事件1の5 紅い眼
ゲーム用シナリオ 5です
紅い眼の伝説
昔むかし、鬼族と人族はこの世界の主権を争っていました。
熾烈な争いが続いた末に、人々が倒れ、疲れ切っていく様を見て、心優しい鬼族の王の娘は、なんとかこの戦いを終わらせることはできないか、王に懇願しました。
王はそれはできないと言いました。
王女は、戦いが終わるようにと、星々に願いました。
星々はキラキラと輝くばかりで、王女の願いはいくら願っても叶いませんでした。
王女は聖なる泉に行き、この戦いを終わらせてほしいと泉の精霊に願いました。
泉の精霊は、私にはその力はありませんとうなだれるばかりでした。
ある日、鬼の王が人族の男を捕虜として連れて帰ったと王女は聞きました。
王女はその男に会いに、牢屋にこっそり行きました。
男は王女に自分は呪い師だと言いました。
貴方が本当に人と鬼の戦いが終わることを願うのであれば、貴方にその願いを叶えられる力を授けることができると男は言いました。
ただし、その力の代償は大きく、貴方は死んだ方が良いと思うくらいの苦しみを生涯負うだろう。
人も鬼も貴方を恐れ、貴方は孤独の中で、生き続けなければならないだろう、と男は言いました。
「私は化け物になるのですか?」
震える声で王女は尋ねました。
男は頷き、それでも貴方はその力を望みますかと聞きました。
王女は俯き、しばらくの間動きませんでした。
男はさすがに王女がこんなに代償が大きすぎることは望まないだろうと思いながら、王女を見つめていました。
長い静寂に耐えられなくなった男が、王女に
「もう帰りなさい。」と声をかけようとしたその時、王女は静かに顔を上げ、男を真っ直ぐに見上げて言いました。
それでも、私はこの闘いを止めなくてはならない。
男は、王女が自分を捕虜とした鬼族の王の娘だということも忘れて、彼女の決意にただただ心が震えるのを感じました。
憎い鬼だからと、化け物になる力を授けると言ったことを、深く後悔しました。
「やめた方がよい」と男は言いました。
男は人族の長の右腕とされる呪術師で、強い力を得ることの代償が大きすぎることをよくわかっていました。
鬼族は寿命が短く、この若い王女が自分の半分も生きていないことも知っていました。
この清廉な王女に、化け物にはなってほしくないと思いました。
しかし、王女は決意を曲げませんでした。
王女の決意の前に男は折れ、男は王女に呪われた力を授けました。
彼女の目は紅く染まり、ほの暗く光る眼を見たものは、全て、人も鬼も彼女に魅了されました。
彼女はその力で、人族の長も、自分の父親も魅了し、闘いを望むすべてのものを、その力で自分の思い通りに動かしました。
人と鬼は戦うことをやめました。
しかし、彼女はその力の代償として、常に飢餓状態で、異常なほどの渇きを感じるようになりました。
人の血だけが唯一、彼女の渇きを癒すことができました。
魅了した人から、血をもらう必要がありましたが、魅了は、かけ続けないと解けてしまいます。
魅了が解けた人々は、彼女を恐れるようになりました。
人が自分を恐れ、自分の存在が人と鬼の間の亀裂をまた生む可能性があると感じ、彼女は夜の街に身を隠しました。
王女が消えたことを知った呪術師は、彼女を探しました。なんとか彼女の力になりたいと探し続けましたが、見つけることは叶いませんでした。
吸血鬼となった紅い眼の王女は、今でも、夜の街を放浪していると言われています。




