うのは」


「そうだな! 元気にしてたか?」


「もちろんだよ! 僕はいつだって元気さ!」


「ほらそこ! 喋ってないで席に着いて! 始めるわよ」


 仙道遼司と伍番隊隊長の五十嵐天也(いがらしてんや)が話していると神城局長と一緒に会議室に入ってきたエイミー・ターナーに叱られてしまった。


「みんな忙しいところ集まってくれてありがとう。今回集まってもらったのは他でもない、国際機関高等学校に仕掛けられた魔術痕についてだ。

 もう資料には目を通してくれたか?」


「神城局長、よろしいでしょうか?」


「なんだ? アイラ」


 進言を申し出たのは肆番隊隊長のアダム・アイラだった。


「私はこんなことをしている暇はないので、帰らせていただいてもよろしいでしょうか?」


「なぜだ?」


「この資料を見る限りこの魔術痕は発動したとしてもせいぜい魔力が少し吸われるだけでしょう。隊長格が全員で対処する必要はないと感じます」


 アダム・アイラは自分の考えをはっきりと言い、今にでも帰りそうな雰囲気だ。


「待ってもらえるかな。アイラ」


「何よ、仙道君」


「僕はこの魔術痕を調べ、直接触れた。この魔術痕は従来の物とは何かが違う。

 ただ魔力を吸われるだけならいいけど、もっと最悪を想定するべきなんじゃないかな?」


「そんなの私が知ったことじゃないわ。第一最悪ってどんな想定よ」


 会議が始まって早々に空気が悪い。


「それはね、たくさんの人が死ぬかもしれないと言うことだよ」


「そんなの今までだって何度もあったことじゃない。その度に解決してきた。

 私たちが今更そんなことで苦戦を強いられると思ってるの?」


「ちょっと2人とも! 落ち着いて!」


「エイミーの言う通りだ。落ち着け2人とも」


 エイミーと神城局長に止められた2人は黙り込んだ。

 沈黙の空気の中「俺から話そう」と、そう声を上げたのは神城局長本人だった。


「この魔術痕は従来の物とは何かが違うことは分かったが、これが発動するとどうなるかまではまだ分かっていない。

 そしてこの魔術痕は厄介なことに対魔力耐性を持っている。これがどういうことを意味しているか分かるか?」


「……もしかして、魔術では解除することはできないと言うことですか?」


「その通りだ。発動条件も不明なうえに解除方法も分からない。どうにか発動前に対処できないかと思ってこの会議を開いたんだ」


 この会議の重要性について理解したのかアダム・アイラは席に戻った。


「では遼司、今分かっていることを話してもらえるか?」


「はい。現在、国際機関高等学校に仕掛けられている魔術痕は全部で6つ。手元にある資料に書かれている場所に仕掛けられていました。

 そして僕はこの魔術痕を仕掛けた人物に心当たりがあります」


「それは本当か!?」


「はい。今から5年前、魔族侵攻災害の時に対峙した魔人“ゼルゲディア”によるものだと判明しました」


 仕掛けた魔族の名前を聞いても周りの反応はイマイチの様子だ。


「名前を聞いたことがない人の方が多いと思います。それもそのはずです。

 この魔族は当時、僕とエイミーそれと現壱番隊副隊長の如月君しか対峙しておらず、その時間も僅か5分程度。

 報告書にも1度しか名前が出てきていませんからね」


「そのゼルゲディアはそんなに危険な存在なのか?」


「それは私から話します。ゼルゲディアはとても好戦的で人を殺すことに快楽を覚える気性の持ち主です。

 その実力も当時の私と仙道くんの2人がかりで相手をしても、ただ(もてあそ)ばれただけだったわ」


「ほう、君たち2人を相手にただ遊んでいただけだと。それはとんでもないヤツが現れたものだな」


 仙道もエイミーも当時のことは記憶にこびりついて離れない。忘れられない記憶であり、忘れてはいけない記憶。


「して、この魔術痕の仕掛けられた場所についての法則か何かは分かったのかね?」


「それについてはある程度予測は出来ました。中庭を中心とする魔術痕の位置を線で繋ぎ合わせると五芒星(ペンタグラム)になることが分かりました」


五芒星(ペンタグラム)か。だがそれだけではそこまで警戒する必要はないのではないか?

 五芒星(ペンタグラム)は悪魔召喚契約などの場合において、悪魔を召喚する時に自らの身を守り、契約をするために用いられると聞く。

 それだけではそんなに危険があるとも思わんのだが?」


「確かに。でもこの学校の広さに加え、この五芒星(ペンタグラム)の大きさによる悪魔召喚は予測不能な不測の事態を引き起こす可能性があります。

 例え学校の教師や生徒たちがいるからと言っても未然に防ぐこと、発動させないことが我々には優先されます」


 この話し合いの中で拾番隊隊長の久保葵(くぼあおい)から別の考え方が出た。


「仙道、ちょっといいだろうか?」


「ん? なんだい?」


「この学校に仕掛けられている五芒星(ペンタグラム)、校門から見たときに別の意味を持たないか?」


 みんなは校門から見る位置まで資料を回転させ、その意味を理解する。


「これは……! 逆五芒星(デビルスター)!」


「そう。この位置から見ると五芒星(ペンタグラム)逆五芒星(デビルスター)に変わる。

 もしこれが狙いでもっと別の目的があったとしたら?」


「もっと別の目的?」


「うん。例えば5年前の魔族侵攻災害をもう1度引き起こす…とか」


 五年前の再来となれば事態は現在想定しているよりも最悪な状況だということになる。


「そんなことになれば次は5年前よりも被害が出る可能性だってある!」


「これは飽くまでも可能性の話だ。実際のところは分からない」


「ならばこれを早急に対処する必要が出てきたな。だが、肝心の解除方法がまるで分からない」


「今は応急処置として魔素(マナ)ちゃんのシールを貼り、魔力の流れを遮断している状態にあります。

 でもいつまでもこのままというわけにはいきません」


 何も良案が思い浮かばないまま10分が経過した頃、空気が激しく震える感覚に陥り、尋常ならざる魔力量を全員が感知した。


「――――――!!?」


「これはもしかして! 発動してしまったのか!?」


「この方角は間違いない! 国際機関高等学校の方角だ!」


「今すぐ学校に向かうぞ!!」


 神城局長は立ち上がり全員に向けて声を発した。


「待て! 全員で向かうな!

 ここは遼司、エイミー、天也に任せる!」


「了解!」


 3人は会議室から飛び出し、学校へ向かった。


「他の隊は何が起こっても対処できるように自分の隊へ戻って備えろ!」


「5年前の魔族侵攻災害が再び起こる可能性を危惧されているのですね?」


「そうだ」


「了解しました! 急ぎ戻り隊員を控えさせます!」


 各隊長たちは自分の隊へ戻っていった。


「なんとか持ち堪えろよ、瑛志。今こそお前の力が必要だ」


――――――――――――


 魔術痕が発動する10分前。


 辰巳剛毅と取り巻き2人は実力テストを抜け出して中庭に来ていた。


「剛毅さん、大事な話っていったい何ですか?」


「まぁ、そう急ぐな。お前らに1つ話をしてやろう」


「はい…?」


 取り巻き2人は辰巳剛毅が何を話してくれるのかを物珍しさで待った。


「お前らはこの世のものではない最強の力を手に入れられるとしたらどうする?」


「そりゃあ、手に入るなら欲しいですけど」


「そうだよな。これは、そんな力を手に入れたある男の話だ」


 辰巳剛毅は淡々とその話を始めた。


「その男は人生が退屈だった。適当に選んだ弱者(おもちゃ)で遊んでいても、すぐ壊れてしまい使い物にならなくなる。また新しい弱者(おもちゃ)を見つけてもそれもすぐに壊れてしまう。その繰り返しの日々に男は退屈していた。もっと新しい方法で人生を豊かにしてくれる“何か”があれば良いのにと、そう求めるようになっていた。

 そんなある日、男は偶然にも悪魔と出会い、その悪魔は『人生を豊かにし、楽しく飽きのこない力を分け与えてあげよう。その代わりにオレの目的を果たすために協力してくれないか』と。男はその話に乗り、その悪魔と契約をすることにした。

 男は悪魔から力を分け与えてはもらったが、まだその力は完全ではない。ならばどうすれば完全にその力を自分のものにできるのか。それは悪魔との契約を果たすことで得られるというものだった。

 その悪魔の目的というのは、ある人物たちを復活させること。そのためには大量の魔力が必要で、大量に魔力が手に入る場所に6箇所と、発動させるのに必要な引き金(トリガー)となる人間の2箇所に魔術痕を仕掛ける必要があった。

 男は指定された場所に魔術痕を仕掛け、あとは引き金(トリガー)となる魔術痕の根が張り終わるのをただ1ヶ月間待つだけ。

 この魔術痕の発動に必要なのは心臓の完全停止が条件だという。

 途中、魔術痕の妨害をされはしたが、引き金(トリガー)となる魔術痕が無事なら何も問題はない」


 そう言って辰巳剛毅は自分の運動着のポケットから収納式ナイフを取り出し、取り巻き2人の内1人をそのナイフで腹部を刺した。


「ゴファッ! ご、ごう…き…さん…!?」


「よかったな。お前は魔術痕の発動に必要な引き金(トリガー)として選ばれた。

 そしてこの偉大なる死をもって俺の力の糧となれ!」


 ナイフで刺された取り巻きはその後、身体を滅多刺しにされ、大量に血を吐き出して地面に倒れ込みピクリとも動かない。


「うああああああああああ!!」


「そう騒ぐなよ。お前もすぐにコイツのように偉大なる死を遂げるんだからな」


「や、やめ! やめでぐださいぃぃぃぃい!!」


「ハハハハハハハハッ! アハハハハハハハハハハハッ!!」


 辰巳剛毅は何の躊躇(ためら)いもなく取り巻き2人を滅多刺しにして殺した。

 それが辰巳剛毅が人殺しに快楽を感じる瞬間だった。


 その後すぐに6箇所ある魔術痕が発動し、赤い魔力の柱が上空まで昇り学校全体を包み込むようにして結界を張った。

 

 こうして最悪の事態は引き起こされた。

 連続更新3日間は今日が最後になりました!

 物語は急展開を迎え、主人公たちはどう解決するのか気になりますね!


 次回の更新も楽しみに待っててください!

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