表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜光虫  作者: オータ
37/50

第36話

 病室の外に出て立ち止まったチョコはその声を聞いていた。バニラがすぐに追いつき駆け寄る。



「なぁ……自首するって……本当か?」

「……俺、ジャンボのこと、あと少しで殺すところだったんだ。こんなにずっと一緒にいたのに、なにも信じられなくなった。こんなヤツ、野放しにしちゃダメだろ」



 チョコは笑ったがバニラが即座に殴り倒した。

驚くチョコにバニラは言う。



「お前、ジャンボの話ちゃんと聞いてなかったのかよ」



 バニラの静かな声にチョコは動揺した。

その姿を見てバニラはため息をつく。



「この一連の犯人、誰だったと思う?」



 バニラは言った。

そして誰もが明言を避けている一言を、ハッキリと伝えた。



「この『国』だよ」



 苦しげな顔をするチョコを立たせ、バニラはため息混じりに言った。



「ま……ひとまずは目の前のことから片付けよう。

お前は切りつけたことを謝る。

俺は蹴飛ばしたことを謝る。

ジャンボはあの腕章を捨てる。

それで最初からまたやり直そうぜ」

「……最初から?」

「そう。今日俺達はまた初めて会った。そういうことにしよう」



 バニラはそういうと、あーあとため息をつき、廊下の長椅子に座った。

チョコもその隣に静かに座る。



「ふふ……初めてかぁ……あの時のジャンボめちゃくちゃ怖かったよな」

「なー。俺絶対殺されると思ったよ。内臓全部とオサラバだと思った」

「でも、ごはんは美味しかった」

「たまに大失敗もあったけどな」



 チョコは溢れる涙を止められなくなった。



「また、三人で暮らせるかな……?俺、ジャンボとバニラと一緒にいてもいいのかな……?」



 バニラは隣に座るチョコの肩に手を回し、力強く抱きしめた。



「当たり前だろ。ジャンボだって同じこと言うよ。絶対に」


挿絵(By みてみん)


 チョコはかすかな声で「ありがとう」と告げた。

もうチョコは5才までの記憶を全て取り戻していた。

その時に出せなかった涙も流すように、ずっと静かに泣き続けた。

バニラはその隣からずっと離れなかった。

きっと、ジャンボの心も。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ